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商品開発は楽しい

馬鈴薯に対して甘薯。
こんな言葉は今の若者に通用するのだろうか?
私自身もどんな場面で、ジャガイモとサツマイモの漢名(中国での名称)を覚えたのかの記憶は定かではない。
考えてみれば、テレビのクイズ番組で「イチジクを漢字で書くと?」みたいな問題が出て、「無花果」と正解が出るような時代があった。
それは正解というよりも「中国語ではどう書く?」と問題に出たら、正解は「無花果」ということで、言語という文化伝承を遡ったらそうなるというだけの話だと今でも思っている。
そもそも、言語は変化(進化)していくものなのだから・・・・。

そんな話はさておき、私は現在、商品開発部で保存の効く純国産、低カロリー、無添加食品の開発に取り組んでいる。つまり、ダイエットや健康食品を謳って、女性に売り込みやすい食品だ。
こう書くと特別な仕事に取り組んでいるように思えるかもしれないが、これまでになかったような未知の食品や奇抜なものを世に送り出そうとしているわけではない。
それどころか、近頃ではどこにでも売っているありきたりなものを大手では真似のできないスタイルで売り出そうとしているのだ。

きっかけは、市場調査部のY君がハロウィン・スィートという聞き慣れない品種のサツマイモを見つけてきたことだった。
私は、そのオレンジ色の果肉とスィーツと言っても過言ではない甘さを知り、サツマイモを素材にした商品開発に取り組む気になった。
そして、Y君にとにかく今手に入る限り多くの種類のサツマイモを手に入れるように指示した。


鳴門金時、紅はるか、シルクスィート、安納芋、ハロウィンスィートと、とりあえず5種類をY君は入手してきた。そこで私は、全てをオーブンで焼き芋にしてその食感や甘さを散布図にグラフ化してみた。
この分類は意外に簡単で、食感はねっとり(しっとり)or ホクホク、そして甘みは強い or 普通を見やすくしてみた。商品開発に大切なのは、社内でどれだけ再現性を共有できるかだ。人に伝えるのが安易で、誰が作っても同じクオリティーのものを提供できればフランチャイズや拠点拡大が容易になる。


試験的に作った焼き芋は社員と、知り合いの女性に配って感想を具体的に聞いて回った。同時に私は、できる限り素材に手を加えなる必要がなく、再現性が高いと思われる、干し芋作りの資料収集に没頭した。手法はYouTubeで干し芋作りの動画を片っ端から見る(1.5倍速再生)のと、chatGPTに、「干し芋の作り方を教えて!」とお願いしただけだ。

しかし、干し芋作りは思った以上に苦戦を強いられることになった。
作り方はサツマイモを蒸して、皮を剥き、スライスして適度に乾燥させるのだが、1回目に調理部の I君に仕様を伝えて出来上がってきたものは、スライス幅が薄かったのか見た目、食感共に干し芋とは呼び難い代物だった。

その失敗作を受けて、すぐに社内では会議が開かれた。
そもそも、従来のスライスした板状にこだわる必要があるのか?
スティック状の方が携帯性や食べやすさ、ビジュアルも新しく、時代に見合っているのではないのか?
干し芋というネーミング自体が、それを今まで口にしなかった世代への訴求には向いていないのではないか?
商品開発部以外の総務部、調理部、経理部、広告宣伝部など試食した各部署から上がってきた意見が共有された。

様々な意見を受けて、私は早速2回目の試作に取りかかった。
今回は厚めにスライスしたものをスティック状にカットし、乾燥にはオーブンを使わず、自然乾燥することにした。


1回目の失敗は、皮の剥き方とスライス幅、そして乾燥方法に問題があったと考えられたからだ。(全てが失敗やないかい!)
しかし、味に関しては不思議にあとを引くものだったので、今回入手している素材自体はとてつもない魅力を秘めていることだけは直感的に感じているのだ。
色々試せば、怪我の功名ということも十分あり得る。

純国産、無添加、低カロリーのサツマイモ商品の開発はしばらく続きそうだ。

どうなるわたし、どうなる干し芋?

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