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お客様は神様じゃないけれど

先日、観光地的なスポットに行き、有名な小籠包のお店に入った時のこと。

テーブルは常に満員状態でどんどん回転していく中、メインの料理を完全に忘れられ、1時間程度待たされたにもかかわらず、特にきちんとした謝罪もなく、やっと出てきた麺も味がせず、本当に久しぶりにクレーマーになりそうになりました笑

それはもう良いのだけれど、その時、昔、今はない赤坂のベトナム料理屋さんでバイトしていた頃、あまりにできそこないの私が毎日のようにする失態を、“神対応”でこなし、トラブルを回避してくれたマネージャーや先輩たちの誠実でスマートなサービスのことを思い出した。

私が何をしてしまったかというと、もう漫画みたいな失敗だ。

・お盆に10本以上のビール瓶を乗せ、お客様のテーブルに持っていく直前に全部倒す。

・生春巻き用のニョクマムソースを、高そうなシャツを着たお客様の手元にこぼす。

・飲み物の追加注文を忘れる。

多分他にも色々やってしまってるのだが、思い出せるのはこれくらい。私は本当にノロくて、笑顔が作れなくて、咄嗟の判断ができないダメなアルバイトだったと思う。

でも、そんな私を責めることもなく、やってしまった報告をした後の彼らの対応は、誠実そのものだった。

まずは姿勢。お客様の左側にさささっと近づいたかと思うと、プロポーズの時の片膝を立てるポーズで、下からお客様を見上げ、謝罪。

それどっから持ってきた!?というクリーニング代を(確か1000円)を渡しながら、ひたすら謝罪。といっても、卑屈な感じはなく、ただお客様の目を真っ直ぐに見つめ、ごめん!ごめんねー!ごめんなさいー!の気持ちでひたすら目力攻撃。(このマネージャーと先輩は結構イケメンだった、というのも効果的だったとは思う。いくら対男性であってもそれは絶大な効果を放つ)

大きなトラブルになったことは、そんなになかったと思う。大事なのは、できるだけ早く、えらい立場の人が誠実に謝ること、できる限りの具体的な謝罪の姿勢を示すこと(弁償とか)、お客様が喜び、もう許してやるか、という気持ちにさせるサービスをすること(デザートをおまけでつけるとか、少し特別扱いするとか)。お金は大事だけど、気持ちを満たすこと、を最優先に動いていたように思う。

私は結局ダメなアルバイトのまま3ヶ月くらいで辞めてしまったけれど、そのシーンは眼に焼き付いていて、今回のひどいサービスを目の当たりにして、そのベトナム料理屋のことを久しぶりに思い出したのだった。

お客様は神様ではないけれど、その場、その雰囲気を幸せに気持ちよく過ごして欲しい、と思ってするのがサービスなんじゃないのかなぁ。

その姿勢を教えてくれる人がいない若いアルバイトたちを、少しかわいそうに思ったけれど、空腹だけが満たされたことに感謝して、静かにそこを去り、帰路についた。


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