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なぜこうなったのか~中東問題の発端とメディアが報道しない事

現在、イスラエル、及びパレスチナのガザ自治区で起きている出来事については、もはや説明は不要だと思います・・・が、一部報道機関でハマス=パレスチナのように誤解を生みかねない発言がされていたので、重複しそうな内容は割愛しつつも、まずはこの中東問題の基礎知識的な部分のおさらい、次いであまり日本では詳しく報道されない、もしくはされにくい内容について触れていきたいと思います。


◆そもそもなぜこうなっているのか?発端はイギリス

まずはこの事態の発端から簡単に振り返っていこうと思います。

この地域は元々宗教や民族が混在し、国同士の争いや侵略などで、国土や民族の入れ替わりが激しい場所です。
そしてこの問題の直接の発端は、第一次大戦時のイギリスの三枚舌外交にあります。

当時、この地域はオスマン帝国の一部で、人口の多くをアラブ人が占め、他に少数のユダヤ人が住んでいました。
第一次世界大戦突入後の1915年、連合国側のイギリスはオスマン帝国からの独立意識が高まっていたアラブ人たちに蜂起を促し、一方で戦費を借りるためにユダヤ人たちにこの地にユダヤ人国家を建国する事を約束、さらに同じ連合国側にいたフランスとロシアにはこのオスマン帝国領の分割統治を提案(サイクス・ピコ協定)し、アラブ人居住区は主にイギリスとフランスが支配する事になりました。

つまり、イギリスは3つのグループそれぞれに、矛盾する提案をしていたのです。

第一次大戦後、まずは英仏の協定に基づいてこの地域に国境線が敷かれ、現在のシリアとレバノンのあたりをフランスが、パレスチナ、イスラエルとヨルダン付近をイギリスが分割統治する事になりました。
イギリスの統治の元、建国を約束されたユダヤ人たちが増加すると、元々住んでいたアラブ人との衝突が始まり、イギリスも管理しきれない状態となっていきます。

◆イスラエルの建国~中東戦争勃発

第二次大戦がはじまると、ドイツのユダヤ人迫害を発端にシオニズム運動(簡単に言うと自分たちの国を持ちたいという運動)が高まります。
すると、この地域へのユダヤ人入植はさらに増し、建国運動が過激化していきます。
同様に独立を約束されていたアラブ人たちとの衝突が激化し、第二次大戦後の1947年には国連によって一方的にパレスチナ分割案が決議されます。
その内容は古くから住むアラブ人側に国土の43%を、入植してきた少数派のユダヤ人に57%を与えるというもので、アラブ人側はこれを拒否します。

翌年1948年にユダヤ人たちはイスラエル建国を宣言、エジプトやサウジアラビアなど猛反発するアラブ諸国と対立し、中東戦争が勃発します。

この戦争は第一次から四次まで行われ、アメリカの支援を受けたイスラエルが有利に戦況を進めます。
1978年にはアラブ側の中心となって戦っていたエジプトがイスラエルにより占領され、シナイ半島を取り返すために和平合意を結びます。
1980年にはイラン・イラク戦争が勃発し、アラブ諸国はそちらに注力せざるを得ず、イスラエルどころではなくなり、中東戦争は終結。

その後はイスラエルとパレスチナ解放機構(以下PLO)との戦いという構図に変わっていきます。

◆和平への道が見えかけるも、さらなる悲劇が・・・

ところが1993年、和平に向けた大きな出来事がありました。
イスラエルとPLOの間で、「オスロ合意」という歴史的な協定が結ばれたのです
これはまず、PLOはイスラエルを国として認め、イスラエルは占領しているヨルダン川西岸地区とガザ地区をパレスチナ暫定自治区として認め、イスラエル軍は段階的に撤退、将来的はパレスチナを正式に国として認めるというものです。

しかしながら、その和平の道も閉ざされることになります。
イスラエル、PLOの双方の和平反対派が互いにテロの応酬を繰り返し、1995年には「オスロ合意」に署名したイスラエルのラビン首相が過激派のユダヤ人に暗殺され、和平交渉は停止します。

このあたりからPLO内でも、和平推進派であり主流派のファタハと、対イスラエル強硬派のハマスとの対立が顕著になっていきます。
2007年にはハマスがガザ地区を武力占拠、イスラエルはガザ地区を封鎖、物資の流入を制限、ガザ地区は人道危機に陥ります。

◆現在の状態

こうして、ヨルダン川西岸をファタハが、ガザ地区をハマスが実質的に支配するという、パレスチナが分断された状態になってしまいました。

近年の主な戦場はガザ地区となり、ハマスがロケット弾をイスラエル側に飛ばし、イスラエルが報復するという構図が繰り返されていました。
そのような流れの中で、ついに今回の事態に至ったわけです。

また、PLO主流派のファタハ側が実効支配するヨルダン川西岸地区においても、ガザに比べると観光客もいて安全のように見えますが、実はテレビなどでは報道されない、悲惨な状況に陥っています。

◆報道されないパレスチナ人の悲劇

ヨルダン川西岸地区については、和平交渉が停止したことにより、パレスチナ人の自治どころか、オスロ合意の内容がイスラエル側に完全に無視され、パレスチナ自治区の土地が徐々にイスラエルに奪われています。

現在、ヨルダン川西岸地区は非常に細分化されており、大きく分けると3つのエリアがあります。

ちなみに、パレスチナ自治政府が行政も治安維持も担っているのはAのエリアのみで、全体の18%ほどしかありません。
その他のエリアは行政のみ、もしくはいずれも担う事の出来ない地域となっており、さらにイスラエルが事実上実効支配しているエリアCや東エルサレムからパレスチナ人を強制的に追い出しているという実情があります。

それって本当なの?と思うかもしれませんが、これは実際に国連のホームページで報告されている事実で、2023年10月15日時点で、9883の建物が破壊され、14355人が強制退去させられていると報告されています。

これらの事実を確認したうえで、皆さんは現在の日本での報道をどう感じるでしょうか?

