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裏切られた遺言

著者 ミラン・クンデラ
訳 西永 良成
出版 集英社 1994/9/20 第一刷発行

本書は、訳者あとがきによると、クンデラが長編小説『不滅』を刊行したのちに「ランフィニ」誌にほぼ毎号エッセイをフランス語にて書いていたものを一冊にまとめたものである。

カフカとヤナーチェクを軸にクンデラが芸術批評を展開させていく。
ストラヴィンスキーの祖国への想いを音楽から見出したあたりは何となくクンデラ自身を重ねてしまう。

感傷的な人間ほど無情な者はまたとないからだ。思い出してもらいたい、「感情あふれる様式のかげに隠された心の冷淡さ」を。
『裏切られた遺言』ミラン・クンデラ 集英社 p113


また、第六部の「作品と蜘蛛」ではクンデラの小説論が述べられ最終部「きみ、そこはきみの家ではないのだよ」でカフカが遺稿は焼却して欲しいとしたカフカの遺言に触れながら死んだ作家たちの意志に忠実でありつづけるクンデラの姿勢が述べられ締めくられている。

引用されたフォークナーの一文がとても印象的だ。

「彼女が存在するのをやめてしまったとき、思い出の半分もまた存在するのをやめてしまった。そしてもし、おれが存在するのをやめてしまったら、そのときにはすべての思い出が存在するのをやめてしまうことになるだろう。そうだ、と彼は思った、悲しみと虚無のあいだで、おれが選ぶのは悲しみのほうなのだと」
『野生の棕櫚』ウィリアム・フォークナー著


のちに、クンデラは『笑いと忘却の書』を書きながら、タミナにこれと似たような状況を与えた。
『裏切られた遺言』ミラン・クンデラ集英社 p320



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