読書記録 | 夢野久作の幻夢郷より少しミステリー仕立ての短編「けむりを吐かない煙突」に触れてみる
夢野久作の作品といえば、タイトルから漂う特異性と本の表紙画の薄気味悪さから、ホラー小説のイメージが強いのであるが、「ドグラ・マグラ」他いくつかの作品を通読すると、私個人としてはミステリーとホラーの間の子のような存在に思えるのである。
つまりは「夢野久作」というジャンルではないかと思えるのである。
今月は国内短編小説の読み比べが私のトレンドとなっており、先月まであれ程に拘っていたSF小説は何処へやらというところで、久しぶりに本棚から引き出したのは、以前表題作だけ通読した夢Qの短編集「少女地獄」であり、その内の最もタイトルが気になった「けむりを吐かない煙突」を開いてみた。
ある婦人を殺害し逃亡する男の、殺害までの一部始終を綴った話であるが、持ち前の薄気味悪さとカタカナ表記の独特さは然ることながら、どちらかと言えばミステリー仕立ての作品で、流れに複雑な部分がなく読者にごく分かりやすくなっている。
「ドグラ・マグラ」「少女地獄」ほど奇怪さのパンチは効いてないものの、ミステリー小説の一つの形として読んでみるのもいいかもしれない。
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