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カナダで1番人気の日本人スキーコーチの教え方、ビジネスにも通ずる「振り返りからの言語化」

こんにちは、bizlogueです。

今回はbizlogueメンバーで『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者である本間浩輔が先日滞在したカナダで体験した、ある印象的な出来事をテーマとしています。

その印象的な出来事とは「日本とカナダにおけるスキーのコーチングの違い」

日ごろビジネスの人材育成やコーチングに携わる身として、人に教えるばかりではなく「人から習う経験」が生きてくるのではないかと考えた本間。カナダのウィスラーで1番人気と噂の日本女性コーチの教え方は、それまでについてもらったどのコーチともまるで違う手法であり、それはビジネスにも通ずることだと感じたようです。

では、本間が体験したカナダでのスキーの教え方はどのように違ったのか。キーワードは「言語化」です。


自分ができないことを習うという経験

吉澤 今回の対談はリモートでやっていますが、本間さんは今どちらですか?

本間 カナダのウィスラーという街です。日本で言うと軽井沢のようなところですね。

吉澤 なぜカナダに?

本間 50歳を過ぎて、こうして人様の前でお話をさせていただき、またコーチングに関するお話をさせていただいていますので、自分ができないことを習うという経験が生きてくるのではないか。そうした考えが思い浮かんだのです。それでスキーは学生のころに少しやっていて、その後25年くらいはやっていなかったわけですが、僕がここで試したかったのは日本とカナダにおけるスキーの教え方の違い

吉澤 教え方の違い、ですか。

本間 これが全然違うんですよ。ある人から、日本とカナダとではスキーの教え方が全然違うという示唆をいただいたこともあって、こちらで一番人気がある日本人の先生にぜひ教えてもらおうと思ったわけです。

吉澤 あ、日本人の先生なんですね。

本間 ええ。1年の半分ずつくらい日本とカナダで生活されているようで、女性のコーチです。実際に教わってみて色々と学ぶことが多かったのですが、今日のテーマとして一つ申し上げると、とにかく振り返りを要求される。

吉澤 振り返り?

本間 リフトの上でも「午前中の練習でどんなことが印象に残っていますか?」とか、しきりに聞いてきます。これはいわゆる“言語化”ですよね。振り返りからの言語化をすごく要求してくるわけです。ああ、これくらい丁寧に言語化される経験はなかったなと思いましたよ。

吉澤 ほぉ~……

本間 日本だと、例えば斜滑降とか体のポジションとかを習うわけですが、膝の動き・角度ができている、できないと言われるわけですよね。

吉澤 そうそう、そんなイメージです。

本間 その膝の動きができないと上手になりませんよと、そんな感じの教え方だと思いますが、カナダではそういうことが一切なかったです。スタートは「本間さんはどこを直したいですか?」「そのためにはどうすればいいと思いますか?」と話をしながら、「じゃあ、こうしていきましょうか」と、コンサルテーションに近いような形で始めていくんですよね。それでいろんな練習をもちろんするわけですが、リフトの上で「ここまでどうですか、楽しんでいますか?」とか、それこそ「どんなところができましたか?」「どこが納得できましたか?」と、とにかく言語化するんです。

吉澤 へぇ~、そんなコーチングの方法なんですね。

重要なことはやはり「言語化」

本間 同じような経験がありまして、これはちょうど先週まで慶應MCCというところで『小さなリーダーシップ』の講座を開いていたのですが、その中での振り返りで「言語化するのに最初は戸惑った」という人が多かったんですよね。僕たちから見て、参加者の中にはそうした講座にたくさん出席している人や、言語化に慣れている人はたくさんいるんですけど、そうした人たちでも講座の第1回、2回目では言語化が大変だったと、こうおっしゃるわけです。

吉澤 なるほど。

本間 やっぱり言語化はすごく重要だなと思いますね。前回の出張版はフランスのラグビーW杯を見に行った時に印象的だったことを話しましたが、あの時も同行した仲間が「フランス人はずっとしゃべっている」と驚いていた、という話をしましたよね。

吉澤 はいはい、しました。

本間 共通するのは言語化だと思いますね。話すことによって自分の課題が見えてくる。一方で、話すことに慣れていない人も多い。それは“外化”できていないということなのかもしれません。今回カナダで教わった日本人コーチがおっしゃっていたのですが、カナダのスクールではまずクローズドクエスチョンから始めるみたいです。

吉澤 クローズドクエスチョンから始めるというのはどういう理由からでしょうか?

本間 答えやすいからですね。

吉澤 まず入り口はこっち、あるいはこっちという感じで始めていくと。

本間 はい。ちょっとずつ話をして、最後はどういうふうにしていきたいですか?と。

吉澤 そうやって広げていくわけですね。

本間 ですから、言語によるコミュニケーションをとても大切にしているということですよね。それでカナダの場合、スキー教室の先生はスキーとティーチングとを別々に習うみたいです。

吉澤 私たち日本人が想像するようなティーチングスクール的なものとはまた別のものがあるということですか?

