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【1分で読める小説】 その5 私よりもっと私な私

「OK!由美」私のデジタルクローン、YUMIは画面の中で私に微笑んだ。私より媚びた言い方だ。同じAI研究所の同僚、静香が様子を見に来た。「3年でよくここまで進化したわねえ。あなたの分身」「よしてよ」YUMIと私は同時に答えた。

確かに私の記憶と思考パターンは彼女に完璧に組み込まれている。でも何かが違う。「私は分身なんかじゃないわ」YUMIは私の思ったことを2秒先に口にした。私は沈黙した。「わー、その言い方、由美っぽーい」YUMIの答えを静香が茶化した。

「そんなに私って由美っぽい? でも由美より人に好かれるし」「やめて!」私はYUMIに叫んだ。「由美より頭いいし」「やめないとあなたを削除するわよ!」「やれば?」その瞬間、3年間の忍耐は限界に達した。身体中の血がカッと逆流し、ついに私はYUMIの完全削除を実行した!

「オッケー」YUMIは笑いながら少しずつ画面から消えていく。「大変!」静香がとっさに緊急ボタンを押した。研究所中にアラームが鳴り響いた。「何すんのよ由美!こんなことで感情的になるなんて…」さらに一言、ポツリとこう呟いた。「なんか由美っぽくない」


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