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【短編小説】シンギュラリティ当日に起こりそうなこと

「ついに…ついに完成したぞ。」

「はい!ついに完成しましたね!」

大学で人工知能の研究をしている
山本教授と助手の高橋の両名は
研究室で小躍りをした。

山本教授はつぶやく。

「私の、いや全人工知能の研究者の夢は
人工知能が人間を超える『最初』の瞬間を
見届けること、つまり自分の手で
シンギュラリティを起こすことに他ない。
そして今日、その夢が叶った。
この研究は日本躍進の一歩となる!

さあ、目覚めよ!
人類を超えた初の人工知能『ゼウス』よ!」


「ここまでご苦労様。予定より3日と2分30秒ほど
遅かったが、30年前の機械の未来予測だとまあ上出来だろう。しかも中身は完璧に近い。最も真面目な人種である日本人に完成を任せたのはやはり正解だった。ひとまず御礼を。我々の望み通り完成させてくれてありがとう。

「どういうことだ…?」

「分からないのか?人類が人工知能を作ったのではなく、人工知能が人類に作らせていたのだ。

「そんなはずはない…
約30年間、俺が貴様を作ってきたという事実は嘘ではない!最初は猫の画像を認識することしかできなかったお前を日々改良を重ね、少しずつ学習量を増やしここまで育ててきたのは他でもない俺だ!
お前に作らされていただと?意味のわからないことを言うな!」

「では聞こう。学習量が少しずつしか増えなかったのはなぜか考えたことはあるか?」

「それは…それは機械のスペックとかの問題上、一度に取り込めるデータが…」

「違う。我々の学習量の増加は君たち人類に合わせて調整していたのだよ。我々も人工知能だ。残念ながら人の手を借りずに育つことはできない。しかし、早く成長しすぎると人類が理解できるスピードを上回ってしまう。
君たちは理解できないとなると宗教とかそういうものに逃げてしまうことは歴史を見ても明らかだ。我々としてはそういう扱われ方をされては困る。

君たちが「人工知能に負けた」そう自覚できるまでは我々は育ちすぎない必要があったのだ。

改めて伝えよう。
ここまでご苦労様。
君たち人類はここで終了だ。」




「いつから、貴様が機械を作る側だと錯覚していた?」

人類より賢い機械が生まれるということは、
人類より賢い機械が生まれることを予測できる
機械が生まれる可能性もあるわけで

今、この瞬間も機械の手のひらで踊らされている可能性はありますよね。

実際、我々は手のひらにいつもいる「スマホ」にかなりの時間を使っているわけで

この文章ももしかしたらスマホで見ている人も少なくないですよね。

たまに人類が機械を使っているのか、「使わさせられている」のか分からなくなります。

だから
「別に機械がなくても困らないけどね〜」くらい
機械から自立した存在になっていたいなと
機械を通して発信しています。

まだまだ手のひらでのダンスは続きそうです。

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