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「青空古書店の矜持」と「大統領の理解」

興味深いニュースです。

パリ五輪の開催式がおこなわれる7月26日に合わせ、テロ防止の警備のためにセーヌ川沿いに並ぶ青空古書店「ブキニスト」を数日間撤去する計画が進められていました。しかし古書店側が「われわれはパリの景観の一部だ」と訴え、猛反対したそうです。

木やブリキでできた古い露店みたいなので、移転を強いられることによる破損のリスクは高いかもしれない。でも店主たちが反対した根本的な理由は他にあるはず。もし「補償を手厚くしてくれ」みたいな話なら、国が説得を諦める結末には至らなかった気がします。

景観の一部。この主張にパリ文化の担い手として長年働いてきたことへの矜持を見ました。五輪は国の行事だから仕方ないと空気を読んで引き下がるのではなく、何があっても守るべきものは守る。「普段通りの日常を大事にして、そのうえでの非日常だろう」という魂の叫びを受け取りました。

マクロン大統領は全ての古書店を保護し、撤去を強制しないよう警察に要請したそうです。↑によると「開会式の収容観客数に影響する可能性もある」とのこと。だとしたら集客や一時的な盛り上がりよりも街の風物詩を大会中も存続させ、16世紀以来の文化に蓋をしないことを優先した形になる。歴史の縦糸に対する理解の深さに敬意を表します。

日本にも海外からの観光客は大勢訪れています。彼ら彼女らの顔色を窺い、不自然に外面を良くして媚びるのではなく、いつもの日常を見せ、当たり前のサービスを提供する。「オーバーツーリズム」に陥りがちな状況を改善するうえで、ぜひこの件を教訓にしてほしい。

似たようなケースが日本で起きたらどういう決定が下されるか? 悲観的な絵しか浮かびません。理由は↓。「お祭りが終わっても、生活は続く。生活を壊された人は、壊されたままの生活が続く」という一文が印象に残っています。

いつか「ブキニスト」を体験したいです。

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