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『あまり話さない』日本人が『よく話す』フランス人から学ぶこと

こんにちは、bizlogueです。

bizlogueのメンバーであり『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者である本間浩輔が昨年、ラグビーワールドカップ観戦のためにフランスに行ったときのことです。同行した人が「フランスの人はみんなしゃべっている」と話したそうです。その何気ない一言から、本間が改めて気が付いたのは『話す』ことの大事さ――。

今回のnoteでは、よく『話す』ことによってその人自身に何が起きるのか、そしてビジネスにおける『話す』ことの重要性について、同じくbizlogueのメンバーである吉澤幸太とともに意見を交わしました。


「パリの人はみんないつもしゃべっている」

吉澤 前回、『頭の中に“問い”がある』ということを1つのテーマとして話をしましたが、これに関して本間さんからはまだ続きがあるということで。

本間 はい、これについてはちょっと長くなってしまうかなと思ったので前回は話さなかったのですが、僕、実は昨年の秋にフランスに行ってきたんです。

吉澤 そう、そう。フランスに行っていましたよね。なぜ行ったんですか?

本間 これはラグビーのワールドカップですね。

吉澤 スポーツのビッグイベントがあれば世界中どこにでも行く、と。

本間 そうです。準々決勝の2試合を見ることができまして、その後の準決勝まで1週間ほどヨーロッパに滞在していました。こういう状況でも私のことをクビにしないで雇ってくださっているたくさんの会社の皆さん、本当にありがとうございます。

吉澤 はい(苦笑)。で、そこからどう話がつながっていくんでしょうか?

本間 僕はスポーツヒューマンキャピタルというスポーツ組織の人材育成をやっている公益財団法人の仲間と一緒に準決勝を見に行ったんですね。で、その人とある場所で待ち合わせたのですが、彼が僕に言った第一声が「本間さん、パリの人はみんないつもしゃべっている」と。

吉澤 ほう。

本間 それで彼に「いつもしゃべっているって、なんだ?」と聞き返したところ、その彼は空港から街までタクシーで来たのだと思うのですが、タクシーの運転手さんがずっとしゃべっていたらしいんです。

吉澤 へぇ~、そうなんですね。

本間 はい。なので、「君としゃべっていたの?」と聞いたら「違うんです」と。「インカムみたいなものを使って携帯でずーっとしゃべっている」と言うんですよ。

吉澤 はい、はい。なるほど。

本間 でも、タクシーだけじゃないと。ホテルのスタッフもインカムでずーっとしゃべっている。さらに街中を見てみると、みんな独り言かなと思ったら、やっぱりずっとしゃべっていると、彼は言うんですよね。

吉澤 実際に2人でしゃべっているわけではなく?

本間 ええ、インカムやイヤホンをつけて一人で歩きながらとか。もちろん、カフェに行けばそれはパリだからみんな互いにしゃべっていますよ。だから、一人で背中を丸めてコーヒーを飲んでいるのなんて僕ぐらいですよ(笑)。

吉澤 そうでしたか(笑)

話すことによって考えが整理されてくる

本間 で、彼が言う「フランスの人はみんなしゃべっている」というのは、まあ、パリですしワールドカップの開催期間中だったから、厳密に言うとパリっ子ではなくてほとんど観光客だと思うんです。ただ、そう思いつつもハッと気が付いたのは、『話すことによって整理している』ということ。これはいわゆる『外化』ですよね、エクスターナリゼーション。

吉澤 はい、そうですね。

本間 大人が学ぶときに、自分の中でモヤモヤ考えるということではなく、話すことによって考え方が整理されていく。何かそういうことなのかなと思ったんです。それで、どちらかと言うと僕たち日本人は『話す』ことに対して、しかも長く話すことについて、やや嫌悪感を持っていると言いますか……

吉澤 それはあるでしょうね。

本間 僕なんかはすごく嫌悪感があるんですよね。だから、この場でもそうですけど「これって話したっけ?」とか「短めに言いますよ」とか僕は言うわけです。でも、結果的に『話さない』から答えがまとまらないことがすごく多いなとも思っている。これは日本の『話さない文化』――電車でもぺちゃくちゃ話している人を見たら「なんだ、こいつ」と思ってしまうし、タクシーの運転手がよくしゃべっていたら「黙ってちゃんと運転してよ」と思ってしまう。そしてカフェに行ったら、みんな黙って携帯のゲームやっているわけでしょ。

