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日曜劇場『下剋上球児』/日沖兄弟の涙と南雲の決心 第4話

球児たちが野球の楽しさを知れば知るほど、彼らの可愛さが増すほど、南雲の罪深さが浮き彫りに。心をえぐられる展開になっている。

(以下、これまでのドラマの内容を含みます)


南雲の罪と子どもたちの素直さ

南雲先生、なんでなのーーーー!

もうそればっかり、頭の中をぐるぐるぐるぐる。

演じているのがハイスペックな鈴木亮平さんだから、余計に。「なんでなのーーーー!!」と、2話以降は視聴し終えるたびに雄叫びをあげて頭を抱えている。

南雲から譲られたグローブをお守りにして、マウンドに立つ根室くん、本当は兄貴大好き、その夢をつなごうとする日沖弟、腐らずにザン高のエースとして自覚を持ち始めた犬塚くん。みんな、なんていい子たちなのか! 昭和の「スクール☆ウォーズ」なら、全員すでに本物ヤ〇キーになっているはずなのに。

涙を誘う日沖兄弟の絆

特に第4話は、最後の県大会を迎えた3年生の日沖誠と、その弟・壮磨の兄弟愛に号泣。兄を演じるのは菅生新樹くん。言わずと知れた菅田将暉くんの弟で、正直これまで「ああ、菅田くんの弟か。やっぱり顔のパーツが似ているなあ」なんていう感想を持っていたのだが、このドラマで見る目が変わった。彼がまっすぐに、素直に演じている日沖は、ただただ野球が好きで、ひとり黙々と練習を積み重ねてきた人物。菅生くんに限らず、野球部みんな、演技云々という感覚ではなく本物の気持ちが入っているのが伝わってくる。

第3話、ケンカを起こした弟の元へ走った日沖は、絡んでいた相手にけがを負わせてしまう。自分がやったことにして兄をかばう弟。罪の意識に苛まれた兄は、南雲に告白する。同じく罪の意識に苛まれながら教員を続けていた南雲は、どんな気持ちで日沖に接したのか。苦悶の表情を浮かべる南雲に、またも「先生、なんで、なんでなのーーーー!」と雄叫びが発動。鈴木亮平さんの弱々しい横顔に、ドキッとする。

たとえ一人でも野球を楽しむ兄を、鬱陶しいとさえ思っていた弟。自分のせいで最後の夏を棒に振った兄の夢を受け継ぐために、丸坊主になって野球部に入部するなんて、泣く。もっとも、試合に出なかった兄には後悔なし。皆と同じグラウンドで楽しんだから。初めて県大会で9回まで進んだんだから。その喜びの方が大きかったのだ。

青春ドラマではなく人間ドラマ

生徒たちが可愛くて仕方なかった前半から、一気に暗雲立ち込めた後半。南雲はついに校長に真実を告白する。新井×塚原コンビは、現代社会の問題を巧みにドラマに盛り込んでくる。さわやかな高校球児たちのドラマだと思って視聴していた人たちは、すでに離脱しただろうか。「原作があるのに、この設定は許せない」とお怒りの人もいるらしい(ちなみに、「原案」です)。

確かに、南雲は「挽回させるには、無理があるのでは?」と思わせる人物設定である。罪を犯したら、当然法で裁かれて償わなければならない。ただ、罪を犯した人間は、全員二度と再生できないのか。世の中の異常なまでの吊し上げに、恐怖を感じるときがある。罪の大きさにもよるが、自分が被害者もしくはその身内なら、二度と再生しないでほしいと願うことはあり得る。けれど関係のない人間が、ただ自分の正義を振りかざし、外から石を投げつけるのはどうなんだろう。自分も含めて、群衆とは恐ろしいものだと思う。

南雲の再生はどう描かれる?

このドラマの最終回は、第1話のオープニングにつながっているはずである。南雲は教員ではないにしろ、ザン高野球部に関わって、部員たちを甲子園に導くことが確定している。だとすれば、弱小野球部の下剋上を描きながら、罪を犯した南雲がどのように再生するのか、家族や周囲は彼をどう赦すのかが、中盤から描かれていくはず。犬塚のおじいちゃん(小日向さん)の「私も変わるから、南雲先生も変わって!」という第4話で発した言葉が、後になって重みを増してくるかもしれない。

あんなに生徒から慕われ、強靭な精神を持っていそうな南雲も人間。人は弱い生き物であることを思い知らされる。彼がどのように生きることが「再生」「下剋上」と呼べるのか。苦しそうな南雲と壊れそうな家族、不安になる生徒たちの行く末が気になって仕方ない。美しい三重の景色が、混とんとした物語をさらに際立たせる。人は、どこまで人を赦せるのだろう。

ああ、彼らが無事に甲子園に行けますように(行けるんだけど)。

それにしても……。しつこいけど、あんなに賢い南雲が単位落とす? そこには、避けられないアクシデントがあったのではないかと勘ぐってしまう。彼には、他にも知られていない過去があるのでは? まだ土曜日だけどそわそわしている。そして大倉さん、要らんことせんでくれよと、今から牽制球を投げたい気分。

長くなってしまった……。


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