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留学2ヶ月を終えて。 

モチベーションと授業について

 私は、現在日本の国立大学院から、フィンランドのアアルト大学へ交換留学をしています。今年の8月末から渡航して、丸2ヶ月が過ぎました。フィンランドの冬でない時期は本当に暮らしやすくて(物価以外)、比較的早く生活に慣れることができました。しかし、慣れてきている一方でなんとなく日々を過ごしてしまっていると思うことも増えてきたので、2ヶ月くらいで区切りをつけて整理をして、これからの生活につなげていきたいと考えています。記事の内容は自分の感じたことをベースにしています。もしこれから留学に行く人などに役に立つことがあれば嬉しいなと思っています、、!


夏は色彩が鮮やかで綺麗

 自分なりには初めの2ヶ月は順調といっていいぐらい、濃い時間を過ごせた気がします。ですので、書きたいことを書いたら、一つの記事に収まらない気がするので、一旦今回は留学のモチベーションと授業について書いてみようかなと思います。(本当はアアルト大学についてのまとめを先に出すべきかもしれないけど、それは2ヶ月記とはまた別に書こうかな。)

1. 留学先を選ぶ理由って人それぞれ

 まずは自分の留学のモチベーションについてです。フィンランドに来てこの2ヶ月で、1番多く話す話題は「なんでフィンランドにしたの」っていう話だった気がします。その次が正規かどうか、何学期の交換留学生なのか、とかでしょうか。この話題を通して感じたこととしてはフィンランドに来る留学生はフィンランド、北欧がすごい好きで憧れを持ってくる人が多いということでした。特に日本人と話していて思うことなんですけど。
 ここの視点が自分とは大きく違うと感じています。自分の中ではアアルト大学がフィンランドになかったら、フィンランドを選ぶことはなかっただろうという気持ちだったので、最初少し悩んだりもしました。でも今はフィンランドという国に対して、変な偏見や理想があまりないから文化をスムーズに受け入れられるということで前向きに捉えています。人と話すのは好きなので、いろんな人から話を聞いて、素直に行動に移すことができている気がします。

2.自分の留学先を選んだ理由

 留学先を選んだ自分なりの理由に移りたいと思います。
 最初に思ったことはまずは行ったことない国に行きたいということでした。漠然とヨーロッパに絞られていたので、その中でもイギリス、オランダ、スイス、フランス以外がいいなと思っていました。せっかく海外に行くんだから、想像を超えてくれないとつまらない!っていうのが根底にあります。その点だとスペインはかなり行きたい気持ちはありました。自分の性格とは違うラテン系の雰囲気に触れてみたら何か変わるかもという期待感からです。でも大学の協定校になかったことで諦めてしまいました。他にもイタリアのヴェネチアにも行ってみたかったし、他にもとても憧れを持つ大学はいっぱいあったのでこの絞り方では絞りきれませんでした。
 次の理由が1番大きな理由で、『建築の勉強をしっかりしながら、アートやデザインの実習ができること』でした。建築の勉強をし始めて、模型や絵を描いていくうちに、彫刻や抽象画などの絵画に興味を持つようになったのがこの理由の一つのきっかけです。多くの留学に興味がある人が知っている通り、海外では多くの建築学科が工学部ではなく、芸術学部に属しています。行く前はこれが大きな違いだと感じていたので、どうせならその違いを最大限経験して自分の感性を磨きたいと思って考えてみました。意外にもこの理由でアアルト大学まで絞れてしまいました。建築の教育それ自体ではなかなか決められなかった自分にとっていい指標だったんだと思います。アートやデザインの分野で最高峰のレベルに位置していることや建築のカリキュラムとの兼ね合いのバランスの良さを見てここに行きたいと思うようになりました。

