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グレープフルーツという雑誌

昔の雑誌ばかり読んでいる。
別に最近の雑誌が嫌いなわけではなく、故きを温めて新しきを知る、ということが好きなのである。嘘である。

タイトルフォントが時代を感じるね。

そして、最近は昔の少女コミック雑誌の『グレープフルーツ』なるものを購入した。裏表紙の竹宮惠子の絵に惹かれたのだ。ああ、美しい絵を描くなぁ……なんて素敵な80年代ってね☆
と思ったら、『カノン』って漫画のカヴァーイラストだったのね。なーんだ。でも、私、この絵に惹かれてこの雑誌を買ったけど、『カノン』は読まないことにしたんだ。だって、私の頭の中で描いたこの二人の物語の方が、きっと素敵に決まってるもん。

どっちの立場も憧れるね。美少女にもなりたいし、美少年にもなりたい。

いや、別に私がキマっているわけではなく、実際にそういうことはよくある。本編を読まずに妄想している方が楽しいこともあるものだ。竹宮先生、すみません。

雑誌の中の原田智子先生の『グリフォン』という読切漫画を読む。
私は『グリフォン』が好きである。特に、ギュスターヴ・モローの『グリフォン』という絵画は大変に美しいのだ。いや、ギュスターヴ・モローの絵画は全てが美しい。

この幻想性、この神秘性、タマラン……。
構図は完全に同じである……まぁオマージュってやつですよ。名画ですしね……。

どうでもいいが、私はモロー美術館が、死ぬまでに行きたい(俗的な言葉で大嫌いだけど)100の場所に入っているのだ。
モローの幻想絵画で壁が埋め尽くされて、美しい螺旋階段を有している場所……。ああ、憧れるなぁ。

この美術館がいいなぁと思って、それをベースに小説も書いたので、激ヒマな方は読んでちょ。

そして、話が脱線してしまったが、『グリフォン』である。

この漫画はコピーに「デカダンの館を舞台に官能の世界が広がるー」的なことが書いてあったので、おお、とんでもない大乱交の限りが尽くされるのだな、酒池肉林の19世紀のソドムの市じゃー、と思ったらそんなことは特になく、やけに控えめあっさりめ。まぁ、登場するキャラクターの一人がやけに『ベルセルク』のグリフィス感があり、まさか三浦先生の元ネタ!?とか思ったり……グリフォンだし……。

美少年である。グリフィスにそっくり。ポロリはないけど、全裸はあるヨ!
鞭打たれるところもグリフィス感があるね。後にこれがプレイだと判明するが……。

三浦建太郎先生も少女漫画の影響は多大に受けていたし、やっぱりこういう女性マンガ感が『ベルセルク』からも濃厚に漂うよなぁ。あの漫画、繊細な漫画なんだよな。

然し、こういう雑誌で面白いのはカルチャー記事である。
この雑誌もたっぷりいろんなサブカルチャーを紹介していて、読み応え抜群。しかもページカラーはピンクでちょー乙女なんだよね。
やっぱりこういう色紙は大事ですよ。川上未映子の責任編集の早稲田文学増刊号は色紙でカラフルな雑誌で、書店でうっとり眺めたもんですよ。
パステルカラーで優しいのよ。
そういえば、私の大好きなテキサス電ノコ大虐殺映画『悪魔のいけにえ2』の脚本を色紙をたくさん合わせたカラフルな脚本だったそうな。だからあの映画はあんなにファンシーなんだね。


で、今号にもたくさんの記事が満載で、シネマ、アニメ、演劇、お人形、画家など、オタクの心を掴む内容で構成されている。

素敵なコピーで映画紹介にも彩りを。キネマもオシャレじゃなきゃダメですよ。首チョンパとかダメ!!

やっぱりね、雑誌の、それも映画雑誌ではない映画紹介記事、これがいいですね。映画雑誌は上から目線だし、映画オタクは聞いてもいない話を延々と語るしね。カメラワークとかフィルモグラフィーとかね、どうでもええんじゃい!って感じですよ、普通の人からしたら。面白いかどうかが大事なんでね。
説明なんかこんなもんで十分ですよ。大体この『ドリームチャイルド』っていう映画なんかね、監督が誰か、主演が誰か、誰が出ているのかすら書いてませんからね。そんなもんでいいんですよ。
逆にアーサー・ラッカムとか普通の人は識らない、こういうサブカル女性の琴線を揺さぶる名前を出してくる、いいですね。

さて、何よりも良かったのは読者の投稿ページである。
読者の投稿コーナーというのは、その雑誌の性質が如実に語られるものだ……。
その中のお便りの一つに、眠る時に月を見ているというものが。「秋はますます月が美しくなるので楽しみ。だけど最近乱視がひどくて、コンタクトを外すと月が3つに見えますの。」なんて言葉が。
なんて綺麗なお便りなんだ……。詩的だし、可愛らしいし、いやー、やっぱりお便りのコーナーはいいなぁ。
川端康成も女性の書く作文が大好きだったが、やっぱりね、男の文章はつまらないのよね、基本的に。男はさ、文章でもマウンティングしてくるのよね。

で、天野喜孝のピンナップの『サロメ』が……。
天野喜孝もアールヴィヴァンのせいであれだけど、耽美的かつ退廃的な美しさは紛れもない本物ですよ。
天野喜孝の若い頃とか、まじでキリストみたいな感じでキレイだしねー。

まぁ、こんな感じで昔の雑誌を読むのは楽しい。
思わぬ拾い物もあるし、何より大体は安いしねー。

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