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忙しさと仕事と人間関係と

この会社に入社して2か月。
思い切って転職してよかったと、心から思っていた。

なぜなら私の上司は温厚で、人当たりもよかったから。

わからないことを聞けば、丁寧に教えてくれる。
悩みを相談すれば、親身になって対応してくれる。

私にとって、理想の上司だった。


だが……。
その理想は、もろくも崩れ去った。

ある日を境に、突然仕事が忙しくなったのだ。
それと同時に、上司の態度が急に変わった。

人当たりの良さはどこかに消えてしまった。
親身な対応もなくなった。

代わりに冷たく、厳しい人になっていった。

最初は「忙しいから仕方がない」と、思っていた。
だから仕事に専念しようと、そう思った。

けど、上司の冷たい態度が、私たちにとって大きなプレッシャーとなった。

仕事の報告に行くと、無言でこちらを睨みつける。
質問をすると大きなため息をつかれる。
次の仕事を求めると舌打ちをされる。

そんな態度とられ続けた結果、私たちは必要以上に気を遣うようになった。
そして、仕事の結果にも、完璧を求めるようになっていった。

数週間後。

私たちの中で、ノイローゼになるものが出始めた。
私もその一人だった。

夜、眠ることができない。
何か失敗したらと思うと、怖くて安心することができない。

頭の中は常に仕事でいっぱい。
上司の機嫌を取ろうと必死になり、自己評価も低くなっていた。

ある日、私は限界を迎えた。

会社に行くのが怖くて仕方がなくなった。
上司の顔を見ると、冷や汗が流れるようになった。
上司の声を聴くと、恐怖のあまりめまいがするようになった。

その結果……他の部署に移された……。

仕方がないことだと思った。
自分の弱さが原因だとも思った。

けど、やりたい仕事ができないのは、苦痛でしかなかった。

(こんな日々が続くなら、仕事をやめよう)

そう思ったとき、転機が訪れた。
上司がハラスメントで訴えられたのだ。

特に何かをされたわけではない。
ただ不機嫌をまき散らし、周りに冷たく当たっていただけの上司。
それでも、ハラスメントだと世間は認定した。

上司は会社を去った。
その結果、私は希望の部署に戻ることができた。

なんだか釈然としないが、希望がかなって私は嬉しかった。

<了>

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