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なぜ1on1はポピュラーになったか? 『ヤフーの1on1』本間浩輔が考える時代背景の変化

こんにちは、bizlogueです。

bizlogueのメンバーであり『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者である本間浩輔と吉澤幸太が講師を務める『慶應丸の内シティキャンパス(慶應MCC)』の講座『実践「1on1」の本質』。4年目を迎えた今年も満員という盛況の中、全6回の講座を修了することができました。ご参加いただいた受講者の皆さま、本当にありがとうございました。

今回の本間と吉澤による対談は講座の第2回目を終えた直後の収録となりますが、なぜここまで1on1が受け入れられ、広まっていったのかを改めて2人で考え、意見を交換。1on1が広まった理由にはここ10年で劇的に変化した、ある時代背景があるようです。


『労働人口の減少』と『新型コロナ』

吉澤 今日は『慶應丸の内シティキャンパス(慶應MCC)』の講座『実践「1on1」の本質』の話から行きますか?

本間 はい。先日、第2回目のセッションまで終えましたね。今年も受講者が満員になって大変ありがたいなと思います。今年で4年目になりましたかね?

吉澤 そうですね、講座としては通算4回目の開講となりますね。3年前に始まったのですが、まさかこんなに続くとは正直、僕は思っていなかった(笑)。

本間 僕らの講座が良いと言うよりも、1on1というものが世の中でポピュラーになってきましたよね。

吉澤 そうですね。逆に1on1ってバズワードとして出たのが相当前ですし、本間さんが本(『ヤフーの1on1』)を出したのが2017年ですから、なんだかんだで6年。ですから、1on1というこんなワードが広まっていくこと自体、あまり考えていなかったんですけれど、いまだにこのワードでもってあれだけの人が集まって、学びたい・知りたいという人がいること自体、良い意味で驚いていますね。

本間 1on1の本を出したのは2017年でしたが、実質的には吉澤さんと一緒に書いた本で、あれはなぜ共著にしなかったと言いますと、本を出した後に思いっきりディスられるだろうと思い(苦笑)、その謗(そし)りは自分が受けようという気持ちで出した本でした。それで、あれを書き上げるのに3、4年かかっていますよね。

吉澤 結局、そうでしたよね。2014年ぐらいの時にはもうそんな話をしていたと思います。

本間 ええ、それくらいの時から構想がありました。とすると、あの時に僕たちが考えていた1on1とその背景――なぜ1on1を始めようと思ったのかというその時代から今、およそ10年経っているということなんですよ。

吉澤 そうか、あれから10年になりますか。

本間 あの時、ヤフーで1on1をやろうと言った宮坂(学)さんに至っては今や東京都の副知事ですし、川邊(健太郎)さんは統合したZホールディングスの会長ですから、時代の変化を感じますよね。

吉澤 そうですねぇ。

本間 それで、なぜ今、1on1がこれだけの人に興味を持ってもらえているかというと、もちろんあの時の僕たちの感覚を多くの人に理解いただいていることもあると思うのですが、時代背景も変わったからじゃないかなとも思うんです。

吉澤 時代背景?

本間 大きく分けると2つあって、1つは労働人口が少なくなっている

吉澤 ほぉ、それは随分と大きな話になりますね。

本間 ええ、人が採用しづらくなっている。そしてもう一つはコロナでしょうね。

吉澤 これも大きいですね。

本間 1on1を始めようと思った当時はコロナの「コ」の字もなかったわけですから。それで今回はそれらについての話をちょっとしたいなと思います。

吉澤 はい、分かりました。

コミュニケーションツールとして1on1がある必然

本間 やっぱり「労働人口が減る」ということは10年前から知っていたことですけど、現実的に人を採用できないとか、人が会社を辞めていくということに対するインパクトが大きくなってきたと思いますね。だって、今や人がいないから事業ができないという世界になってきている。

吉澤 本当にそれ、耳では聞いていましたけれど、本当に目の前で起きているんだという感じですよね。

本間 タクシーがそうですし、ホテルや旅館もそうですよね。

吉澤 ええ、観光客が戻ったのはいいけれど、ホテルや旅館の方が営業できませんという話を聞きますよね。

本間 もう満室だと思ったら実は70%くらいの稼働率で、「なぜ満室になっているんですか?」聞くと、「いや、従業員がいないから」と返ってくるわけです。でも、日本の産業というのは、じゃあ社員なりアルバイトにお給料を倍払って雇用が維持できるかというと、それができる産業もあるけれど、そうじゃない産業の方が多い。

