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戦友

顕微授精をするために、また病院に通い出した。
そこで、高校時代の友達のR子と会った。

高校時代をすっ飛ばしてエッセイを進めてきたが、
高校時代の友達は、私の今までの人生、そしてこれからの人生も一緒に歩んでいく仲間だと思っている。

もちろん、それぞれ結婚、出産、子育てで、一時的に疎遠になっていた時期はある。
友達が、それぞれのコミュニティで見せている顔と、おそらく高校時代の友達に見せる顔は、全く違うものなんじゃないかと思う。

それくらい、高校の友達といると自然体で居心地がいい。マウントは全くない、楽な関係だ。子育てが落ち着いた今は、2.3ヶ月に1回は会って近況報告をしている。なかなか、そんな友達に出会えることはないんじゃないかと思う。

その中の1人R子は、性格は違うものの、結構似たような人生を歩んでいる。キャリアウーマン、30歳での結婚、セックスレス、シングルマザー、看護師、子供の悩み等その時々で2人で励まし合ってきたような気がする。

そのR子と、芸能人御用達病院で偶然会った。もちろん治療しているのは知っていた。

この病院の患者さんは皆んな戦っている。
自然に授かることの出来ない虚しさや、頑張ったのに上手くいかなかった時、いつできるかわからない苦しみ、金銭面での苦悩、その思いを共有できる友達に、会えて嬉しかった。

緊張感あふれる待合室で、いつも見慣れた顔と、聞き慣れた声や話し方、共に違う戦友は、安心感を与えてくれた。お互いの成功を祈りつつ、第二子の治療1回目を開始した。

1回目の採卵に向けて、鼻の点鼻薬と、ホルモン注射をしにセレブ御用達病院の協力のもと始めた。
鼻の点鼻薬は一本2万円程するので、前回のあまりを使った。それが後にショックを大きくした。

何日か後のエコーで明らかに前よりも卵胞が少なくなっている。5.6個だろうか、これが、年齢の壁なのか。卵胞がいい大きさになってきた所で、また芸能人御用達病院に採卵に行った。

また、眠る薬を使って採卵する。麻酔薬も手慣れたものだ。採卵後医師からショッキングなことを言われる。「今回は採卵できませんでした」「卵が良くなかったみたい」と、私が、もしかして点鼻薬が古かったからですかというと、「点鼻薬のせいかもしれない」と言われる。

2万円をケチって、25万円損した、お金の問題もあるけれど費やした時間が無駄になったことにもショックを受けて、涙が出た。

1人子供がいるから泣く必要あるのかと思うかもしれない、でも、ショックは1人目の時と全然変わらない、同じだった。それくらい不妊治療はメンタルをやられる。

戦友は、別の理由で1回目はダメだったみたいだ。
いつかこれも過去の思い出になって、懐かしく思う日が来るとその時は2人とも思いも知れず、先の見えない戦いを続けることになった。

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