番外編その7 2020という春に

画像1 想像もしなかった春。多くの命が危険にさらされて、多くの不安が答えも見出せず、それでも私たちに出来ることはまだある。情報に流されず、きちんと状況を把握し、何が優先すべきかを考えること。自宅待機はその最もたるもので、腐らず焦らず受け入れて頑張ろうと、地域みんなが気持ちを一つにすること。暖冬とは言え、春先の冷えは心まで震わせそう。そんな中で咲いてくれた花たちはいつにも増して愛しいと思ってしまう。こぼれ種から芽生えた小さな桜。最初の数年はただただ棒っ切れみたいだったのに、この春始めて蕾が。
画像2 もうすぐ咲くかなあと楽しみにしていたらまさかの雨。数日続き、散ってしまうかと心配になったけれど、気温がまだまだ低かったせいで、花が開くこともなかったから散ることもなく。雨が上がった途端に開花。どんよりも暗い日だったけれど、カメラを抱えて飛んでいけば、柔らかく開いた花びらが何とも初々しい。曇り空とは言え、見上げて撮るにはいささか条件が悪く、ついつい手元のものばかりになってしまったけれど、それでも嬉しくて頬が緩みっぱなし。
画像3 実はこの桜、花の数はとても少ない。木自体は大きく育って、高さは3m近くにはなろうかという感じだけれど、花はその枝先にほんの少しずつ。30くらいしかないのではないだろうか。びっしりついているあとの芽はきっと葉っぱ。だから満開なんて程遠く、貧相なことこのうえないかと思いきや、不思議なことに枝先のピンクは、生憎のお天気のせいか、思う以上に目立って愛嬌がある。ちょっと俯き加減の可愛い花。アメリカの迫力のある濃い八重咲きの桜を見慣れた目には新鮮だ。楚々として、遠い日の日本の春を思い出す。
画像4 この桜が何という桜なのか、私にはわからない。小さなその子の樹皮を見て、桜だと思ったからそっとしておいた。ちょっと物置に近すぎただろうかと思ったりもするけれど、しばらくは様子を見てみよう。そしてもう一つ、すぐ近くにも新しい桜らしき木が育っていた。これもどこからか飛んできたこぼれ種。どうやらこちらはしだれっぽい。さすがに近すぎるから時期を見て移植せねば。それにしても不思議だ。桜に呼ばれたのか呼んだのか。こぼれ種が集まってきた不思議さ。去年植えたソメイヨシノも咲くかな。
画像5 それから、まだ無彩色に近い庭に、目にも鮮やかなのがヒース。暖冬のおかげで軽々と越冬し、花は枯れることなく日ごとに大きく色濃くなっていった。寒風吹きすさぶ岩盤に咲く花は、ここでも勇敢だった。心から癒される。初めて家にやってきた日をようやく超えてくれた株。もっともっと大きくなって、私にハイランドの夢を見せてほしい。オースチンローゼズから「エミリー・ブロンテ」も到着。一緒に咲くことはないかもしれないけれど、二つを自分のローズガーデンに迎えられたことがとっても嬉しい。
画像6 ミニ水仙は今年ちょっと数を減らしてしまったみたい。秋には植えたそうかと考えている。この華やかな黄色がないとやはり春は始まらない。大好きなワーズワースの詩のように、黄金の川ほどにはならないとしても、光の花はやはり、春の日だまりがすぐそこにあるようで、見ていて心地よいから。ノイバラの枝がふとかかったりするのもいいなあと思う。花たちが重なりあって揺れる様は、色と色とが引き立てあっていつまでも見ていたい光景だ。とは言え、やはり寒くてまだまだは長居は出来ないけれど。
画像7 3年目のシラー・シベリカ。去年よりもぐっと大きくなった。小さく頼りなげだった彼らは、今年は寒空の下にすっくとたってなんだか頼もしい。茎も葉っぱも一回り肉厚になったような気がする。もちろん屈んで地面すれすれにカメラをかかえるのは変わらないけれど、それでも引いて撮れるようになったことは大きな進歩。雨上がりの泥はねで、せっかくの青が汚れてしまったけれど、それでもこの色は決して穢されないのだと感じてしまうのはどうしてだろう。
画像8 咲いた花をそのままに、ずっと観察を続けていた。小さな花からは想像もつかない大きな種が出来るのだ。それが地面に横たわって、さらにパッカリと開いて、、、となかなか生々しい展開ではあるけれど、このこぼれ種増殖大作戦は今のところ大きな成果を上げている。今年の発芽数のすごいこと。どこまでが育つかは定かではないけれど、青い絨毯に向かって着実に進んでいることは間違いなし!
画像9 青い花が雨の雫を抱く様は、はっとするほど美しい。自分が人間だということを忘れそうなくらいに(笑)。青い花の影に日がな一日遊んで暮せる妖精に嫉妬してしまいそう。なれるものならなってみたいものだ、なんて。けれどもしかしたら、彼らは私たちよりもずっとずっと働き者で、転生してしまったことを後悔するなんてストーリーを考えてしまう自分は、今日も平和にファンタジー能。外界の負の感情に振り回されることなく対峙するには、自分らしさを失わないこと。だから庭の花たちは、私の最強のパートナー。
画像10 こっそり咲いていたクロッカスにも感謝。気がつけばもう数年前から。どこからきたのか庭のまん中に。いたずら好きのリスが運んできて埋めて忘れてしまったのだろうか。今年こは掘りあげてあげようと計画中。そう、庭仕事はこれからが本番。やることは山のようにある。私に仕事をくれる花たちに感謝、癒しをくれる花たちに感謝。事態が収束する日まで、落ち着いて労りあってみんなで頑張ろう。誰もが心から開放されて、微笑んで抱きあえる日を、今は心から祈りたい。

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