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夜、目が覚めて

夜の静けさが深みを増し、暗闇が部屋を覆い尽くす中、私は目を覚ました。

時計の針がゆっくりと進む音が耳をつんざく。
部屋の空気が重く、不安が私を包み込む。
何か悪い夢でも見ていたのか、ただ眠気が覚めないだけか。
心臓の鼓動が耳に響き、私は静かに身を乗り出した。

部屋を出ようとする私の耳に、階段を降りる音が微かに聞こえた。
その音は不意に私の心臓をドキッとさせ、息を飲むようにして立ち止まった。
暗闇の中で、その音がどこから来ているのかを探る。

(……夜中だと言うのに……)

少しの苛立ちを感じながら、部屋を出てリビングへと向かう。
階段を降りる音が響き渡り、目の前に暗闇が広がる。

誰もいない真っ暗なリビングに、家具が静かに佇む。
深夜の静寂が部屋を支配し、私の不安が空気を重くする。

音の出どころがわからず、不思議に思いながらトイレに行くと、今度は階段を登る音が聞こえた。
子供が駆け上がる軽快な足音。
その音が階段の下にあるトイレに響き渡り、私の心をざわめかせる。

子供っぽさを感じさせる音に少し微笑みながら、トイレを出て寝室へと向かう。
暗闇の中で足音を静かに響かせながら、心はまだ階段を登る音に引き寄せられていた。

階段を登ったところにある子供部屋を見ると、部屋は暗くて静かだった。
当たり前だ。
子供たちはみな、旅立っていったのだから。

その部屋にはかつて、遊び道具や本が所狭しと並び、笑い声や歌声が響いていた。
しかし今、その部屋は静寂に包まれ、あの日のまま時を止めている。

寝室へ戻ると、静かに眠る妻の隣に潜り込む。

バタン!

寝室の外から、ドアの閉まる音が聞こえる。

二人きりの家は、少し広く、少し寂しい。
だが、それももう少しの辛抱だ。
お盆になれば、あの子たちは帰って来れるのだから。

その時を心待ちにしながら、私は静かに眠りについた。

〈了〉

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