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『ヤフーの1on1』本間浩輔が考える――内省の前にまず「経験」を取りに行くことの重要性

こんにちは、bizlogueです。

前回に引き続き、今回もbizlogueメンバーで『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者である本間浩輔が先日滞在したカナダで体験した、ある印象的な出来事をテーマにしてお届けします。

キーワードとなるのは、ズバリ「経験」の重要性。30年ぶりとなるカナダ訪問で改めて実感した「経験することの大切さ」をもとに、同じbizlogueメンバーである吉澤幸太とともにビジネスにつながるヒントを探っていきます。


内省せざるを得ないような経験

吉澤 本間さんのカナダ滞在シリーズ第2弾ということで、今回はどのようなことを話していただけるのでしょうか?

本間 今、僕はカナダのウィスラーという街にいることは前回話しましたが、ここは大学の卒業旅行で来たことがあるんです。

吉澤 そうなんですね。

本間 ええ。35年ぶりくらいになりますが、やっぱり経験って重要だなと思いますね。

吉澤 経験は重要。実際にそうだと思います。

本間 僕たちはヤフーでも経験学習を大事にしていこうとやってきましたし、経験学習というとデイヴィット・コルブの経験学習のサイクルをみんなで見ながら色々と語ってきたじゃないですか。

吉澤 はい、そうです。

本間 コルブの経験学習のサイクルの話をすると、「内省」が大切である、となりますよね。

吉澤 ええ、そう言いますよね。ぐるぐるっとなっているサイクルの右下あたりの「内省」ですね。

本間 ちゃんと内省するから教訓に行けるのである、そういった話をよくします。それはそれでもちろん間違いではありません。でも、内省せざるを得ないような経験というものも必要だと思うんです。

吉澤 「内省だー」と言って内省そのものを狙っていくよりも、まずは内省せざるを得ないような経験をする、ということですか?

本間 そうですね。それがすごく重要だなと思いました。カナダに来て、いろんな人と会ったり、話したり、また何かを見たりするわけですが、ここに来ないと分からないなということがすごく多いんですよ。例えば、ここはウィスラーリゾートという世界的にも有名な場所ですが、来る前には色々と考えますよね。交通はどうだろう、街中はどうだろう、インターネットはつながるのかと調べたり、誰かのブログを見てみたりしますが、実際に来てしまえば情報量が全く違います。

吉澤 そういう話ですね。それはそうです(笑)

本間 また、現地に来ると色々なことがあるじゃないですか。前回はスキースクールの話をしましたが、例えばITとか、リフト券の環境、あるいは人々がどんなふうにスキーを楽しんでいるのか、様々なことについて自分に関わる情報量が違いますよね。どうしても僕たちはこれまでと違う新たな経験をするということに関しては及び腰になってしまう。特に僕や吉澤さんはもういい年齢ですから(笑)、なんでこの年になって海外一人旅をしなければいけないのかと思いますが、実際に現地に来ると本当に色々なことを考えます。だから、やっぱり経験ってすごく重要だな、そして、経験を取りに行かないといけないなとも思います。

経験学習のサイクルにおける内省から教訓、これはこれで重要なことですし軽視されることではありません。でもやっぱり経験することはすごく大事です。僕たちと同じ年代の人たちは他の経験を多く積んでいると思いますし、ある意味引き出しも多くなっているから、別の場所に行くと見えるモノも大きくなると思うんです。

吉澤 若いころとは見えてくるものが違う、と。

本間 僕が以前ウィスラーに来たのは20歳の時で、先輩と一緒に来たのですが、正直に言いますとそんなに色々なことを考えなかったと思いますね。今になると、リゾートとかスキーの楽しみ方とか、人の行動とそれに対する自分との比較とか。また、ここにいる人たちとしゃべったり、話している人たちの内容に過剰に反応している自分に気づいたり、そういうことを含めて体験しないと分からないことってたくさんあるなと思いますね。

吉澤 なるほど。

本間にとって35年ぶりのカナダはこのパンケーキのように刺激的な体験が山盛りだった

バンクーバーの空港で驚いたこと

本間 一つ、バンクーバーの空港での出来事を話しますと、荷物が出てくるのがすごく早い。

吉澤 そうなんですか?

本間 ええ。大きいスキーバッグを持ってきたのですが、例えば成田とか羽田では北海道から持ってきた荷物が出て来るのに20分、30分とかかる場合もあると思います。だけど、バンクーバーでは5分とか……

吉澤 えぇ!?

