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「奇跡の新刊」と「絶対的な支配者」

「ベルセルク」42巻、発売日に買いました。

作者である三浦建太郎さんが亡くなり、未完もやむなしと考えていたので嬉しいです。連載再開のために尽力してくださった関係者の皆さま、監修を担う森恒二さん、そしてスタジオ我画の方々、ありがとうございます。

絵の説得力と広大な世界観はそのままに、物語を再構築していくうえでよくいえば文学的な、悪くいうと曖昧になっていた部分を割り切り、クリアにした印象を受けました。

次元の異なる話で恐縮ですが、専門学校時代に同級生が途中で断念した短い小説を引き継ぎ、完成させたことがあります。タイトルは「黒猫のミシェル君」。データが残っていたら、noteにそのうちアップするかも。

キャラクターや大まかな筋がすでに決められているゆえ、ある意味で書きやすかったです。と同時に、サイズの合わないレンタルスーツを着ている感覚もあった。やはり己の脳内でまったくのゼロから生み出し、少しずつ積み重ねる方がクリエイティブな感性と連動しやすいのでしょう。

大事なのはストーリーの主導権を押さえ、手綱を握ること。じゃないと「笛吹けど踊らず」でキャラクターが動いてくれない。己の創り出した存在じゃなければなおさらです。

ときに登場人物が作者の意図を逸脱し、自発的に暴れる。だから創作は面白い。しかし逆説的ですが、その状況を迎える前段階では物語とキャラクターを完全にコントロールし、絶対的な支配者として君臨する必要がある。

毎週日曜に新作を出している「ハードボイルド書店員日記」の主人公は私であって私ではありません。私だったらまずやらない行動や発言をしばしば選ぶ。なおかつ掌の上というか、ゆるい意味で己の延長だから制御が行き届いている。そこの手綱が弱いと作品としてまとまらないし、長く続けられない。

新たな支配者のもとで自由に羽ばたく「ベルセルク」を楽しみにしています。

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