見出し画像

悲報と思い出

かつて馴染みだったお店がなくなるとのお知らせに触れる。オレが最初に行った当時のお店は画材屋の世界堂の先の御苑通りに面した薄っぺらい三角な雑居ビルの傾斜角60度超えかと思われる急な階段を昇った2階にあった。一時期そのビルの4階の風呂無し賃貸物件に惹かれて、住めないものかとしばらく思案したからよく覚えている。もし、オレがあそこの最上階の事務所部屋に住んでいたら毎晩の帰途と寝起きに出かける際に命に関わるリスクを相当抱えていたかもしれないけれど、気分的には傷だらけの天使を気取れて、それはそれで楽しかったかもしんないけどさ。たぶん再婚はできなかっただろうな。カレー屋さんと一口に言ってもインドでも他の国でもない不思議なテイストのカレーライスを出すお店でした。パンもナンもなくライス一択。聞くところによると、北海道の大学のカレー部の部長さんだった若いオーナーが上京後の紆余曲折から趣味が昂じて開いたお店らしかった。通うには難儀するところにあるお店だけど窓からのロケーションと味とサービスのバランスを考えてもクオリティから見た商売っ気のなさが顕著だったけれど、それも部外者の余計な心配で、数年後、四谷側へ二百メートルほど移ったビルの2階に移転してお店が広くなり、スタッフも倍増していた。ここのカレーは辛さが選べるのですが、オーナーさんと以前お話しした時には僕、辛いのは苦手でと笑って自分はいつも3倍ですと言われてた。5倍からピッキーヌが一本入るのかな? オレは大概7倍。連れは大概マックスの10倍にテーブルのレッチリをさらに足していた。ここのベースのカレールーはシャバシャバの動物性成分抜きなので、ビーガンでもベジタリアンでもいけますが、オレは物足りないので、毎回茄子チキンか、トマトチキンに豆か発酵バターをトッピングしていました。風邪気味だったり胃の具合のよくない時にここのカレーを食べると快方に向かった記憶が何度かあります。まさに香辛料と漢方薬はほぼ同じを地で行く感じ。それと思い出されるのが、その拡大移転したおそらく今回閉店されるお店が今あるビルの一階にはМ舎という、それはそれはカルトな本屋さんがありましてね。そこがまたセットで思い出されて懐かしい。その本屋は、各種の演劇系のシナリオやらのレアな出版物を扱うことと同時に、左派セクト系の機関誌が手に入ることでも有名でした。そのせいか、その書店の向かいのビルの一室を公安内事が借り上げていて、常に店に入る客すべての顔は写真に撮られているという都市伝説めいた噂があったりなかったり。その伝によると、オレは状況劇場などアングラ系の関連書籍を冷やかしでしばしば立ち読みしていたから、オレの顔写真も公安警察にファイルされていることになりますね? 若松孝二監督が亡くなられたのもこの近辺でしたし、闇金ウシジマくんが実写化されたときのカウカウファイナンス事務所もこのあたりという設定でしたか。新宿通りに近くても、至って古くて閑静な地域なんですけどね? 住まいも御苑を借景できる、70年代後半頃に建てられた、いわゆるビンテージマンションばかりで、いずれ老後に住むならと密かに憧れていました。そのへんの新宿を舞台とする創作作品の実写化の際のロケーション事情は機会があれば、また別途で書いてみますね。閑話休題。さて、今回なくなるお店ですが、食べ終わって会計をすませると毎度、次回使えるラッシー無料券と懐かしのパインアメを1個もらえるんですよね。アレが何気に嬉しかった。とにかく、オレの知る唯一無二の身体を整えるカレーライス、これまでごちそうさまでした。本当にありがとうございました。そして、お疲れさまでした。お知らせ 閉店・廃業します。 | 新宿 curry草枕突然のお知らせで申し訳ありませんがcurry 草枕は今日3月31日をもって一般営業を終了、4月28日で閉店・廃業します。 私店主がコロナの後遺症で匂いが以前のようにとれなくなってし...

currykusa.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?