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056. 自己と他者について(Vol.1)

大学の講義のタイトルにも「他者と生きる技法」というものがあったことを思い出す。今になってようやく「他者」という概念の重要性が分かった気がする。特に、フランス思想・哲学では「他者」という概念をより重視すると、哲学者の千葉雅也さんがおっしゃっていた。

ここでの自己、他者は一般の言葉よりも抽象度の高い概念であり、単純に1個人を指す用語ではない。言葉でさえも、他者としての代表例に挙がる。

人間(生物)とはそもそも自己と非自己(=他者)を区別する自己複製システムである。ルーマンのオートポイエーシス論が有名である。自己と他者が循環しているという考えが、おそらく最近の人文学の主流だと思う。このようなことはあまりに自明すぎて疑うことなく通りすぎてしまう。それを疑うのが哲学であり、より高度な視点(メタな視点)が新しい発見を促す。

「他者論」を唱えたのは、エマニュエル・レヴィナスである。西洋の哲学に脈々と流れる「私」中心の思想を批判した。
(『世界のエリートが学んでいる教養としての哲学』小川仁志, p.78)

カール・シュミットの友敵理論も公の存在としての「友」と「敵」を政治におけるアクターとして捉え、それ以外は政治の本質ではないと考えるらしい。

人間は細菌と共生している。相互依存が作り出す複雑性が自然には溢れている。

人文科学では、「他者を大事にしよう」とずっと言い続けてきた。しかしながら、現代の社会情勢は他者を排除しようとする傾向が強い。特に、アメリカはその傾向にある。みんな他者にうんざりしているのかもしれない。

他者を大切にするという道徳のような、人として当たり前なことを当たり前に言える社会になればいいと思う。

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