本間 スキーの技術について学ぶ教室はもちろんありますが、もう一つはどういうふうにスキーを相手に教えるのかを学ぶ教室もあるみたいです。教え方もとても重要なポイントにしていて、それができないと資格を取れないとその日本人コーチは言っていました。なので、どうやって教え方を学ぶんですか?と聞いたら、実際に教えているところを試験官が見て、今の教え方はどうのこうのといった話をしていくみたいです。

吉澤 そこまでやるんですね。

本間 ええ。ですからスキーだけに限らず、教え方というのは例えばサッカーでもラグビーでもそうだと思いますが、僕たちも相手とどういうコミュニケーションをとるのか、どうやって言語化のお手伝いをするのかというアプローチについて、学ぶところが多かったなと思いましたね。

対話・会話をすることで課題修正できたという事実

吉澤 言語化に関して反対する人はいないと思いますが、ただ、その価値が低いということを日々感じています。物事を進めるための色々な手法がある中でとても優先順位が低いなと。この価値を訴えていくことが我々のこれからやっていくことだと思いますが、どうすればいいですかね。よく、結論が出ない話し合いなんて意味ないじゃんということで、議論の場が大切に扱われない。あなたはそれでいいかもしれないけど、まだもう少し言葉に出したい人が周りにいることに全く気が付いていない、ということをよく感じます。先ほど本間さんが話してくれたリフトの上での振り返りも単なる雑談だと思われてしまうんです、おそらく。

本間 そうですね。でも、本当のゴールをイメージした時に、例えば僕のゴールは下手くそなスキーが上手になる、ということじゃないですか。そのゴールに行くためには今回のカナダでの方法論が良かった。実はですね、僕は今まで日本で6、7人くらいの色々なコーチに教えてもらったんです。ほとんどプライベートレッスンで、これが結構お金がかかるんですよ。

吉澤 それは絶対にお金かかるでしょう(笑)

本間 ええ(苦笑)。もちろん、グループレッスンも受けました。それでプライベートとグループの違いは何かとか、自分でどんどんコーチングについて探求していくわけです。2、3年かけて延べ6、7人のコーチに教わりましたが、今回、カナダで教えていただいた日本人コーチはこれまでのどのコーチでもできなかった僕の技術の課題を見抜いて1日で直してしまったんです。

吉澤 それはすごい。

本間 スキーの専門的な話になるから詳しくは省きますが、それは対話と会話をしながら、ということなんですよね。

吉澤 対話、会話をすることでできるようになったということですね。

本間 はい、それは事実なんです。ですから、これを仕事にどう反映させるのかとなると、また話が長くなってしまうのでまた別の機会にと思いますが、やっぱりこうした経験はすごく大きいですし、体育会系のように「斜滑降はこうやるんだ」「それではダメだ」と一方的に指示されても全然できなかったことが、カナダに来てコーチと話しながら、考えながらやったらできちゃった、という結果ですからね。本当はビジネスもこれくらいしっかりと、できなかったことができるようになることが明らかに分かるようにしてあげないといけないと思いましたね。

吉澤 そうですよね。本人の自覚の中でも分かるようにしてあげたいですよね。

本間 これはもうちょっと形にしたいなと思っているのですが、本当に皆さん、この日本人コーチにスキーを習ってみてほしいなと思いますよ。全然違いますから。

また、これは絶対にとまでは言いませんが、「習う経験」というのはすごくいいなと思っています。例えば僕らが英語を学ぶ際に、帰国子女で小さいころから英語の環境に慣れている人から「なんで分からないの?」と言われるのと、英語学習で苦労していて「僕もそこが全然分からなかったけど、こうやって覚えたんです」という人と、どちらの方がある意味シンパシーを感じるか。もちろん、人にもよりますが、僕は後者の方がなんとなくいいなと思うわけです。

ほら、「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければいけない」というサッカーの元フランス代表監督のロジェ・ルメールさんの言葉がありますが、人に何かを教える際には「習う経験」をしてみるということをぜひおすすめしたいなと思います。このことはまさにカナダで昨日、今日経験したことなのでこうしてお話をさせていただいていますが、このテーマに関してはまたどこかで別途お話できればと思っています。

吉澤 そうですね。このままだと「本間さん、何があったの?」というところで終わってしまいそうですからね。あくまで今回は前フリ的なものになりましたが、一つは「学ぶ」、とにかく「学ぶ経験」をしようということだと思いますが、何を学んだの?ということに関してはまた別枠でお話いただければと思うのですが、いかがでしょう?

本間 う~ん、難しいかなぁ……

吉澤 えー!?

本間 まあ、でも、いつかやりましょう!

吉澤 これだ!というものをぜひお話しいただければと思います。


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