 ちなみにこの時選ばなかった大学(選べなかったといったほうがいいかも)に対する強い憧れはアアルト大学に決めた後でも、留学した最初の頃でも、なんなら今も消えないままです。将来設計を考える上で、ちょっと悩みになっています。今回の留学先は自分にとっては結構堅実な選択をしたと思っていて、理由づけもはっきりしてるし、確実に自分の目的は達成できるだろうと思えるのですが、そんなんどうでもいいから理由も目的もはっきりしてないのに行きたいみたいな気持ちには自分は本能的に敵わないのかもしれないです。振り返るとまだ、学部生の建築をよくわかっていない頃に海外の大学を見学に行くって相当憧れが強くないとしないよなって思います。(まあたまにコツコツ考えてきたことを捨てて、強いアイデアに向かってしまうことは建築学科の人ならあることなのかな、、?エスキスとかならきっと経験あるひともいるはず。)

 これに関しては今のところアアルト大学への留学はきっと1回目の留学だろうから、ここで感性を磨いたり、視野を広げたりしてみてから考えても遅くないかなと考えて思考を止めています。憧れだけで行っても、その後が良いかはわからないし、海外に行くならそろそろ働いたほうがいい気もしています。遠くのことで悩み過ぎてもしょうがないですね。

3.授業について

 そんな背景があり、授業はかなり楽しみにして始まった留学生活ですが、実際、授業は充実しつつ自分の時間を取れるようなスケジュール感でやれていてとてもやりやすいです。
 秋学期の履修は設計スタジオ、スタジオ付属のレクチャー、ハンドドローイングの三つだけでした。彫刻の授業もあったけど、抽選漏れで取れなかったのはすごい悔しかったです、、、アート系の授業の倍率がこんなに高いのは知らなかったです笑 春学期にはたくさん彫刻の授業取る予定なので、一個でも取れていたらいいなと思っています。
 ちなみにアアルト大学は一年が5期制になっていて、ⅠとⅡが秋学期、Ⅲ〜Ⅴが春学期になっています。大体それぞれ2ヶ月ずつぐらいなのですが、今書いている時期がちょうどⅠが終わって1週間ぐらいです。

4.設計スタジオ

 まず建築学科のメインの授業であるスタジオについてです。自分はBuilding design studioというコースを選びました。端的にいうとでかい美術館を作る課題で、比較的テーマは自分で決められる、個人ワークで進む設計課題です。このスタジオで最初に驚いたのは、2週目ぐらいで研究旅行としてストックホルムに連れて行かれたことでしょうか。日本の大学で親交のあったルツェルンの大学のインスタを見ていて、「旅行が授業に組み込まれてるんだ、いいな〜」なんて思っていましたが、割とヨーロッパだとどこでもあるのかもしれません。フィンランドですらまだ周れてないのにいきなり連れて行かれるのはすごいびっくりしました。でもスタジオの親睦を深めることも少し目的にあったのだろうと思うとすごい良かった気がします。この旅行については単体でまた書きます〜

ストックホルムまでのフェリー
フェリーの予約から支払いまで大学がやってくれました。

 実際の授業の進め方に関しては、毎週エスキスがあって、スタジオが進んでいくと徐々に隔週でオンラインのエスキスが入るようになってきました。エスキスで言われることで特徴的なこととしては「シンプルにしなさい」という話題な気がします。シンプル過ぎても言われてる人はいたけど笑 この視点は今回の対象が公共建築ということもあり、特に重視されています。この話題に限らずですが、エスキス中の対話の中で結構北欧らしさを感じています。シンプルにして欲しいというのは使う人のことを第一に考える文化があるからこそだし、動線や空間同士の関係性に対するこだわりを感じる指導を受けています。その分抽象的な話題は最初の頃ぐらいで止めて、そこからすぐにボリューム検討に入っていくのは少しギャップがありました。日本で言うと計画学的な話が多いのかも?

