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読了記録「ハリウッドの悪魔」

まず結論。

面白くなくはないけれど、オレは物語の中にノリ切れませんでした…。

特定のジャンル小説ではないのが売りなのかもしれないけれど、果たしてコレはミステリとして読めばいいのか? SF小説? if歴史モノ?

残念ながら日本には山田風太郎とか荒俣宏といった大先輩がおられるので、さすがに伝奇小説とコレを呼ぶのは、正直言うとオレは気が引けてしまいます。

はっきり言って読み手をかなり選ぶ内容かと思いますね。

オレ的には、もっとアメリカの現在の政治的な分断状態を暗喩するためにマッカーシーの赤狩り政権成立を物語世界のバックボーンにしているのかと思いきや、結局はユダヤ人とナチズムの対立軸と、反共、防共に絡めた表現統制に集約されてしまうと、単にユダヤ人がホロコーストの被害者だから、反論不可の存在として、物事のすべてを断罪できる立場と権利を有するかのごとく、後半のストーリーが展開していくところなど、ちょうど最近のこちらの地方ニュースで見たような、ノーラン監督の「オッペンハイマー」公開を受けて、広島の女子高生が鑑賞後の取材に応えて「もっと作品内に広島長崎の被爆の現状を盛り込んでほしかった」と話しているのを見た時に似た「こいつ、自分の素直な感想よりも、反核団体から模範解答として教えられたドグマにすでにこの若さで洗脳されているのではないか?」とさえ思わせられる、一種のカルトな人に遭遇した時に感じるような薄ら寒さみたいな感情を抱いてしまうのよね…。

そもそも日本人って、あまり被害者面を前面に出して相手を批判や非難をしたり、あまつさえ賠償を要求したりするのは、あまり得意じゃないものね?

最近はそうでもないにしても、まだまだアメリカほどに訴訟社会でもないしさ。

あくまで同調圧力と空気を読むことを何より気にして注力して暮らす社会のままですもの、日本は。

だから、この小説を原作としてもし映画化するならば、その際には国際政治に対する相当なバランス感覚が必要でしょうから、オレとしては過去に「ミュンヘン」を撮り切ったスピルバーグ監督の1択しかないかも? と思います。アレだってイスラエルに後からぶちぶち文句言われたようだけどさ。

でも、スピルバーグにノアールとか、ハードボイルドタッチな演出はできるのかしら? あ、「ジョーズ」の時の、主人公とロバート・ショウやドレイファスみたいな3つどもえになるキャラ構成にすれば雰囲気的には出来なくもないか…。

それにしてもオレ、個人的にはなぜ、世界でそんなにユダヤ人が嫌われるのか、未だによくわからないんだよね…。

人種的な特徴もよくわかんないしさ。

キリストを殺したから? 金貸しとか金持ちだから?

ただ一言言わせてもらえるなら、オレは民族的な過去の苦難には同情や共感、理解もしなくはないけれど、いつもソレばっかり前面に押し出して事あるごとにモノを言ってくるようなヤツラは、日本人としては決して好ましくは思えないよ。

別にナチを全面的に赦せとは言わないけれど、罪は憎めども人は憎まず。

長男を殺されたオレの死んだばあちゃんだって、リング上で馬場や猪木が白人とタッグを組むことをやがては受け入れたんだからさ。

ユダヤの人もさあ、現在進行系のパレスチナ問題もあるし、被害者の主張や行動は常に正当化されるなんて、人間的にもちょっと哀しすぎるし、いつまでもそこから先に進んでくれなきゃ、未来に対しての展望なんて、ちっとも見えないじゃないか? 

さすがに、そろそろ民族的な意識を過去から将来へと、より建設的な方向に変革をしてもよくないかしら? と、無責任な門外漢の立場ながらオレは思いますよ。

あと、最後にもう一つ蛇足させてもらうならば、作中エピローグでビートニクスについて言及するならば、もう少し詩的にグッと来るような描き方はなかったものでしょうか? 原文と翻訳、そこのところがどちらの修辞的なさじ加減によるものかはわかりませんけれど…。

さて、しばらく脳内でロスアンジェルスあたりの話が続いたので、次の本は国内に戻りますかね…。

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