ウクライナ戦争2年

ロシアがウクライナに侵攻して2年少しが経過した。メモとして現状を記す。

2014年の東部およびクリミアへの侵攻の成功体験から、ロシア(プーチン)は、当初、短期の決着を目論んでいた。開戦当初は欧米ですらウクライナのゼレンスキー大統領に亡命を勧めたほどに、ウクライナが抵抗する未来は予測しがたかった。
ロシアの戦争目標はウクライナの①非ナチ化(反ロシアの排除)と②中立化(傀儡政権の樹立)にあったと言われる。短期決戦なので、雑な戦争目標でたりるという考えもあったのだろう。ユダヤ系の血が入っているゼレンスキー大統領をナチズムというのは甚だおかしいが、非ロシアならばすべてナチと呼ぶのがロシアの精神なのだろう。

開戦当初の諸戦闘の結果は皆様ご存じの通りである。国際社会の予想に反した結果になった。ウクライナは2014年から軍政改革を実行しており、開戦一ヶ月をほぼ自力で乗り越えて、首都キーウ等の防衛に成功した。

首都キーウ等の防衛に呼応して欧米の論調も変化し、欧米からウクライナに援助がなされた。2022年はウクライナが使い慣れたロシア製武器を主体に、2023年にはNATO規格の武器も合わせて供与された。これは、一年あれば違う規格の武器も使えるようになるだろうと言う考えに基づく。

ウクライナ第二の都市ハルキウ周辺にあった東部戦線は、2022年9月頃に大きくロシア側に揺り戻され、2022年終わり頃にはウクライナ東部と南部に戦線がおおまかに固定された。

2023年、ウクライナは反転攻勢に及んだ。しかし、ソ連時代からの大量の兵器備蓄を持つロシアは、旧型の武装もかき集めて戦線に投入した。囚人兵を後ろから射撃してバンザイ突撃を行わせるような戦法も駆使した。2022年冬から構築した塹壕も活躍した。この塹壕だが、数列(つまり一列ではなく、それが突破されてもあと2つ3つ塹壕線があるという状況)、幅数百キロに及ぶものとのことだ。風呂や暖房、寝室もあるらしい。最早、地下基地。
当然、塹壕の前には多数の地雷と障害物がある。
結果としてウクライナの反転攻勢は失敗し、戦線は膠着して2024年に至る。

この間、西欧諸国等からロシアへの経済制裁がおこなれたが、中国インドをはじめとした非西欧諸国(いわゆるグローバルサウス)は、変わらずロシアから原油を買い続けた。また、ロシア政府は、大量の軍需物品を発注し、経済そのものを戦争経済にシフトした。その結果として2023年のロシアはプラス成長を記録した。

この戦いでは、ロシアもウクライナも制空権を維持しておらず、榴弾砲をどれだけ撃てるかが鍵になる。そして、榴弾砲の製造能力は、ウクライナとは比較できないほどにロシアが上だ。

2024年2月時点で、大勢の見方は「ウクライナは自国の消滅という最大の敗北を避けたものの、領土の全回復は難しい。ロシアもいつ核を使うかわからない怖さがあり、欧米の軍需供与も出し渋りが見られる」と言うものだろう。実は「戦時中」の国である韓国は、軍事供与を頑張っておられる。
韓国も日本と共にロシア中国北朝鮮への対応のためには軍需物品を自国に残さないといけないので、全部あげると言うわけにもいかない。どの国もそうであるが。
日本は憲法上の制約から軍事援助はできない(日本→アメリカ→ウクライナといった玉突き援助はするらしい)が、表向き、経済援助や復興援助で理解を得られているようである。これもウクライナ大使の言っていることであり、ウクライナのホンマの意見かどうかわからないが。

総括すると、ウクライナ戦争は泥沼化している。そして戦争は先が見えないので今後は不明。

名誉「全裸中年男性」こと小泉悠先生によると、戦争は半年で情勢が一変するという。特に今年2024年は選挙イヤーなので、アメリカの選挙結果で情勢は変わることが予測される。

