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自己中心的な満員電車に乗って見失ったもの

都内の、某地下鉄。
朝の通勤ラッシュ帯、溢れんばかりの人が
電車内へ押し寄せる。

ちょっとギリギリだったかもしれないけど、
なんとか乗れそうだったので足をひっかけると、
ドアの側にいた女性が必死に押し返してきた。

いやや、そんな押さないでよと女性に目をやると、
彼女のカバンにマタニティマークがついていた。

おっと、これはいかん。
しかも、あまり表情も優れていない。
しんどい中、立って通勤して、しかもこんなに人に押されては気が気でない。

以前、同じ電車で小さい赤ちゃんを連れたママさんが満員電車に乗り込んできたとき、
近くにいた大人の女性が赤ちゃんとママさんを肉壁から守っていたことを思い出した。

私は咄嗟に手が出て、肉壁に背を向け妊婦さんに当たらないように、おじさんの通勤カバンを必死に抑えた。

すると彼女の間に少しだけ空間ができて、
「大丈夫ですか?」と声をかけると
しんどそうにしてはいたが、頷いてくれた。

私の非力な身体で彼女と赤ちゃんを守るには心許なかったが、見て見ぬ振りもできなかったのでこうするしかなかった。

幸い、妊婦さんは次の駅で降りて、
軽く会釈をしてくれた。

少しでも心が軽くなって欲しかったから、
私は笑顔で返した。

満員電車での通勤は、誰もが1分1秒と早く乗ろうとするから、みんなが自己中心的になる。

私も、自己中には自己中で対抗しないと負けることくらい、社会人4年もやれば身につくことなので
平気で肉壁を押す人間になっていた。

でも、お腹に授かった大切な赤ちゃんを、
必死になって守る妊婦さんを押すような
腐った人間にだけはなりたくないから、
勇気を出して行動することができた。

それは以前に赤ちゃんを守るかっこいい女性を見たからだし、
同じ女性として、将来なりかねない状況であることは間違いない。
そうなったとき、どうされたら助かるのかを考えると、肉壁側の人間にだけはなりたくなかった。

本当に心ない人は、
「妊婦だから満員電車乗るんじゃねぇよ!」
なんて思うのかもしれないけど。

仕事で行かざるを得ない人もいるし、
妊娠・出産を乗り越えて仕事したい人だっている。

そうやって、周りの人が理解して、協力する風潮にならなきゃ一生少子化なんて解決しないわ。

それに、ちょっと想像力を働かせれば、
気づくものだと思わない?

もし、それが自分だったら…
もし、それが自分の大切なパートナーだったら…

自己中になると、この「もし○○だったら」思考がなくなる。
通りで、東京が人の心ないって言われるわけよ。
ある意味、人の心なくさないと生き残れないのかもしれないけどさ。

とにかく、あのときの妊婦さんに、
元気な赤ちゃんが産まれることをささやかに願おう。

世の中が冷たくても
せめて、私の手の届く範囲だけでも、
守ってあげられるものがあるなら守りたい。

おせっかいババアかもしれないけど。

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