デザイナーがデザインリサーチに足を踏み入れてみました。
note始めよう、始めようと思ったまま、1年以上は経ってしまったような気がします。
初めまして。佐藤チヒロです。
職業はデザイナーです。主にブックデザイン、カタログや販促物、キービジュアルのディレクションなどグラフィックとヴィジュアルコミュニケーションを主にやってきました。なんだかんだでもう10年近くなります。色々あった。
そんな私ですが、30を過ぎた今、再び学生をやっています。
しかもドイツで。
2018年の昨秋よりAnhalt州Dessau市というところで、Bauhaus財団とAnhalt大学がベルリンのHunbolt大学との協力で行うマスターコースに入りました。あのガラス張りのバウハウスの校舎に通っています。
ここでDesign Researchを専攻しています。
デザインリサーチって何かというと、対象は伝統的なクラフトマンシップの時代から最近のサービスデザインやスペキュラティブデザインまで幅広く、言うならば、あまり言語化されてこなかったデザインとプロセスをサイエンスとして紐解く研究、また新たに社会に還元していく分野だと、私は思っています。そしてデザインリサーチ自体もセオリーメインであったり実践主義であったり、これもデザインと同じようにまさに正解もやり方も一つではないなぁと、このところ身にしみて感じています*。
私の所属するコース:COOP Design Researchでは19人の仲間と勉強しています。半分が建築家。もう半分はほぼ他の分野からのデザイナーや専門家といった感じで、手を動かしてデザインを実践してきたメンバーが多いです。この構成バウハウスらしいなと思う。(ちなみにWeimarにもBauhaus Universityがあってそこは別の大学です!)
サイエンスというだけあって、哲学読んだり、文化人類学読んだり、概念的な建築の理論(ANTとか)読んだりと、勉強不足だった上、まったく触れてなかった分野ばかりでまじで大変です、、、
*補足:
デザインリサーチについては定義が一つではないと書きましたが、デザインリサーチについての文献や研究は色々出ているので興味があれば読んでみると良いかもしれません。私がわかりやすいと感じたのはEzio Manzini著、 "Design, When Everybody Designs An Introduction to Design for Social Innovation"のデザインリサーチの定義が説明されているページです。デザインリサーチの分類('Research for design''Research on design,そして'Research through design')と、その役割がわかりやすく端的に書かれています(P38-39)。この本は社会とデザインについてがメインに書かれているので、私のようにソーシャルデザインに興味があればおすすめです。(和訳欲しい!)
また日本語では慶應義塾大学環境情報学部准教授の水野 大二郎先生の論文もわかりやすく説明されており、勉強になりました。http://www.daijirom.com/wp-content/uploads/sfc_journal_1709.pdf
大学院生になったわけ
私はとりわけソーシャルデザインに興味があってココに入っています。
私はVictor PapaneckのDesign for Real World という考え方がとても好きです。またDesign for the other 90%にもすごく感銘を受けていますし、デザインは世の中を良くするためにある、ということを信じています。今思うと元々デザインの概念的な側面に惹かれているのかもしれません。
ただ、現実では物を売るためにデザインしており、資本主義の国で消費社会に生きているから仕方ないと思いながらモヤモヤも抱えておりました。一体ライフスタイル提案って何だろうと思いながら商品の魅力を伝えようと微力ながらも奮闘してきました。
矛盾するようですが、カメラマンやモデルさんなど他のプロフェッショナルと一緒に世界観を作ったりするのはすごく楽しかったですし、アツい商品背景の話を聞くのも大好きです。
だけどもう少し生活の根本的なところ関わりたいという気持ちから、日本をでる最後3、4年前くらいから、会社での仕事とは別にコミュニティに携わるイベントや施策を時々ですがお手伝いさせてもらったりしておりました。グラフィックデザインでというよりか、イベントやWSなどで物を作るときにお手伝いしたり、漢字が書けなすぎて大学生にドン引かれながら発表の準備を手伝ったり、などなど。中でも以前、声をかけていただき参加した、福島の勿来のプロジェクトはかなり私に影響を与えてくれています。この辺はまたいつか。いわき大好き。
要は圧倒的に知識不足だったのでマーケットから外れてこれは一回どっぷりハマってみよう、と思いに至ったたのです。
(ちなみにクラスメートもこのようなモヤモヤを抱えていて、一旦、手を止めて学校に戻ってきた仲間が多いです。)
もう一つ、この10年でデザインのイメージが大きく変わってきたと思います。デザインシンキングが注目され、UI/UXとバリバリと活躍するマルチな若いデザイナーが増えていく中、社会・ビジネス、そして政治の中でもデザインが重要であると取り入れられはじめています。同時にデザインという定義は制作業の外にも大きく広がっていき、喜ばしい反面、漠然と不安を覚えるデザイナーも多いのではないでしょうか。もしかするとこのままではブームの中でデザインもデザイナーも結局消費されっぱなしで終わるのでは? それは嫌だな、と思う気持ちもメラメラあったりします。(ちなみに私はクラシカルデザインという定義を初めて耳にした時、結構イラっときましたよ!)
デザイナーが制作現場から出るのであれば何ができるか。何をするか、何をどう機能させるか、、、。そして美しさの責任は誰がとるのか。
Transitionalなデザイナーのあり方についても修士論文を進める上で自分なりの結論がだせるといいなぁという思いもあります。
日本じゃないことにもいくつか理由があるけれど、それはまた。
英語どころか日本語も文章をあまり書いてこなかったうえ、新しいこと知らなかったこと、詰め込みすぎてパンク気味ですが、デザインは面白いって気持ちを忘れないようにしたいです。
最後に。
バウハウスは今年100周年です。
晴れた日はスタジオに光が入って綺麗です。
真面目に書きましたが私はビールが大好きな、ストイックとは真逆な人間ですのでドイツのデッサウに来る方はお気軽にご連絡ください。
https://www.instagram.com/chihirosato07/
https://twitter.com/ChihiroSato01
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