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「ハッ」と気づきをくれる本【マカン・マラン シリーズ】

ドラァグクイーンのシャールさんが不定期で営む夜食カフェでの物語。
常連さんもいれば初めましてのお客さんも訪れるが、悩みを抱えているひとたちが自然と集まる。
メニュー表なんてない、シャールさんが作る気まぐれ料理を食べながら、じんわりと自分の生き方に向き合い、心を癒していく。
悩みの渦に飲み込まれている人たちに「こうも考えられない?」と優しく声を掛けるシャールさん。
本人に気づきを促すような言葉に心がじーんとあたたかくなる。
その言葉ひとつひとつが登場人物を通して自分に言われているような気がする、背中を押してもらえる本だった。
今なにかしら自分の人生に悩んでいる人に、ぜひ読んで欲しい本。

マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ

頑張っても何もならない、自分は空っぽなんだと思ってる女性に「空っぽなら、埋めていけばいいんじゃないかしら」と優しく諭してくれるシャールさんの言葉が良いなぁと思った。
私も同じように自分には何もないような、悩みを抱いたことがある。
今も自分には何もないような気もする。
それでも、シャールさんが言うように、ないなら埋めていけば良いだけかぁという気持ちになれたのは一歩先進。
苦しかったり辛かったりするのは自分の心と体で考えて前を進もうとしている、悩むことが大切な時期もある、この言葉も良いなぁと思った。
今自分が欲しい、誰かに言って欲しかった言葉がたくさん詰め込まれている本だった。

女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび

職場の女性ボスの毒に同調しないといけない環境に悩む派遣社員の女性の話が疲れるよねぇぇぇ!!しんどいよねぇぇぇ!と激しく共感してしまった。
何するのにも一緒。ランチも一緒。ランチ鬱。
新卒で入社した会社が「ランチはみんなで」という雰囲気だったので、分かるわぁ〜と思いながら読んでしまった。
ランチぐらい自由に過ごさせてくれ。
SNSで注目されるのは毒を含んだ発言。
リアルでもネットでも変わらないよねという毒の書き方がとにかく上手い。
毒を吐く方も満たされてなくて、ひとりになるのが怖くて、誰かと一緒にいたいから、自分を強く見せる、注目を浴びる発言をしているのだと私は思う。
シャールさんの自分をつまらない人間だと否定する事は、支えてくれてくれる人に失礼だと言う言葉を忘れない。
意味もなくSNSを見ちゃうことにも共感。
以前はSNSで自分の置かれた環境に憂いている人たちの内容を見ることが多かったが、今は自分の人生をしっかり生きている人たちの言葉を積極的に見るようになった。
なんとなくその場しのぎの「自分だけじゃない」という安心感が欲しかったのだと思う。
私の中の大きな変化だなぁと本を読んで改めて思った。

きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン

今回もシャールさんの言葉が沁みる。
本心を隠すのは悪いことではない、嘘もある、隠し場所を自分で分かってれば良い。
先のことを気にかけるより今できる限り上機嫌に過ごす。
正直に生きなくても、分からない将来の不安に振り回されなくても良い。
不安がこみ上げてくるときは「今」を見れていないことが多いので、この言葉は胸に刻もうと思った。
私は不幸だと思いこむ女性が辛辣なクチコミ批判で心を満たす話は怖かった。
有名人の揚げ足取るためにSNSの発言のスクショを撮ったり、マウントリプしたり、誰かに自分の存在に気づいて欲しいだけなのに、その気持ちが暴走してる描写がリアルで読んでてゾクゾクしてしまった。
その情熱を他に活かせたら幸せなのに、それができない。
みんなからの「いいね」が変な毒になってしまっている。
意見を言うことと誹謗中傷の境目は何かと聞かれると難しいが、本人の目の前で同じことを言えるか、逆に自分が言われて傷つかないか、相手をコントロールしようと思ってないかだと思う。
自分も一歩間違えたらこうなる可能性があると思うと怖い。
絶対こうはならんぞと心から思った。

さよならの夜食カフェ マカン・マラン

シリーズ完結作。
読んだら物語が終わっちゃう!と思ってなかなか読めなかった。
自分を憐れむのは癖になるし、楽なこと、不安は誰かに解決してもらうことではなく、自分自身で向き合うしかない、今回もシャールさんの言葉が沁みる。
私も過去に自分は不幸だ、運が悪いと思い込んでた節があるので、今は気をつけている。
自分を憐れんでも何も生まれないよ。
SNSでの批判に真正面から相手して、揚げ足を取られてしまい、炎上しちゃった人の話が面白かった。
相手の重箱の隅をつつくような発言に言い返したい気もするが、言い返した所で変に周りが批判意見に同調しちゃって手に負えなくなってることを最近よく見かける。
全く関係ないのに当事者たち以外が変な正義感に振り回されて煽る現代病を物語に上手く埋め込む描写が凄い。
私も知らないうちに毒されてるんだろうね。
SNSに振り回されてると思ったらマカン・マランを思い出そう。

良いタイミングで良い本に出会えた。
私も辛い時はシャールさんの言葉を思い出しながら頑張る。

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