吉澤 ああ、確かに……。

本間 これはおじさん発想ですけれど、日本だと若い男同士、女同士、男と女でもいいですが、カフェでずーっと2人して別々にスマホ見たり、携帯いじってたりするじゃないですか。それを見ておじさんとしては「大丈夫か、君たち」と思うわけですよ。でも、パリではそうしたカルチャーとは正反対でしたね。

吉澤 へぇ~、パリではそんなことがあったんですね。

1on1は時に壁打ちだったりおしゃべりだったりでもいい

本間 ええ、だからやっぱり『話す』ことって重要ですし、ヤフーでは1on1のことを“壁当て”“壁打ち”と言う人が結構多かったのですが、それは相手は壁だから決して答えを求めるわけではなくて、ちょっと頭の中を整理したいから壁当て・壁打ちに付き合ってくださいと言ってくる人も多かった。僕が常務だった当時でさえ、僕の部下でもなく過去に斜めくらいの関係で仕事をした若い人から「本間さん、今ちょっと混乱しているから壁当てに付き合ってくれますか?」と言われると、「うん、全然いいよ。空いている時間に入れておいて」なんてことがよくあった。吉澤さんにもよくありましたよね。

吉澤 ええ、よくやっていましたね。

本間 それって別に僕の意見を求めていないから、「これ、こうした方がいいんじゃない?」と言っても「いやいや、今は本間さんの意見はいいです」なんて(笑)、そういう形も含めてやっぱり『会話』をすることが大事。で、フランスというのは哲学の国と言いますか、 もう決めなくちゃいけないときですら、すぐに決めてしまわず、敢えてどうあるべきかを話す文化というような話も聞きますけど、でも、僕の仲間が言った「フランスの人はずーっとしゃべっている」というところから学ぶことは多いですよね。一方で、日本の文化とも言うべき以心伝心、阿吽の呼吸、空気を読む。逆に言うとこれは『しゃべるな』ということでもあるじゃないですか。

吉澤 そうか、確かに『しゃべるな』ということにつながっていますね。

本間 だって、本屋さんに行けば『1分で話せ』という本があって……何ですか、あの本は?

吉澤 ……大丈夫ですか、話がそっちの方向に行っても。まあ、いいけど(笑)

本間 書いた人、今度ここに呼びますか?

吉澤 いやぁ……うん、それはそれで面白いと思いますけど。あれはどういうことだ!ってね。

本間 『1分で話せ』と書いておきながら、伊藤羊一は話が長いですからね、普段はね。

吉澤 そうか。ちょっと、うん……まあ、別途考えましょうか(苦笑)

本間 ええ(笑)。それで、『話す』ことに関して、組織開発の世界ではよくこういうことを言うんですよね。とても大切なことを時間制限をもたずにダラダラと話すことが重要だ、と。このことも今振り返れば、僕らは労働生産性の議論のときに安易に会議改革に飛びついたり、話さずにコミュニケーションはメールでということをやってきましたが、やっぱり、おしゃべりしながら確認したりするということは僕らの経験を通じても多いと思います。なので、ぜひ『話す』こと、そして1on1をあまりマジメに考えすぎずに、時に壁打ちだったりおしゃべりだったりでもいいのかなという気がした――というフランス滞在のご報告でした。

吉澤 なるほど。そんなにフランスにいる彼、彼女たちはしゃべっているんですね。でも、その人たちは本当に頭の中を整理しているんですかね?

本間 いや、していないんじゃないのかな。

吉澤 そうですか(笑)。ただ、まあ、そういうのって百発百中で次のアウトプットをということではないと思いますけど、その準備段階を作っている可能性もありますし、何かしらの価値があってつながっているんですかね。

本間 そうですね。

吉澤 本人たちは自覚がないのかもしれないですけど、彼らに実際に聞いてみたいところです。

本間 あとフランスでね、彼らはラグビーを見ながら歌を歌うわけですよ。チームが勝ったりすると、もう地下鉄でもすごい歌うんです。でもこれがめちゃくちゃ下手で……

吉澤 ああ、全然関係ない話ですね。そんなフランスの報告もおまけで付け加えていただいたということで、まあ本間さんは世界中どこにでも行きますから、また世界でいろいろ見て思ったことシリーズを作ってもいいのかなと今、着想しました。ですので、また続きがあればよろしくお願いします。

本間 はい。

吉澤 というわけで、今回もありがとうございました。

本間 ありがとうございました。


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■ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
(著・本間浩輔)

■1on1ミーティング―――「対話の質」が組織の強さを決める
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