吉澤 そうですね、はい。

本間 となると、やっぱり会社が社員とどういうふうに良い関係を作るかですよね。このことを「エンゲージメント」なんていう言葉で最近は言うようになりました。昔は従業員満足度調査、エンプロイーサティスファクション、ESと言っていましたよね。この概念は15年以上前からありましたが、こういう社会環境の変化によってエンゲージメントの獲得が重要になり、さらに人的資本の開示みたいな話になるとエンゲージメントを表に出せと言われ、それがあなたのCHRO(最高人事責任者)の評価の一つになると、こういう時代ですよ。そう考えると、会社と社員の関係をどんどんミクロに見ていけば会社の代表は管理職であり、この管理職と社員のコミュニケーション、もしくはエンゲージメントを高めていくという方向に行くのは間違いないと思います。そこでのコミュニケーションのツールとして1on1があるというのは必然かなと思いますね。

時代の中で上長の在り方が変わってきている

吉澤 今でも基本的にはカスケードしたような組織がメインだと思いますが、その1個1個の結節点みたいなところがますます大事になって、いい加減にはできない。バサーッとやるみたいなことにはならいですよね。

本間 そう、結節点ね。本当にそう思います。そして、もう一つの時代背景の変化と言えば、やっぱりコロナ。

吉澤 これは世の中を大きく変えちゃいましたよ。組織で働くという点においては、まだその影響の度合いみたいなものを測り切れていないくらいの大きなインパクトで、後遺症も見えていない。そういうところでどう動くかというのは結構、我々みたいな役割の人は考えなければいけないなと思いますね。

本間 そうですね。短い時間でこれらのことを振り返るというのはなかなか難易度が高いと思いますが、一つあるのはやっぱりオンラインベースになった時のコミュニケーション、それから“つながり”。上長が部下である私のことをどれだけ大切に思ってくれているのか。信用、信頼という言葉がキーワードになってきたのではないかなと思いますね。

吉澤 ますます、そうですよね。

本間 これは伝聞なのですが、ある若い社員が「上長に飲み会に連れていってほしいとは思いません。でも、自分のことをちゃんと理解して信用してほしい」と話したひと言がありました。これは刺さりましたね。

吉澤 ほぉ~……そんなセリフがあったんですね。ちょっと古風な気もしますが、時代がぐるっと回ってきたんですかね。

本間 そう、人間の本質的なものでしょうね。世界がどんどんデジタル化していっても、人間の細胞なんてこうした劇的な変化にすぐには対応できないわけですよ。でも、そういう時代の中で上長の在り方みたいなものは変わってきているとすると、部下のための時間である1on1というものはある意味、必要性があるなと思っているわけです。

吉澤 なるほど、確かにそうだと思いますね。

本間 それで今挙げた2つの時代背景の変化は、ヤフーで僕たちが1on1を導入しようとしていた時に全く意識していなかったことなんですよ。

吉澤 そうですよね。別にこういう会話をしていたわけではなかったです。

本間 もちろん“種”としてはそういうものがありましたが、それが思いがけない形で広がってきたなと思っていて、だからこそ、僕たちが言い始めたからというわけではなく、1on1がこうして広まってきたのではないかなと思いますね。そして、僕らももっと学んでいかなければいけないというのを今回の慶應MCの講座で改めて思いました。

吉澤 本当にそうですね。私たちが話をしているだけではつかみきれない感触がありますけれど、定期的に実際にビジネスの現場にいる人たちの言葉だけじゃない反応を見ることで、私たちにとってもすごく大きな学びになるなと毎回思っています。

本間 僕たちがやっている講座の中で、個人で誰でも参加できるというのはこの慶應MCCだけじゃないですか。一人の興味ある人が個人で参加できる講座というのはコレしかやっていませんので、僕たちにとってもすごく良い機会ですし、講座以外でもまたどこかで色々な意見を聞く場があるといいなと思いますね。

吉澤 そうですね。意見を聞いて私たちも学びますので、またそれを皆さんに伝えるという、そうした循環ができればいいですよね。そして、慶應MCCの講座はまだ前半戦ですから、後半になって「こんなことがあった」ということを引き続きお話できればなと思います。また、こちらの記事を読んでいただいた皆さんの中で1on1やビジネス、人事、組織開発などについて何か思うこと、感じたことなどご意見、ご質問ありましたら、ぜひコメントでお寄せください。よろしくお願いいたします。


bizlogueではYouTubeでも情報発信を行なっています。

■ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
(著・本間浩輔)

■1on1ミーティング―――「対話の質」が組織の強さを決める
(著・本間浩輔、吉澤幸太)

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