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【小説】 日記

1月1日 
今年の目標は、日記をつけること。3日坊主にならないようにする。

1月2日
餅を食べた。

1月3日
祝・3日坊主にならずに済んだ。

1月4日

1月5日

(これ以降、7月6日まで何も書かれていないため省略)

7月6日
彼氏ができた。云々。(「云々」の部分は、長ったらしく愛の言葉が書いてある。ここでは書かない)

(7月7日から8月23日まで痴話話ばかり続く。癪なため省略)

8月23日
祝・同棲することになった。味噌汁つくれるように練習!

(9月19日まで省略)

9月19日
彼と喧嘩した。わざわざあんなこと言わなくていいのに。もう全然好きじゃない。別れたい。日記を見返すとイライラする。こんな日記捨ててやる!(「こんな日記捨ててやる!」の部分は、上からボールペンでぐちゃぐちゃに塗りつぶされているが、かろうじて読むことができる。おそらく、日記を捨てると言っておきながら、それを日記につけている自分に腹がたったのだと思われる)


 「お祖父ちゃん、何読んでるの?」老人が部屋で一人で日記を読んでいると、女の子が部屋に入ってきて聞いた。「お祖父ちゃんが日記買ってあげようか?」老人は優しい目で女の子を見た。「いらない」女の子は興味なさそうに首を振った。「そうか、そうか」老人は笑った。しばらくして、女の子は何も言わず、つまらなそうに部屋から出て行った。

 「さて」老人は重い腰を持ち上げて立ち上がると、仏壇の前で手を合わせ、ろうそくの火を消すと、部屋から出ていった。


9月25日
彼と仲直りした。いっぱい、いっぱい、いっぱい喧嘩した。でも、いっぱい、いっぱい、いっぱい気にかけてくれてたから。「お祖父ちゃんになっても、ずっと愛してるよ」って言ってた。日記につけとこう。私も愛してるよ。

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