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お熱いうちがよろしいようで

朝晩の風は冷たく、温かいものが嬉しい季節になりました

夕飯は何にしよう
あったかいのがいいな
そんな時に出会った infocusさん のホカホカな記事
ほらほら、こちらを覗けば きっとおでんが食べたくなーる



酒屋だったわたしの実家では、秋の終わり頃になると店の一角に業務用のおでん鍋が登場しました
実家は一階が店舗、店の半分は立ち飲み仕様になっていました

こんにゃく、ちくわ、ごぼう天、厚揚げ、たまご、大根、牛すじ、がんも、じゃがいも、もち巾着… どれも大好きでした
はんぺんやちくわぶは入ってなくて、食べたことがありませんでした

おでんって、いろいろ入ってて楽しいけど、出汁をとったり、種ごとに下茹でやアク抜き、油抜きや串打ちなんかをしたりして、味がしみるまでにも時間がかかるし、簡単そうでいて けっこう準備が大変です
最近は、手軽でおいしい出汁パックや、アク抜き不要のこんにゃく、ゆでた大根やゆで卵なども売られていますね

スーパーには おひとりさま用の出汁ごとパウチされたものもあるし、コンビニでは好きなものだけひとつから気軽に買うことができます

みなさんは どんなおでん種がお好きですか



おでん といって思い出した 中学時代のちょっとした母とのいざこざ

わたしが通っていた大阪の公立中学校は、給食ではなく 毎日お弁当を持参していました
母は夜遅くまで忙しくしていたけれど、朝早くに起きて 毎日お弁当を詰めてくれていました

おかずは、前日にお店で出していた お惣菜の残り物が主だったけど、朝作ってくれるおにぎりと卵焼きはこの上なくおいしかったです
残り物だなんて 失礼なことを言ってはいけませんね
それだってちゃんと手作りなんだから

お弁当を持たせてくれるだけでもありがたい、
ほんと ありがたいのだけど…

冬になると、お弁当箱のおかずチームに おでんが入っていることが時々あって…

おでんは好きだし、味のよく染みたおでんなんて 最高においしいのだれど…
それは アツアツ ホカホカという温度あってのものであって…
茶色くて冷たくなったおでんというのは… えっと…
さみしいというか わびしいというか なんというか…
煮物と言ってしまえば そうなのかもしれないけれど…
これはやっぱりおでんであって…
お弁当におでんって…   ゴニョゴニョ


お弁当は クラスの友達数人で一緒に食べていたのだけれど、その中に いつもおしゃれで手の込んだ、毎日ため息の出るような素敵なお弁当の子がいて
とても憧れていました
カラフルでかわいいお弁当に
プチトマトやブロッコリーに

14歳の少女だったわたしは、未来の我が子のお弁当には 絶対おでんは入れないし、かわいくするんだから って 密かに心に誓いました



中学二年生のある日、部活を終えて家に帰った夕方

「ただいまー」
「・・・・・」

そこにいた母の目は、こちらを向いているのに無言で、ご機嫌の悪さが湯気のように滲み出ていました
(こ、こわっ)
わたしはそのままそっと 二階へ上がりました

また父とケンカでもしたのかなと思ってて、まさかわたしに怒っていたなんて少しも考えませんでした
母はそのあとも全然口をきいてくれなくて、
わたしもだんだんイライラしてきて…
「なんなん」

わたしのその言葉で 母は爆発したのです
「きくちゃんに聞いてんからねえ!!!」

きくちゃんというのは数件先に住んでいた同級生で、その日 通学路で一緒になって、おしゃべりしながら学校まで行きました
その時に「うちのお弁当、店のおでんとか入ってんねんで」って話をして、
たぶん「いややわ〜」なんて言ったんだと思います

その時はふたりで大笑いして終わったのだけど、そのことを きくちゃんは母に話していたようで・・・

どんなふうに話をしたのかわからないけど、とにかく母は怒ってて、
「もうお弁当つくらへんから」
そう言い捨てると、ほんとに次の日から作ってくれなくなりました
母と仲直りをしたあとも
高校生になってからもずうっと

そう、あの日が母の最後のお弁当になって、
わたしは「わかった」とも「いやや」とも言うことなく、それ以来 自分でお弁当を作るようになったのでした



今度 きくちゃんに会った時には、この話もしなくちゃ って思っています

あの時はたぶん、わたしもきくちゃんも どこにも悪気なんてなくて、
ただ話のタネにした、それだけのことだったはずなのだけど…

きくちゃんのせいで おかあちゃんにめっちゃキレられてん!
きくちゃんのせいで お弁当作ってもらえなくなってん!
でも、
きくちゃんのおかげで お弁当作りの大変さや ありがたさを知ることができた
それから料理に興味がわいたし、料理が楽しくなって上達したし、料理を食べてもらう喜びも知ることができたよ

だから ありがとう




これまでに 作ったお弁当には、もちろん一度だっておでんを入れたことはありません
憧れだったプチトマトとブロッコリーにはほんとお世話になりました

今ならスープジャーというのもあるし、あったかいおでん弁当だって可能なのかもしれないけれど、
おでんはやっぱりどうしても、鍋からのあっつあつをいただきたいのです


東京では、11月になっても夏日が三度もありました
一転 急に寒くなり、11月13日には 三年ぶりに木枯らし1号が吹きました
みなさんもそろそろおでん、食べたくなってきませんか

キモチもおでんも お熱いうちがよろしいようで
冷めないうちに ぜひどうぞ
くれぐれもやけどをしないように
しっかりふーふーしながらいただいてくださいね

それではどうぞ よい一日を、よい一週間を



#134.   『 おでん 』

⭐︎だいこんも出汁にとっぷり浸かりおり 風呂の恋しき木枯らし1号

⭐︎北風や ゆうべの残りのおでんのくったりとして憂うつめたさ

      ー ちる ー

ふるさと大阪のお酒
 秋鹿あきしか


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