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北海道、そして登山 part2

「明日、午前中ずっと雨っぽいな、、、。登山できひんかったら倶知安(くっちゃん)のバッティングセンターでも行くか。」

「あそこのバッティングセンター、ストライク入らないよ。」と返すしんちゃんに、「おぉ、、、」と私。

「午後からは?」と聞くしんちゃん。

「往復10時間くらいかかるらしいから、朝イチで登れへんかったらアウトやな。」
それに、どんより曇り空で登っても、景色が全く見えず楽しくないだろうと。

登山を嫌がる妹(小6)のふうちゃんもなぜか強引に連れていくことになり、前日の晩に図書室で3人集まり話し合っていた。

土曜日は雷鳴もとどろき、一日中強い雨が降ったり止んだり繰り返していた。
野球の練習試合も3回でコールドになったらしい。

夜には明日の天気予報が修正されていないかと、こまめにチェックしていたが変化はなし。
日曜日の降水確率は午前中が90%、午後からは40%だった。

「とりあえず明日の朝、奇跡的に晴れてたら出発できるよう早起きしておくように。」と言い残し、実りのない話し合いを終えた。

そして翌朝、5時に起床した私。
ライダーハウスの窓からは雨の音が聞こえてこない。

もしやと思い外を見ると、曇り空ではあるが雨は降っていない。
雨雲レーダーを見ると数十キロ離れた小樽に強い雨雲はあるものの、羊蹄山の周辺にはかかっていない。
そして、時間とともにすべての雨雲が北の海上へと抜けていくようであった。

「こ!これは!」

空を見上げると、ほんの少しだが青空さえのぞいているではないか。

登山を決行することとし、急いで登山コースを調べる。
6時過ぎ、まだ寝ているという二人をかかさんに起こしてきてもらった。

そして朝7時半、登山口に到着して登頂開始となった。

3~4合目頃からは険しいところも出始めた。

トイレを使わせてもらうべく9合目の山小屋へ向かう際は、雪解け水で川になった道を遡上しなければいけなかった。

いやはやしかし、2,000メーター近くからの景色は素晴らしかった。

時間によって雲海が見れたり、雲が晴れて町を見下ろせたりしたのは運がよかった。
洞爺湖もはっきりと見ることができた。

無事に外輪山にたどりつき、かかさんの作ってくれたおにぎりを頬ばる。
この兄妹と初めて会った時、2人は小学4年と1年で、私は迷える25歳の旅人だった。

それがいまや2人は中3と小6である
私は職人(?)として自分のブランドを広めようとする30歳未婚男子。

社会人になって年齢を重ねるにつれ、加速度的に1年が過ぎ去るのが早く感じる。
年齢を重ねることも単に、周期的なものが巡っていくだけのようにもなってくる。

けれど、彼らの学年が上がり、毎年大人へと成長してゆく姿を見ていると、この1年、また次の1年を逃さずにいたいと思う。

つまり、今年のカルビー夏ポテトは、今年の夏にしか買えないということだ。
「また来年。」と思っても、今年の夏ポテトは今年にしか買えない。そういうことだ。
同じでも少しずつ違っていくのだ。
彼らは来年にはそれぞれ高校生と中学生になる。

そんなこんなで、お昼を食べたら下山開始。
登ってくるときはその景色に感動したが、下りるときはその景色に若干の苦痛を感じた。

下りれども下りれども、絶景なのだ。
いつまでたっても、絶景のままで駐車場が近づかない。

無事に登山を終えた翌日、私は小樽から京都行のフェリーに乗る予定をしていた。
朝、通学バスに乗る前にしんちゃんが声をかけてくれた。
「次は10月に来れたら、札幌のバッティングセンターでも行こか。」と言い残してきた。

とてもささやかで、でも僕には切実な約束ができた。

この約束を果たすために京都でまた奮起せねばなるまい。
さらば北海道。そしてありがとう。


みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。