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東京・一時保護所の片隅で (その1)

2022年から1年弱、児童相談所の一時保護所で勤務していました。
なんらかの家庭の事情で、児童相談所に保護され、最終的な生活の場を決定する間、子供たちが生活するのが一時保護所というところです。

児童保護所に保護される子供たちの数が年々増加していることを気にかけつつも、しかし、一応、教員免許は持っているけれど、児童相談所の一時保護所で働くなど、一度も考えたことがなかった私が、なぜか、天の声に導かれ、勤務することになり、そこでは、私の人生を変えてくれるような、子供たちとの出会い、経験が待っていました。

何回かに分けて、私が生涯忘れないであろう日々を、色褪せないうちに書いておこうと思います。
東京の片隅で、誰よりも頑張って必死で生きているこどもたちのことを。

       * * * *

初勤務の日は、一体、一時保護所にはどんな子供たちがいるんだろう、と緊張して臨んだ。幼児から18歳まで、幅広い年代の子供の学習を担当するということで、私を含め、同時に3人が採用されていた。1日目の午前中、児童保護所とはどういうところか、どんな子供が生活しているか、など、研修を受けた後、午後からは保護所で実際に動くことになった。
3人全て女性で、心強いわ、と思っていたら、研修の際、『あ、いちあさんは、お二人とは違う、2階のフロアにある、中高生の男子の保護所で勤務になります』と告げられた。え?と一瞬戸惑ったけれど、持っている教員免許は中高の教員免許なので、小さい小学生を面倒見るよりいいかな、という気持ちではあった。

午後になり、2階のフロアに行き、また研修を受けた。その際、初めて、一時保護所の中をみせてもらったが、建築されてまだ1年ということで、全個室となっていて、とてもきれいだった。
所長が中を案内してくれている時に、鮮やかな金髪の男の子が廊下を走っていった。
あ、そうか、こんな感じの子たちがいるのね、と思えば、後から、通学から帰宅した、重い教科書を背負った感じの真面目な高校生らしき男の子が口数少なく、自室に入っていった。あ、いろんな子供がいるんだ、まだそんな軽い気持ちで、施設を見学させてもらった。

そしてこの時、私はまだその場所で、こんなに心揺さぶられる日々があるとは想像もしていなかった。
東京の、夏の始まりの1日だった。

(第一話 終わり)次回に続く

*写真はみんなのフォトギャラリーから頂きました。素敵なお写真をありがとうございます。



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