「読む力」は勝手に育たない 易きに流れるな
50円で本を買った。
今からおよそ20年前に発刊された、神経学者のアントニオ・ダマシオの本だ。
神経心理学や生理学、身体心理学、もっと言えば脳科学に興味がある方は、ダマシオと言えば、「ああ、あのダマシオね」と、うなづくくらい、神経科学の権威だ。
とはいえ、当時はあくまでも仮説であり、今日ほどには身体と意識、情動の関連は重きを置かれてなかった。
とここまで、ちょい固めの論文調に書いたから、科学的読み物に慣れてない方には、キツいかもしれない。(わたしの悪文もあるけど)
でもね、でもね、学者として思うんだけどね、わたしが指導教授に(多分に神経発達症の御仁)「あなたの日本語上手くないからね」と、言わしめたくらいの悪文家だとしても、これくらいの論説文の読解力は欲しいんだよなぁ。
トイレの落書きレベルのしょーもない過去の栄光であるけど、大学入試模試の現国で全国ランキング入りしたり、大学時代にある新聞社の学生記者をしたり、地方ミニコミ誌の記者をしたりして、文章修行したセミプロの売文で糊口をしのいできた経験はそれなりにある。一応、論文書いているし、自分の名前が奥付けにある専門書もある。
金額の多寡ではなく経験値として、1ミクロン程度だけど。
嫌われる覚悟でもっと言わせていただくと、例え悪文であってもこの程度の文章を読む力がなければ、昨今の激化した中学入試は突破できないのもまた事実だと思う。
そりゃ、入試問題は小学6年でも読める、プロの文筆家が書いた文章だとしても、中学入試の問題は読解練習なしの大人では回答が難しい、ちょっとひねりを加えて難易度を高めた問題がザラである。
中学受験は親の受験と言われるくらい、いくら手厚い指導をしている受験塾でも、塾の宿題を親が細かく指導しなければならない。(現にわたしが研修を受けた大手中学受験塾でも、親が子どもの宿題を一緒にすることがマストだった)、それができないなら家庭教師を雇う覚悟が必要だ。
また、腕のいい実績のある家庭教師を雇うにしても、親がその先生の実力レベルを見極められるだけの相応の力があることも必須だ。
※親の心構えも子どもに影響することは、動画にしたので、下記の動画をこのコラムの最後に載せるのでぜひ見て頂きたい。
嘘だと思うなら、一度は中学受験の問題を解いて欲しい。「AIと読解力」を論じた大学教授の本が数年前に大ベストセラーになったのも、この問題に危機感を感じている人の多さだろう。
言葉がきついのを承知で言うけれど、敢えて言わせて欲しい。
例えば、LD(限局性学習症)や失読症のような高次の脳機能の障害は別として(特別のサポートが必要)、「文章」を読めない人、話し言葉を理解できない人、誤読する人の認知(脳の知的活動のことを認知と言う:この語彙がここまで注釈入れないといけない「専門用語」なのか、ちょっと疑問)のレベルをどこまで下限に設定したらいいのだろう。
少なくとも中学受験をする子どもたちは、わからないからわかるようになるまで練習するのだし(うちの子は、追い込みの時期は朝9時から夜9時まで塾に住んでいた)、その努力を全員にしろとは、さすがに言わないけれど、せめて義務教育課程修了レベルの読解力までは、修練して欲しいと思う。
それが「学び」だからだ。
なんの努力もせず、学びは手に入らない。
それは、プロ野球選手になりたいのに、「自分の実力はわかっているから」なんの練習もせずに試合に出せ!と言っているようなものだ。
常識ならば、まずは、地元の野球チームに入団をお願いし、コーチに指導を受けながら頂点に登り詰めるべく練習し、それ相当の努力をすることは暗黙知だろう。
また、血のにじむような思いを重ねた修練が必要だし、簡単に手に入る《易きもの》はそれなりのものだろう。
のび太みたいに昼寝しているところに、ジャイアンとスネ夫に急に野球に呼ばれて、ドラえもんの助けを借りてホームランをかっ飛ばす、なんて話はマンガだからのファンタジー。
しかも、付け焼き刃のホームランはたいていの場合、ドラえもんの道具が壊れたり、嘘がばれてそれなりの罰をうけることが多く、藤子不二雄先生なりの「学びの落とし前」をつけている。
またまた、卑近な例で申し訳ないけれど、悪文を自覚しているわたしは、noteにアップした当コラムでも何度でも読み返して推敲を重ねて、修正の努力は悪文家なりにしている。
何が言いたいかというと、それはダマシオの本の訳者の書いた、前書きに集約される。
つまり、基本的な知識の土台がなければ、何が書かれているかの理解が難しいのだ。
これは、「読む力」は脳にもともとビルトインされているものではなく、後付けインストールされるものだからだ。
読む力は、勝手に育つのではなく、環境(親や先生など)、そして自分が自ら育てるものだ。
そこんとこ、どうぞご理解よろしくお願いいたします。
拙い文章に最後までお付合いいただきありがとうございました。
※こちらの動画です
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