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味ご飯

「味ご飯」が方言だと知ったのは、大学進学のため東京に引っ越してから。

「味ご飯」とは、いわば炊き込みご飯のことで、祖父母は「味めし」と呼んでいた。ただ、(あくまで松阪市近隣での使用法ではあるが)炊き込みご飯よりも狭義である。典型的な具材としては、鶏肉(場合によっては牛肉)、にんじん、椎茸、ゴボウ、油揚げ、かまぼこ、こんにゃく、である。それをほんのり甘い醤油ベースの出汁で焚き上げる。

一方の炊き込みご飯といえば、栗ご飯、たけのこご飯、山菜ご飯、釜めし、赤飯など、実にバラエティに富んでいる。だが、これらはいずれも「味ご飯」ではない。炊き上げた白飯に具材を混ぜ合わせる混ぜご飯も、「味ご飯」の範疇からは外れる。

「味ご飯」といえば、町内のこども会など、子どもの集まる会で近所のおばあちゃん達がふるまってくれた印象が強く残っている。ほんのり甘く、さまざまな具材が入るご飯は、それだけでちょっとしたご馳走だった。

不思議なことに、大学生になってから食べたいものをいつでも作れるようになったのに、「味ご飯」を作った覚えがない。私にとっての「味ご飯」とは、作ってもらうからこそ美味しい、という類の食べ物なのかもしれない。

写真は、炊事をする祖母の後ろ姿。

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