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【第19回】地区防災計画づくりのメリット

質問 地区防災計画づくりに取り組むとどんないいことがあるのでしょうか。コミュニティの現場の実態を教えてください。

概要

 地区防災計画づくりのメリット5選としては、以下があげられます。
 ①地域防災力が向上して、安全・安心に暮らせるようになります。
 ②隣近所やコミュニティの方と人間関係ができたり、感謝されることがあります。
 ③行政との人間関係ができたり、自分の会社や所属組織での評判が良くなることがあります。
 ④引退後にコミュニティ活動に熱心に取り組むと、配偶者や家族から評価されることがあります。
 ⑤稀に、防災活動をベースに査読論文を書かれたり、学位取得につなげる方もいます。

解説

 コミュニティの住民の方が、地区防災計画づくりに取り組むとどのようなメリットがあるのでしょうか。以下、わかりやすい例を5点にまとめてみました。

①地域防災力が向上して、安全・安心に暮らせる。

 地区防災計画づくりは、発災時に備えて、事前に町内会、小学校区、マンション等のコミュニティの防災計画を作り、住民等が災害発生時に、早期に適切に避難したり、避難所での生活を送れるようにすることにつながります。
 つまり、地区防災計画づくりは、地域防災力を向上させて、コミュニティの住民の命や財産を守り、普段から安全・安心に暮らせるようになることにつながるわけです。
 地区防災計画が発災時に住民の命を救った具体的な事例については、第5回の記事「地区防災計画によって住民の命が守られた事例」を御覧ください。

②隣近所やコミュニティの方と人間関係ができたり、感謝される。

 地区防災計画づくりのような地域のための防災活動は、目的意識がはっきりしているため、興味を持つ人も多く、比較的取り組みやすいテーマです。
 特に、最近の想定外の災害の増加により、多くの方が防災に関心を持っていますし、コミュニティの防災力を向上させて、皆が安全・安心に暮らせるようにがんばる活動は、高く評価される場合があります。また、そのような活動に取り組んでいる中で、隣近所の方やコミュニティの方と人間関係ができて、感謝されることも珍しくありません。
 例えば、よく見られる事例ですが、コミュニティの避難訓練とか、避難路の整備とかは、多くの住民が参加しますし、行政とか企業とか関係団体も多く、実施するだけでも大変な手間がかかりますが、その調整作業を少しでも担当してあげると、自然に隣近所やコミュニティの役員と連絡を取り合う機会が増えて、人間関係ができる場合も多いのです。また、そのような面倒な作業を担ってくれたということで、いろいろな場所で感謝されることもあります。

③行政との人間関係ができたり、自分の所属する会社等での評判が良くなる。

 上記とも関連しますが、コミュニティでの防災活動をがんばっていると、コミュニティ内で人間関係ができるだけでなく、市役所の防災担当者や消防署の方等関係行政機関とも連絡を取り合う機会が増えて、行政とも自然に人間関係ができる場合あります。
 そして、そのようなコミュニティや行政での評価や人間関係が契機となって、予想しないところで、自分の所属する会社等での評判が良くなることがあります。
 例えば、小さな自治体でよくあることですが、行政の防災担当者と地元の会社の経営者が知り合いで、防災活動での評判が、その人脈を通じて自然に会社全体に伝わって、本人は何もアピールをしていなかったのに、地元に対して貢献活動をして会社の名前をあげたということで、会社で高く評価される場合があります。

④引退後にコミュニティ活動に熱心に取り組むと、配偶者や家族から評価される。

 よくコミュニティ活動に取り組む契機として話題になることです。
 定年退職後に、特にすることがなくて、自然に家にいる時間が長くなって、奥様に嫌がられる場合があります。これは、長年、会社等の組織でがんばって働いてこられて、それなりの地位にいらした真面目な方には、結構こたえる場合があります。家に居場所がなくなってしまい、隣近所や趣味のサークルとかで活動しようと思っても、いろいろな考え方の人がいますのでなかなかうまくいかない場合もありますし、もともとの人間関係が必要になる場合もあります。また、時間潰しに有料のスポーツ施設や趣味のサークルに通うにも結構出費が必要になる場合もあります。簡単にいえば、今まで仕事のためにがんばってきたけど、定年になって急に仕事がなくなって、することがなくなってしまったという感じになるわけです。
 この点、上記にも書きましたが、地区防災計画づくりのような地域のための防災活動は、目的がはっきりしているため、興味を持つ人も多く、比較的取り組みやすいテーマです。特に、最近の想定外の災害の増加により、多くの方が防災に関心を持っていますし、コミュニティの防災力を向上させて、皆が安全・安心に暮らせるようにがんばる活動は、高く評価される場合があります。そして、このような活動に取り組んで、隣近所や行政から感謝されて、近所での評判が上がると、配偶者や家族から見直されて、家の中で高く評価されることもよくあります。
 例えば、家にいても、コミュニティの防災活動のために書斎で一生懸命に住民のために防災活動の説明のチラシとかマニュアルを作ってがんばっていたり、隣近所と連絡を取りながら防災訓練の準備をしたりしていると、奥様をはじめ家族からも地域のためにがんばってくれていると深く感謝されて、家の中にいても快適に過ごせる場合もあります。一生懸命に防災活動に取り組んでいれば、定年後に暇になって変に奥様に干渉することもなくなり、逆に奥様から皆の安全・安心のためにがんばっていることを感謝され、見直されるような場合もあります。

⑤防災活動をベースに論文を書いたり、学位取得につなげる。

 上記の話とも関係しますが、定年退職をされて時間を確保できるようになった方の中には、稀に、コミュニティでの防災活動をベースに論文を書かれて、学術研究団体に投稿されたり、研究会や大会で個人報告をされる方がいます。
 例えば、退職前に文章を書く仕事をされていた方、防災分野の公務員やコンサルティング会社等でお勤めになっていて専門的な知識や経験のある方、企業の管理職等を御経験になり、コミュニティの組織の在り方を俯瞰して考えている方等は、現職時代の御経験をいかして、レベルの高い御研究をされている場合があります。
 また、退職後に大学院に通われて、学術研究団体の専門の審査を通過する査読論文を書かれたり、そのような業績を積み重ねて修士号や博士号の学位を取得される場合もあります。

まとめ 

 地区防災計画づくりをはじめとするコミュニティでの防災活動に取り組むことは、定年退職をされた方等が、現役時代の専門知識や経験をいかして活躍できる場合もあり、また、家族や隣近所をはじめ多くの方から感謝される場合もあります。
 なお、上記のようなコミュニティの現場でのお話は、地区防災計画学会の公開シンポジウム等でもよく話題になります。また、数は決して多くはありませんが、『地区防災計画学会誌』には、退職された方等が、実際にコミュニティでの防災活動をベースに取り組まれている研究活動等に関する著作も掲載されており、また、地区防災計画学会大会の個人報告でも、時々そのような個人報告が出ています。



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