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手で繋ぎ合わせる喜び

ここ半年余りの間、父の書斎を断捨離中に出会った美しいビンテージ本の数々。詩集や写真集、ハードカバーから雑誌まで、その風貌に込められた意思のような魂のような空気、その無言でもストレートに訴える「声」の強さに魅せられ、本という手で触れられるオブジェクトとしての価値を見直しているところだ。紙のにおい、フォントの色、言葉の並びに硬さ・柔らかさ。文字の受け皿だと思っていた紙の束も、違って見えてくる。本って意外と五感を刺激するものだって知らなかった。

だから自分で作ってみたくなって、もっと本の可能性を探りたくなって、勇気を振り絞りワークショップに参加してみた。自分の手で何かを作り上げるなんて何年ぶりだろう。こどもの頃はみんな普通にやっていたはずだけど、大人になってこういうことにのめり込むことに気恥ずかしさを感じるのは私だけなのかな。

そういえば昔から文房具屋さんに行くのが大好きだった。

色々なペンを試し書きしながら、どんな時に何を、誰のために書くのかを想像する。買わなくてもそうやって頭の中を刺激していた。最近は鉛筆とノートが気になっているらしい。書いた時に手から伝わるモノの質感、触ることで得られる何だかわからない楽しさ、頭の中を整理してくれる紙の上の線、すべてにわくわくするから作り手にリスペクトしたい。とても単純で古い道具だけれど、今は複雑すぎる世の中だから逆に、その気軽さとわかりやすさが有難い。手から自分に伝わってくる本当に大事なこと。手と目と心がつながる感覚を忘れていたこと、本をつくることで思い出させてくれた週末でした。

折って、切って、縫って繋げた紙のページを糊でくっつける作業。だんだん本らしくなっていく。


このノートは、ここロンドンのコワーキングスペース Second Home で書きました。

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