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台湾ドキュメンタリー「私たちの青春、台湾」


2014年の台湾のひまわり運動を撮ったじっくり沁みてくる良いドキュメンタリー映画でした。近隣国の現実を知ると言うことに留まらず、日本に生きる自分たちの今について考える良いきっかけになる一本だと思います。

◆「私たちの青春、台湾」



ひまわり運動は、世界でも数少ない成功した市民による抵抗運動だと言われています。

ざっくり言えば2014年当時の親中的政策(サービス貿易協定)に異を唱えた若者たちが「台湾民主主義」実現のためのデモを行い市民もそれに賛同します。

さらに若者たちが立法院(日本の国会議事堂)を占拠したのです。そして政府との度重なる対話の末、若者たちの政治に関する要求を政府が実現することでひまわり運動は終結します。

ひまわり運動に携わった若者たちと監督

活動の主軸を担った若者は2人いました。

その一人、林氏は現在、議員となり政治の場面で活動を続けています。夢の実現に成功したと言えるでしょう。

ドキュメンタリーが追ったのは林氏と同じく活動の主軸を担ったもう一人の青年です。彼は運動終了後に過去の過ちが発覚し、表舞台から姿を消し政治に携わることも出来ませんでした。ひまわり運動を成功に導いたからといって決して聖人君主ではないのです。

また中国本土からの留学生として活動に参加した女性もドキュメンタリーに登場しますが、彼女は台湾人ではなく「中国人」とみなされ、運動そのものに関わることも困難でした。

どんなに大きな役割を果たしても消える人もいる。世界のうねりに関わりたくてもはじかれる人もいる。

運動を撮り続けた監督が気づくのと同じように観る者も「民主主義とはヒーローによって与えられるものではなく、一人ひとりが困難を乗り越えた先に得られるものだ」と痛感させられます。


*このドキュメンタリーを見た直後、機会があってライブトークイベントに参加しました。そこでの台湾の作家の発言が至極興味深かったので書いておきます。
彼曰く「台湾では『妖怪ブーム』が2014年から起きているが、これはひまわり運動と切り離せないものだ。ひまわり運動により台湾に内在していた二項対立(親中、反中)が浮き彫りとなったことを契機に、特に若者を中心として「台湾」について考える=台湾人としての自分のアイデンティティを再考するようになった。その流れの中での民俗学的な台湾の再想起が『妖怪ブーム』という現象として発現した」のだそうです。
文化は繋がり、連動するものなのですね。

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