人事制度としての「目標管理制度」は個人の役に立つか?個人にとってより重要な「対話」を忘れていませんか(後編)

「OKR」と「SMART」。目標管理制度の分野における近年のトレンドのおさらい

GoogleやFacebookをはじめとしたシリコンバレーの大企業やメルカリなどが取り入れている「OKR」、そして目標設定の枠組みとしての「SMART」、これらが近年の流行りの代表格と言えるでしょう。

まずここ数年で目標管理制度の分野で話題になっているのが「OKR」です。基本的な構造はObjectives & Key Results、つまり目標(Objectives)と主要成果(Key Results)を全社、部門、個人と階層ごとに関連づけながら展開(ブレークダウン)されるものです。会社全体の目標が、より身近な部門や個人にブレークダウンされ、かつ組織内でその構造が共有される点において、従来型のMBOよりも個人から理解を得やすい仕組みなので見習うべきところがあると評価しています。

また、目標の設定に必要な「SMART」という枠組み(下記)は合理性もあり、基本的には見習うべきであると評価していますが、企業の目標内容によっては一様に適用できない場合もあるでしょう。

Specific(具体的である)
Measurable(計測できる)
Attainable(達成可能である)
Relevant(妥当性がある)
Time-bound(期限が設けられている)

先進的な大企業の一部では「目標管理制度」を廃止する事例も。そこから学べることとは

従業員にとって「やらされ感」が強いといったの理由から、目標管理制度そのものを廃している企業が増えているという報道をここ数年目にするようになってきました。前回のブログにもある通り、目標管理は組織体には有効ですが、一人ひとりの個人には適さないと思っています。欧米の代表例ではGEやAdobe、日本の大企業では博報堂などが目標管理制度の廃止(ノーレーティング)を表明しています。

先進事例の中でも特に突き抜けている感があるのはNETFLIXです。NETFLIX CULTURE DECKの共同製作者であり、同社の最高人事責任者でもあったパティ・マッコードの著作『NETFLIXの最強人事戦略――自由と責任の文化を築く』(原題:Powerful: Building a Culture of Freedom and Responsibility)の日本語版は、筆者にとってインパクトの強い書籍でした。この書籍を読んで大いに共感した部分の一つは、「経営陣がIRに要すると同等かそれ以上に、会社全体一人ひとりに会社が成そうとしていることを丁寧に浸透させる努力をしている」という部分です。

企業のIR活動を見習って会社と情報の聞き手(この場合は従業員)との情報の段差を解消するならば、まずは会社の全従業員が、事業そのものや顧客について十分に理解を深めている必要があります。そして数値目標のみならず、目標をどのように達成しようとしているのか?組織目標を達成するうえでどのような障害があるのか?何が成功の鍵なのか?といった、会社が向かうべき方向や会社が抱えている実情を共有することが、会社全体のパフォーマンスを高めるために不可欠な取り組みだと考えます。

個人にとっては1年間という時間をどう活かし、自分は何が得られるかが重要

1年という時間を想像してみてください。仕事を通じて知識を増やしたり、深めたりすること。これまで経験したことがない、新しい取り組みをすること。新しい出会いや対話から、自分とは異なる価値観や考え方に触れること。一人ひとりの個人が計画性を持って取り組むことが出来れば、新しいことに取り組むことができる時間となるでしょう。

その1年を終え、新年度を迎えた時に自分が何を得ているのかは個人にとって、とても重要なことです。こうした考え方に基づくと、上席者は以下のようなことが実践できることが理想ではないでしょうか。

(1)自社の事業や顧客について改めて学び、新たな期を迎えた会社が向かう方向や会社が抱える実情を管下社員と入念に共有する
(2)管下一人ひとりの「現状」と当事者が思い描く「ありたい姿/キャリアビジョン」を共有する
(3)上記(2)を念頭において部門のOKR:目標(Objectives)と主要成果(Key Results)を個人にブレークダウンする
(4)期中、そして通期の結果として、上記(1)と(2)を併せて当事者とレビューする
比較の元になる「現状」を構成する要素の例としては、以下のような内容があげられます。

所属部署、職種、等級・グレード、役割・権限・責任、職務内容、知識・技能・累積経験量、年俸(給与、賞与、その他インセンティブ)、労働時間、労働環境、人間関係(対同僚、対上司、対部下)など

「ありたい姿/キャリアビジョン」の例としては、以下のような内容があげられます。

(a)時間的なターゲット:目先1年、向こう2−3年、5年後、10年後
(b)求める変化の度合い:現在の継続/延長線、同じ部署・職種でより広い責任を負うなど発展型を望む、異なる部署への配属や職種の転換を望む
(c)コミュニケーション:指摘・指導して欲しいこと、認めて欲しいこと、評価して欲しいこと、等々
これらの要素を踏まえて、上記の「現状」と同様の要素について将来像を描けると良いでしょう。

以上、理想的な上席者の関わり方を述べましたが、プレーイングマネージャーが多い現実に鑑み、上席者がこのような役割を果たすことは難しい場合が多いでしょう。従って、このような方向に向けて目標管理制度を方向修正することと並行して、上席者(マネージャー)の役割についてまず見直すべきところを併せて改善していくことが必要不可欠です。

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