模型は1/500の敷地模型をみんなで作って自分の案をはめていく感じで作っています。大きい模型を持ってきている人はいなくて、モデリングでのパースなどで説明しています。
 建物の規模が12000㎡ぐらいなので、しょうがないんですけど、大きいスケールの模型を作らないとテンションが上がらない、、笑 でもこれからは勝手に作っていこうと思います。最初のコンセプトは誉めてもらってるのにそれが手に馴染んでない感じを解消したいです。

スタジオで作った模型

5.スタジオ付属のレクチャー

アアルト大学の設計スタジオにはそれぞれのスタジオに付属のレクチャーがある場合があります。正確に言うと、違う授業なのでそれぞれ履修登録する必要があるのは少し面倒でした。自分のスタジオではレクチャーも必修になっていました。内容は美術館の設計に関わる連続レクチャーを聞いて、全ての回が終わったら、5000文字のエッセイを書くという授業でした。この授業で特徴的なのは建築家だけが登壇するわけではなく、市の職員や美術館の館長、研究者などいろんな立場から話を聞けたことです。ミュージアムという概念の広さやいろんな分野で共同し社会で作っていくということを実感できました。実際にミュージアムを見にいく回もあったりして、非常にためになりました。普段見れないバックヤードを見れたり、貴重な資料(エリエル・サーリネンのドローイングとか)を見せてもらえたりしたことはうまく設計に活かしたいところです。スタジオと同じ日になかったら、もっと安心して内容を聞けたかもしれません。実際結構聞くどころじゃない回もあったりして、少し後悔してます。

6.ハンドドローイング

 ハンドドローイングは楽しみにしていた授業の一つです。この授業では1日の中で軽いテーマを与えられてウォーミングアップをする時間が最初にあって、残りの時間をテーマに沿ってじっくり描いていく構成でした。徐々に授業が進むにつれ、見て描くことから、自分でテーマや表現を考えるようになっていきました。
 割と褒めながら伸ばすタイプの授業で、技術の上手い下手の話はなくて良いところを見つけて教えてくれるいい先生だったと思います。使う画材も指定がなく、いろんな画材を使ってみました。なんとなく鉛筆が多かったけど、木炭、水彩、オイルパステルなど画材によって違う表現ができることに感動して楽しく授業を進めていました。履修する前は週に2日を全日この授業に充てるのかとは思っていたけど、他のことを忘れて没頭していたので結構あっという間でした。自分にとっては絵を描くのことはいい息抜きになるみたいです。いろんなことを考えてしまう癖があるので、、笑
 この授業では他の人の前で発表する機会もあって、絵を描くことで体力を全部使ってるから、全然英語浮かばなかったけど、和やかな雰囲気で楽しかったです。日本の画塾のようなプレッシャーを感じることは一切なかったです。
 授業の最後には大学のキャンパスで展覧会を行いました。これまで考えてきたことを活かす人もいたり、みんながそれぞれ伸び伸び表現していて良い展覧会だったと思います。
 自分は小さな日常の部分を切り取ることが絵を描く上で多かったので、framingをテーマに制作を行いました。窓とか鏡で切り取ったりという表現が多かったです。何点かの作品には、風景や自分の持っている物は体験したきたことの中から大事な出来事に輪郭を与えるきっかけになると思うという考えを込めて、現実のモチーフに記憶を重ねるような表現やモチーフに対する複雑な認識を表現にしてみました。これで終わりではなく、描き続けていたいなと思えるテーマだったので、自分で続けてみようかなと思います。

展覧会での作品
framing

7.これから

 2ヶ月を終えて、これまでした経験や自分の考えを整理したいという思いが今は1番強いので、これから今考えているトピックについて整理していきたいと思います。今のところはこんなトピックを考えています。他に知りたいことがあれば教えて欲しいです〜

・アアルト大学について(設備、イベント、サークルなど)
・フィンランド国内観光について (ヘルシンキ、ポルヴォー、フィスカルス、タンペレ、ラハティ、スオメンリンナ)
・アアルト建築について(キャンパス、自邸、スタジオ、ラハティの教会など)
・海外旅行について (ストックホルム、ベルギー、ドイツ、エストニア)

 これと同時にいろんな表現にチャレンジしたいという気持ちが前よりも増しました。今のところこんなことをやりたいなと思っています。
・3Dプリンターで遊ぶ
・彫刻をもう自分でやってしまう
・CGアート
・色彩構成
・美術の勉強
・水彩画、木炭画
これに加えてコンペもやるんじゃないかと思います。やらないと落ち着かない時もあるので。寝るのが勿体無いくらい没頭できる表現や取り組み方が見つかればいいなと思っています。

長い文になりましたが、読んでいただいてありがとうございます。


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