本間 入国手続きも全部キオスクでできるから、カウンターに係の人がいないんですよ。キオスクでポン、ポンと手続きができて、歩いていくともう荷物が待っている。僕らは無意識的に、そういうことは日本が一番早いだろうと思っていませんか?

吉澤 無意識的にですか(苦笑)。確かにそうです。

本間 でも、カナダもすごいところは本当にすごいですよ。リフト券も30年前は紙でしたが、今はICカードで全部自動ですからね。もちろん、日本にもそういうスキー場はたくさんありますが、そうしたちょっとしたところから「あ、違うんだ」「ここではこういうシステムなんだ」と考えるんですよね。僕らはインターネットで情報を集めるという会社にいたわけで、インターネットとSkypeやZoomがあれば海外に行かなくてもいいと思っていましたけど、やっぱり新しい経験を取りに行くということは重要だなと、カナダに来て改めて考えました。決して「全てが」というわけでもないですし、「海外が」というわけでもありませんが。

今後は「同じものを見る、体験する」が鍵になる

吉澤 何て言うんでしょうか、例えば海外などその場に行くと、全ての感覚を開いて一度に情報が入ってくるという感覚でしょうか。

本間 これは僕たちがよくする話で、結局1on1をしている相手の人はテレビの4K、8Kみたいな解像度で色々なことを考えたり、色々なことを思い出したりしていますよね。

吉澤 そうそう。

本間 だけど、それを言葉にするのは難しいわけですよ。今の僕と吉澤さんの関係で言うと、「いやあ、吉澤さん、ウィスラーって凄いですよ」としか言えないけど、この言葉を言っている瞬間は色々なことを思い浮かべながら「いやあ、吉澤さん、ウィスラーって凄いですよ」と言っているわけですよね。

吉澤 はい、ですから正直に言ってしまうと、本間さんが思っているよりも伝わっていないですからね、今。なんかきっと凄いんだろうなと思いますし、空港や入国手続きのことを聞くと「そんなこともあるのか」と思いますが、たぶん、本間さんの中でブワーっと思い浮かべていることがほとんど届いていないという(笑)。YouTubeやnoteをご覧いただいている人も「もうちょっと何かないの?」くらいに思っているかもしれないですよね。ただ、本間さんの中でブワーっと来ているその様子は伝わってきます(笑)。

本間 100分の1も伝わっていない、ということですかね。だとすると、ある意味これくらいの情報格差の中で1on1をやっている、という話にもつながっていきますね。

吉澤 情報格差という話に行ってしまいそうですが、まず今回のテーマとしたいのは「経験」の大切さ。経験学習のサイクルで言うと、「内省」の前にまずは「経験」だ、こういうことですね。

本間 イノベーションは移動距離に比例する、と言った人がいましたよね。旅行をたくさんしたり世界で放浪している人の方がイノベーションを起こすと言っていた人もいて、それは経験が重要だということだと思いますし、本や映像では語れない情報量がその人にはある。そして、それが経験だと思います。また、1on1においても結局僕たちは相手のひと言、ふた言を聞いて、吉澤さんがさっき言ったように勝手に妄想するしかないという、この構造は一つの実感として覚えておいた方がいいかなと思いました。

吉澤 後半部分に関しては自戒も込めましょう、ということですね。その勝手な妄想、想像が全然合っていないこともある、そんな環境の中で話をしている。

本間 でも、だからこそ「同じものを見る」というのはすごく重要な経験だと思いますね。同じものを見る、同じ経験をする。これまた僕も吉澤さんもいい年齢だからというのもありますが、パッとひと言で言っても、フッと二人の中で腹落ちができる――経営学の流行りの言葉で言うと「センスメイキング」になりますが、やっぱり同じものを見る・同じ体験をするということが重要な経験になると思いますね。

吉澤 そこは鍵になるでしょうね。これからますますフォーカスが当たってきそうな気がしています。限られた環境の中で仕事をしてきたコロナを経て、企業が徐々に色々な動きをしながら働き方に関する見直しをしていることを考えると、同じ経験をしていくことがより重要になるという予感がありますね。

本間 今回はご覧いただいている人たちに何かを感じてもらえるのか、自信がなくなってしまいましたが……

吉澤 いや、むしろこの投げかけで何を思ったかをぜひ聞いてみたいです。

本間 そうですね。また今回のテーマにつながることを別の機会でお話しできればと思います。ありがとうございました。

吉澤 ありがとうございました。


bizlogueではYouTubeでも情報発信を行なっています。

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