〔ショートストーリー〕エマ
森の入り口にあるエマの家まで、夢中で自転車を漕いできた。この辺りは夜になるとずいぶん暗い。息も整わないままチャイムを鳴らすと、驚いた顔のエマが出てきた。私は黙ったまま、彼女に生花で作った花束を差し出す。
「えっ?私、アレルギーだって…」
少し後ずさりながら戸惑うエマ。私は無表情のままで言う。
「嘘だよね、それ。この間、森で見たから」
エマの顔から微笑みが消えた。まだ冷たさの残る夜風が吹き抜ける。
エマが転校して来たのは3カ月前。色白で儚げな彼女は、青々とした雑草の中に咲く鈴