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「特別展」と「常設展」/「常設展示室」読了しました

先日、とある美術館の特別展を見に行った。前々から話題だと知っていたため、開館10分前を目処に美術館へ向かった。

予定よりやや早く到着した。にも関わらず、美術館の外には長蛇の列が。当日券を求めるお客さんだった。その横には前もってチケットを購入し、指定された時間まで待機する列があった。

私は幸い招待券を持っていたおかげで、当日券を求めることも、複雑な予約システムを使うこともなかった。しかし、もし招待券がなく、当日券を待つ選択肢しかないとしたら…私はこの特別展を諦めただろう。待つことが苦手なのに、最近は体力も無くなってきたから、展示を観る前に疲れて帰りたくなるかもしれない。

やっと入れた、と思ったと当時に、「あ、これは流しで観るパターンだな」と思った。
会場には溢れんばかりの人、人、人。入り口付近や目玉展示の周りは特に人口密度が高い。写真撮影可能なスペースが多く、多くの人がスマホを構えている。
人混みが苦手な私は、この空間に長時間いることに耐えられない。結局人混みをかいくぐり、サラッと全体を観ただけで会場を後にした。

その後に併設の常設展へ。特別展目的で訪れても、基本的には常設展も観るのが私の習慣なのだが、あまりにも常設展にいる人が少なすぎて驚いた。国から指定された文化財から著名な作家の作品まで、その美術館の選りすぐりのコレクションにじっくり浸れるのに。常設展目当ての人や特別展の後に寄る人は少ないのかもしれない。

特別展情報の公開で気持ちが高まったり、行きたいと思う人はもちろん多いだろう。最近は著名人の音声ガイドやアニメ等とのコラボグッズを展開しているからなおさらだ。そして、私もその一人。

ただ、特別展と同じくらい、常設展へ足を運ぶことも楽しみにしている。いつ訪れても変わらず佇んでいる絵画やモニュメント、展示替えで初めましての作品。極端だけど、「ふるさとに帰る」みたいな感覚だ。いつも迎えてくれる存在がいる。新しい顔やお久しぶりの仲間とも出会えたりする。長い付き合いだからこそ知ることもある。
常設展はいつでも私たちを迎えてくれる。実際、大学生の頃の私は落ち込んだ時や気分転換に、トーハクの常設展に逃避していた(キャンパスメンバーズで入場無料だったのも大きかったかもしれないが)。

文章がごちゃごちゃしてきたが、特別展も華やかでいいけど、常設展は落ち着いてるし、あたたかくて好き!ということを述べたかった。

最近出会った国立西洋美術館・常設展の作品。

自信に満ち溢れた美しい女性

綺麗な絵だなぁと思ってタイトルを見ると、
『自画像』(作者はマリー=ガブリエル・カペ)
だった。自己肯定感が高い作者だと思われる。それを少しでもいいから分けてくれ。


タイミングよく、読了した本がこちら。ネタバレはありません。

「常設展示室」原田マハ

いつか終わる恋をしていた私。不意の病で人生の選択を迫られた娘。忘れられないあの人の記憶を胸に秘めてきた彼女。運命に悩みながら美術館を訪れた人々の未来を、一枚の絵が切り開いてくれた――足を運べばいつでも会える常設展は、今日もあなたを待っている。ピカソ、フェルメール、ラファエロ、ゴッホ、マティス、東山魁夷……実在する6枚の絵画が物語を豊かに彩る、極上のアート短編集。

新潮社HPより

心温まる短編集。特に「群青」と「道」がお気に入り。
子供のように純粋に夢中になり、疑問をきっかけに会話が始まる。
蓄積を削ぎ落とすことで傑作が生まれるかもしれない。
美術に限らず大切なことだと思う。

一読して自身を振り返り、純粋に絵を楽しむ、絵と会話をしてみることを忘れていた、と思った。最近は特別展に行く機会が多かったせいか、「行って満足」で終わらせていたかもしれない。

過去に常設展で見た絵と再会すると、その時の思い出が蘇る。どんな感情も受け入れてくれた絵は、強い味方だ。

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