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【短編小説】サンタさんだって。

12月25日。
世界中の子どもたちの笑顔の量が
1年の中で最も多くなる日。

その笑顔を守るためにも
私たちサンタにミスはあってはならない。

そんなプレッシャーの中、
世界中の家をくまなく周るのは
心身ともに大変な仕事だが
一軒一軒プレゼントを運ぶために
見られる子どもたちのワクワクした寝顔は
疲れを忘れさせてくれる。

待っててね。
みんな。


全てのプレゼントを渡し終え
自宅に帰る。

「お〜そういえばお前にもプレゼントを
渡してやらないとな。ご苦労様。」

相棒のトナカイにたっぷりの牧草を渡す。

「これで全員かな・・・」

サンタは暗い顔でつぶやくと
ちらりと部屋に飾られた
空っぽの靴下に目を向ける。

(私がプレゼントを運ぶ
サンタなんだからもらえるわけないよな…)

そう思いながらも、もう何年も
靴下を外せずにいる。
サンタだって、プレゼントがほしい。
でもサンタは私だから…

ベッドの上で天井を見つめながら
そんなことをぐるぐる考えていたが
一晩中、動き続けたサンタは
すでに外が明るくなってきたのにも
関わらずいつの間にか深い眠りに落ちていた。


目を覚ます。
毎年の癖で靴下を見る。
心なしかいつもより少し膨らんでいた。

期待に胸を膨らませて
ベッドから飛び起き、
靴下の中をのぞいてみる。
そこには、食べかけの
よだれがべっちょりついた牧草が入っていた。

「私は牧草は食べないよ…」

サンタは笑顔でつぶやくと
庭ですでに目を覚ましていたトナカイに
いつもより多めの朝食をふるまった。




サンタだって誰かにサンタの役目を代わりに
なってほしいと思ったことありますよね。

ぼくも妻と結婚する前、まだ彼氏彼女のとき
「彼氏の役目を交代したいな〜」と思ったことが
あります。

自分の役目が嫌いなわけじゃないんですけどね。
たま〜になんです。たまに外れてみたくなる。

基本的にどんな場所でもそこに自分以外の人が
いる限り、何かしらの役目(キャラと言ってもいいかも)が発生すると思うし、一度発生すると外れるのって無理なんですよね。期待されちゃうから。

それはサンタがクリスマスにプレゼントを届けてくれるように、届いて当然。届かなかったら激怒。そこまで激しくはないけど、遠くない例えだと思う。

でももう一度言うけど、その役目が嫌いなわけじゃないんです。たまに外れたくなるだけ。

今年もしサンタが来なかった人は
「サンタは今年サンタの役目を休みたかったんだな〜来年はたのむよ〜」くらいの優しい気持ちを持ってあげましょう。

もしくは、あなたがサンタなんていないと思っている大人になってしまった可能性もあります。


サンタクロースは、います!!



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