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「日本で働きたい」外国人は、どんなことに悩んでいるのか

先日、こちらの記事を読みました。


マレーシア在住の文筆家/編集者の野本響子さんのコラムです。有料記事のため詳細は控えますが、こんな内容です。

日本の企業は、優秀な外国人(技術やビジネスに興味がある人)を雇いたい。でも、日本で働くことを選んだ外国人は、日本のアニメや漫画が好きな人である。ここに大きなギャップがある。


この記事を読み「そうなんだよねぇ」と思いました。

我が家はホストファミリーをしていて(ウィルス騒ぎ以降は休止中)、日本で就活する留学生のようすを見てきましたが、上のようなギャップは大きいなと感じています。

留学生をうけいれるのは、我が家の場合、おもに次の2つのルート。

(1)市が運営する「国際交流協会」
(2)民間やNPOのホストファミリープログラム

この2つのルートの留学生は、特徴も、日本で就活するうえでの悩みも違います。今回は、その悩みについて具体的にお話したいと思います。

まず、(1)の「国際交流協会」で紹介される留学生は、いわゆる「優秀な外国人」。彼らの多くは、出身国の国費留学生です。つまり、自国でとても優秀な成績をおさめた学生たちが、日本の技術を学ぶためにやってきます。理系の人たちが多い印象。

わたしが住んでいる市には国立大があるので、ホストファミリーとしてうけいれるのは、その大学の留学生。

彼らの目的は、学士、修士、博士取得などさまざまで、日本に滞在する年数もバラバラです。1年ほどで帰国するケースもあれば、6年くらい学ぶ学生もいます。

留学生が学ぶ学部では、授業は基本的に英語です。来日してから日本語の勉強をはじめる留学生が多く、日本語を話せないまま帰国するケースも少なくありません。

修士号や博士号を取得した優秀な留学生は自国に戻ったり、別の国で働き始めたりする人もいますが、なかには日本で就職しようと決めて、就活をスタートする留学生もいます。

ところが。

「優秀な外国人」である彼らは、就活を通じ「あれ?なんか違うぞ?」と思いはじめるのです。

その理由の1つが、入社の条件として「日本語能力検定試験のN2」取得を求められること。驚くことに「日本語能力検定試験のN1」なら内定は確実、といわれた留学生もいました。

N1レベルは、難易度がかなり高いです。こちらを見てください。わたしは、留学生に分からない問題を質問されてタジタジになりました。どんなふうに説明したらいいのか分からない。わたしは日本語ネイティブなのに。説明のしかたをわたしが質問したいくらいです。

また、面接で「うちの会社で働くには、日本語でコミュニケーションできないとね」と、いわれたケースも。留学生は、もちろん英語はペラペラ、ネイティブレベル。それでも、日本では日本語が話せないとね、といわれてしまう。

自分の専門知識の価値よりも、日本語スキルのほうが企業には大切なのか、とガッカリする留学生も。

ハイレベルな日本語を求められるだけでなく、就活中に感じる「あれ?なんか違うぞ?」が積み重なり、日本での就職をあきらめる。そんなケースをいくつも見てきました。「日本で学んだ専門知識を日本の会社のために使いたかった」といいながら、帰国した留学生もいます。

それでも就活をなんとか突破し、日本の大企業に就職した人もいます。でも残念ながら、入社しても長く続きません。

それはなぜでしょうか。

日本企業での働きかた、専門知識を活かせないジレンマ、社内での上下関係、家族よりも仕事優先のような、日本独特の会社文化になじめないのが原因です。

日本の企業で働く外国人の悩みを詳しく書いた記事があるので、よかったらどうぞ。


日本企業に見切りをつけた「優秀な外国人」は、アメリカ・カナダ・ニュージーランドなど他国で就労ビザをとり、自分の専門分野を活かせる企業を選びます。

日本の会社は彼らにとって働きにくいし、魅力的ではないからです。

つぎに、(2)の民間やNPOのホストファミリープログラムで日本にやってくる留学生の場合は、どうでしょう。

彼らは「超」がつくほどの日本好き。日本のアニメ、漫画、ゲーム、映画などにめちゃくちゃ精通しています。「日本」は彼らの推し。

そんな彼らにとって「日本語を勉強したい!」と思うのは自然の流れ。来日時点ですでに相当なレベルの日本語を話せる人も珍しくないし、なんせ日本ラブラブラブなので、日本語の習得スピードがめちゃ速い。

「スポンジのように吸収する」とはまさにこのことね、といつも感心しています。

こういったタイプの留学生は「日本で働きたい」という熱意が、とにかくすごいです。日本語も流ちょうで、日本の文化や習慣にも明るい彼らにとって、日本はずっと暮らしていきたい場所。だからどうしても日本で働きたい。彼らの推しは「日本」ですから。

でも、そこには最初に紹介したようなギャップがあります。

日本の企業は、優秀な外国人(技術やビジネスに興味がある人)を雇いたい。でも、日本で働くことを選んだ外国人は、日本のアニメや漫画が好きな人である。ここに大きなギャップがある。

日本ラブな留学生たちは、日本の企業が求めているような「技術やビジネスに興味がある人」にフィットしないことが多い(ごく稀にフィットするケースもあります)。いくら日本語が流ちょうでも、専門知識・技術・ビジネスに興味がないと、なかなか雇ってもらえません。

それでも彼らは、日本で働いて日本に住み続けたい。そんな留学生は、どんな会社に勤めると思いますか。

我が家と縁のあった留学生の1人は、外国人がCEOを務めるこの会社で働きはじめました。この会社は、日本ラブな留学生たちのあいだでは人気の就職先です。


スタッフの国籍は21ヶ国以上。社員みんなの推しが「日本」。多くの外国人に日本をもっと知ってもらいたい、日本のよさを分かってもらいたい、日本の国際化を支えたいという熱意で、事業を展開しています。

公式twitterでつぶやく情報も、なかなか興味深い。

彼らの強みは「外国人目線で日本を見ることができる」なので、それを活かしているなぁと思います。


このように、日本で就活する留学生の悩みは尽きません。

日本の企業が「優秀な外国人」を本気で雇いたいのであれば、外国人から「魅力的だなぁ」と思ってもらえるような体制に変わる必要があります。

日本にいれば、日本の会社に入れば、こんな面白いことができるのか、と思ってもらえるかどうか。そう思ってもらえなければ、優秀な外国人は日本から流出するばかり。

これは、日本にとって大きな損失だと思いませんか。


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