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「日本屋」と「日本の本屋」

まあ、そうなりますよね。

外国人観光客が書店で買っていくのはほとんどコミックか雑貨類、そして文房具です。日本製の文房具は質が良いらしく、ボールペンやシャープペンシル、替芯、消しゴム、定規などが一気になくなることも珍しくありません。

本の利益率は2割程度。本と本屋が好きで書店員になった身としては、そこをどうにかしたい。ただ目標は目標として、その日の売り上げを確保するためにはより利益率の高い商材でカバーするのもひとつのやり方です。文房具、雑貨、カフェ、あるいはイベントなど。

一方、若いカップルが店内でこんな話をしているのが耳に入りました。「ここ、何屋さんかわからないね」

ごもっとも。

本当は本だけで勝負したい。私の場合、以前の職場がCDやDVD、ブルーレイを扱っていたことでさらに思いが強まりました。

人気アイドルグループの新曲発売が決まると、電話が鳴りやまない。予約予約予約予約。しかもいくつかのバリエーションがあり、値段や販売時に渡す特典が変わってくる。

ある日、品出しも返品も注文もできず、事務所で膨大な予約リストを作ってチェックする作業に追われていた社員の人がつぶやきました。「私、書店員なのに」言葉が出ませんでした。

あくまでもメインは書籍。村上春樹の単行本や太宰治の文庫本を買ってくれる外国の方が時々いらっしゃいます(洋書版ではなく)。サン・テグジュペリ「星の王子さま」もけっこう訊かれます(というかスマートフォンの画面を見せられる)。総売り上げのなかで占める割合はわずかかもしれない。でもここを軽視したら専門書店はコンビニ化してしまう。

数字はもちろん大事。しかし売り上げさえ良ければオールOKでもない。「日本屋」の要素を持った「日本の本屋」で働きたいです。

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