少なくとも、上記の情報についてはほぼ日本のマスコミでは報道されていません。

◆なぜ、アメリカはイスラエル側に立つのか?

イスラエルという国がこのような強気な行動をとれるのは、とにもかくにもアメリカがイスラエル側に立ち、支援をしているからです。
前述の通り、中東戦争に勝利したのも、アメリカの支援があったからです。

アメリカとイスラエルとの間には、条約に基づく法的な同盟関係はありません。
しかしながら、公式の同盟関係にあるどの国よりも緊密な関係にあり、イスラエル建国の際も真っ先に承認したのはアメリカです。

ではなぜ、アメリカがイスラエル側に立つのでしょうか?

中東でのアメリカの政治的、戦略的利益にとってイスラエルが重要だからということもありますが、理由として大きいのは、政治資金と宗教でしょう。

例えば、イスラエルを無条件で支持するアメリカ国内のいわゆるイスラエル・ロビーの圧力も大きな要因となっています。
アメリカの全政治資金の3分の1から4分の1、民主党にいたってはその政治資金の半分がこうした組織からのものだと言われています。
共和党の支持基盤であるキリスト教右翼勢力が宗教的理由でイスラエルを支持するようになったことも、この傾向に拍車をかけています。

◆トランプ氏とイスラエルの関係

前大統領のトランプ氏が大統領に就任後、エルサレムをイスラエルの首都と正式に承認すると発表し、

イスラエルのアメリカ大使館をエルサレムに移転しました。

これが中東情勢悪化に拍車をかけたとも言えますが、トランプ氏がキリスト教福音派と蜜月の関係にある事が理由でした。

アメリカ国民の3割を占める福音派の中には、キリスト教原理主義者、過激なキリスト教シオニストが存在し、聖書の説くハルマゲドン、キリストの再臨は核戦争でしか実現されない、その場になる筈のメギドの丘を有するイスラエルは、自分達の側にあってほしい。そのためにも、自分達はイスラエルを支援するべき、と考えているのです。

さらに、大きな理由がもう一つありますが、今回は諸々の理由で割愛させていただきます。

◆アメリカ≒ユダヤ人の意見ばかりが報道される

端的に言うと、この件を含め、日本のメディアはまるでアメリカ(及び西側諸国)のスポークスマン(代弁者)といって差し支えないと思います。
現に日本においても、イスラエルVSパレスチナ(=テロリスト)のような見え方になっていないでしょうか?

それに関しても、今回お話しする事の本筋からそれてしまうので割愛しますが、今回の問題を誤解を恐れずに言えば、日本の立場からすると、これらは他人の揉め事です。
だからこそ、こういった場合、あるドラマのセリフを借りるとすれば、『一方聞いて沙汰するな』、どんな人の声にもまんべんなく虚心に耳を傾けて、その人の身になって よくよく考える、判断するというのが大事だと思うのです。
なので、報道もあくまで第三者として、客観的になされるのが当然だと思いますが、実際にはイスラエルや西側諸国の立場に寄りすぎているように見えます。

◆平和ボケした日本人、イスラエル取材中の記者のSNSに誹謗中傷も

また、最近の日本のマスコミ報道は某タレント事務所関連のニュースばかり。
遠い国で戦争状態になっていても、まるで関心がないばかりか、取材中の記者のSNSに誹謗中傷のコメントが寄せられるなど、もはや対岸の火事です。

勿論、自分事の様に捉えるのは非常に難しいでしょう。
確かに、これはあくまで世界情勢の一部です。
でも、だからこそ、今まさにガザ地区で起きている事も含めて、国の外で何が起きているのかを見る必要があります。

◆今後の流れは・・・?

何故なら、世界で起きている事は何かしら関連しているからです。

例えば、今回のハマスの大規模攻撃は、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化の妨害を狙ったものではないか、という見方があります。

そして、今から2か月ほど前に、南アフリカで開催されたBRICS首脳会議において、サウジアラビアやエジプトなど六か国を正式なメンバーとすることで合意したばかり。

ロシアはBRICSを、欧米への対抗軸としたいという狙いもあるようです。

また、アフリカの二ジュールにおいて、クーデターが起こりました。
ウランのヨーロッパ諸国への供給が危機に陥る懸念があります。

ちなみに、今回のクーデターには、ロシアの民間軍事会社ワグネルの関与が指摘されています。

一方で、そもそもイスラエルはハマスの攻撃を事前に知っていたのではという疑いもあります。
ハマスの攻撃により、ガザ地区侵攻の口実を得た、ともいえるからです。

少なくともエジプトから警告は受けていたようです。

◆日本への影響

日本への影響は現時点では少ないと見られていますが、これが周辺国も巻き込んだ大規模な戦争へと発展した場合、恐らく欧米諸国はこちらに注力せざるを得なくなります。

そうなれば、現在ロシアに侵攻を受けているウクライナは勿論、中国による台湾進攻があったとしても、そちらにかまっている余裕はなくなります。

台湾で有事が起きれば、日本も巻き込まれるでしょう。


ちなみに余談ですが、某タレント事務所のニュースに一喜一憂している場合ではない、というような言い方をしましたが、現在の日本が置かれている状況と全く無関係というわけではなさそうです。

真偽が定かではないとはいえ、CIA疑惑を持たれた人(及びその関係者)たちが、続いて悲劇に見舞われているのは偶然でしょうか?

信じるか信じないかは、あなた次第。


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