日本もまたロシアの隣国であり、シベリア抑留で多数の日本人が惨殺された過去がある。私の祖父も抑留をギリ避けたそうだ。
中国が尖閣諸島を狙う熱量と同等かどうかは不明であるが、ロシアが北海道に進出する可能性は否定できない。(これを否定するお花畑野郎は調査が足りない)

日本に関連して、この戦争から考えるべきことは以下の諸点であろう。

・ロシアの戦争目標はお粗末であり、他国を説得できるものではない。しかしそれでも第二次大戦レベルの戦争を始めることができてしまう。
元ソ連構成国であり、非NATOであるウクライナの場合、他国から軍事援助が来ることが決まるまでには一月が必要であった。その間は自力で防衛する必要があったし、ウクライナはそれをやり遂げた。ゼレンスキーも逃げなかった。チ〇コでピアノを叩ける人間は凄いのである。

・仮にロシアがウクライナ全土を占領し、「非ナチ化」と「非武装化」を達成するとどうなるか。戦争の正当化が容易になるのである。
結果として、どの国でもくすぶっている国際問題が容易に戦争に発展する危険を生む。
これは世界の安定にとって大きなマイナスである。ミサイルが飛んでこないと安心できるから船も飛行機も飛べるのであり、容易く戦争に向かう世界で安心して貿易などできない(少なくとも保険料が上がるだろうから輸入品の価格は上がる。日本にとってもやばい)。
この戦争でロシアがドヤ顔で勝ち誇る結果は避けなければならない。

・ハイブリッド戦争と言っても、結局は陸軍が現地を征服しないと、陸続きの国の戦争では勝てない。戦争は無人の戦争ロボットが撃ち合って終わるものではないし、それで当事国が国の存亡を納得できるものではない。

・日本とロシア中国北朝鮮には海があり、ミサイルが飛んではくる可能性はあるが、それ以上に揚陸艦を幾つ潰せるかは本土防衛の鍵になる。

・ロシアの経済は戦争経済にシフトした。戦争が終われば軍需は冷える。そしてその時のロシアこそ動乱の可能性が高い。中央アジアの某国では表向きの政権支持率が9割であったが、それでも国民と軍部のデモで政権は斃れた。ロシアがこのまま突き進む未来は明るいものではない。ただ、ロシア文学を読めば明らかな通り、ロシア人には「破局を希求する」暗い面がある。文学としては面白いが、現実で破局に向かわれたらたまったものではない。

・日本には日米軍事同盟があるものの、それは「必ずアメリカがスーパーマンの様に日本を助けてくれる」ことを意味しない。トランプならばすぐに日本に妥協を迫るだろう。日本の防衛のために日本が何もしなくていい時代は残念ながら終わりつつある。テーマパークは過去の栄光であった。
日本は1945年以降、民需に振り切り、財閥を解体し、朝鮮戦争の米国軍需で立て直し、焼け野原を再開発して奇跡の復興を遂げた。当時は現在と違ってモノづくりが単調だったこともあるだろう。
話は逸れたが、軍需に金を使わないで済むならそれに越したことはない。ただ、情勢がそれを許すかどうかは「戦争前に」見極める必要がある。

・平和憲法を叫んでも、他国が侵略しない保障は全くない。特に経済が冷えれば、政権は軍事に目を向けて支持率を上げようとする。中国の経済が隠しきれない限界を迎えていることは、中国への警戒心を上げる要因になる。

全裸中年男性の諸動画や、各種シンクタンクの報告を読み漁った私が考えたことは以上である。全裸中年男性寄りの意見であることは疑いない。
なお、私は日本語が読め、ある程度は英語が読める。
しかし、ロシア内の論調はわからない。この辺りはゲンロンが開戦前にロシア特集をしていたので、それでフォローする予定である。

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