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「別れ」の形はひとつじゃない

2000年8月に旗揚げした頃の「プロレスリング・ノア」を思い出しました。

キーマンは秋山準選手。敵対していたノーフィアー(大森隆男&高山善廣)と結託し、三沢光晴&小橋建太&田上明との世代闘争に打って出たのです。

しかしそれがひと段落した秋口。6人タッグ戦終了後に秋山選手はノーフィアーと握手して別々に退場。再び彼らと戦う道を選びました。理由は「熱くなれる相手は横よりも目の前にいる方がいい」から。

一度仲間になったことでなぁなぁに陥るかと思いきや、彼らの見せる攻防は常にスリリング。2001年4月に日本テレビがノアの中継をスタートさせた回のメインは「秋山準 vs 大森隆男」のシングル戦でした。

憎悪剥き出しで殴り合うのもプロレスですが、リスペクトを胸に真っ向勝負で競い合うのもプロレス。ムリくりな因縁を捏造しないことで逆に選手たちの気持ちがストレートに戦いへ反映されるケースもあるわけです。

そこでSHO&YOH。

彼ら「Roppongi 3K」はタッグリーグを3連覇し、王座も5度獲得した名コンビ。チームとしてやり尽くした感があります。ならば各々の目がシングル戦線へ向くことは必然。つまりタッグにはもう意欲が沸かない。YOH選手の「負けても悔しさが込み上げてこない」というコメントがそれを物語っています。

これは離職が決まった後、最終出社日まで働くことに対して「やる気が出ない」という状況に似ています。もちろん本来は「仕事なんだから最後までしっかりやれよ」がマナーでしょう(たぶんSHO選手はそのスタンス)。でも私はYOH選手を支持します。我々が口に出しづらい本音を赤裸々に代弁してくれたから。

近い将来、彼らは別々の道を歩むことになるでしょう。でもできたら陳腐な「裏切り」ではなく、かつての秋山選手とノーフィアーみたいに握手して堂々とサヨナラして欲しい。そして彼らにしかできない熱い真っ向勝負で競い合って欲しい。

人の世にはドロドロと無縁な「前向きでキレイな別れ」もたくさんあるはず。プロレスが人生の縮図ならこういうのもアリでは? ふたりの新章を楽しみにしています。

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