「悪い芝居」さんの「今日もしんでるあいしてる」＠本多劇場
拝見して来ましたーっ！

※もろネタバレは書きませんが劇中のセリフとかは出てくるので嫌な方は観てから読んでちょ。

結論から申し上げて、むちゃくちゃおもしろかったです。

■悪い芝居、とは

2004年12月24日、路上パフォーマンスで旗揚げ。
京都で創作した作品を東京・大阪など各地へ持っていくスタイルで一世を風靡し、現在は東京と京都を活動拠点に各地を自在に行き来しながら活動中。メンバー編成は紆余曲折を経て、現在は25名となる。

ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を、刺激的な言葉と狂信めいた身体と幻惑かつ耳鳴りじみた心地よい音楽に乗せて勢いよく噴出し、劇世界と現実世界の距離を自在に操作する、観客の想像力を信じ切った作風が特徴。
「現在でしか、自分たちでしか、この場所でしか表現できないこと」を芯にすえ、文学性とポップカルチャーが見事に共存した唯一無二の作品を発表し続けている。

2009年より、パワープッシュカンパニーとして京都の劇場ART COMPLEX 1928から2011年まで3年間の支援を受ける。そのパワープッシュカンパニーとしての最初の作品『嘘ツキ、号泣』が第17回OMS戯曲賞佳作を受賞、最後の作品『駄々の塊です』が第56回岸田國士戯曲賞最終選考ノミネートならびに佐藤佐吉賞で最優秀作品賞に選ばれる。

そして結成10周年を迎えた2014年『スーパーふぃクション』を機に、『バンド演奏とイカす人間たちが絡み合う作風』と、『演劇の想像力を信じ切り、客席との距離感を自在に操る作風』の二つを行き来するようになり、どこか古めかしく、けれど初々しい、蜂蜜のたっぷり入った縄文土器のような作風だと称される。

2017年、悪い芝居バンド演劇の集大成として上演された『メロメロたち』で第24回OMS戯曲賞大賞を受賞、翌2018年に再演。

2019年に旗揚げ15年を迎え、春には恋と暴動の新作二本立て本公演、夏から秋にかけて大阪・仙台・東京三都市ツアー、冬にはシアタートラム・ネクストジェネレーションに選出され『ミー・アット・ザ・ズー』をシアタートラムにて全編生演奏で上演した。

「なんかおもしろそう」と思えるなら大丈夫をモットーに多数の悪い芝居中毒者を現在進行形で生み出し続けている。

2020年、11名の新メンバーが加入。
誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。

悪い芝居Official HPより引用（http://waruishibai.jp/waruishibai.html）

プロフィールがもうおもろい。

関西出身のくせに今回「悪い芝居」さん初見でございました。
お名前はもちろん知ってましたし、面白いよ～って聞いてましたので
楽しみに期待に胸膨らませバルーンで向かいました。

■ストーリー

コロナ禍真っ最中の我々とよく似た世界で生きている男女の物語。
この世界のウィルスがcovid-19と違うのは「罹患して死んだ人が一定の確率で生き返る」ということ。
起きて話しご飯も食べるけど、味覚は無いし生前の記憶はどんどん無くなっていく。
生き返ったというよりは死んでるけど元気に動いてるって感じ。

もちろん歳も取らない。でも生きてるみたいに今日も笑ったり話したり。
愛しい大事な人がそうなったら残された人はどうするのか。
何もなかったように一緒に暮らし続けるのか。それともちゃんと眠らせてあげるのか。

亡くなったことに気づかないで毎日起きてくる妻と、1人だけ歳をとりながら暮らす夫。
恋人の自殺を手伝った女と、自殺したのに生き返ってきた男。
2組のカップルを中心に過去と現在をいったりきたり。

■テーマは重いけど、超エンタメ芝居

死生観や今のこの世界の事、嫌でも考えさせられるテーマなんだけど、
いくらでも重くできるところを全く重苦しくなく、かといって軽々しくもなく
しっかりエンターテイメントに昇華してど真ん中でお届け！といったエンタメ舞台でした。

想像を超えてくる出来事が次から次へと起こるのも楽しかった。
物を食べながら話したり、客入れから芝居が始まってたり、そういうの大好きだ！！ってなりながら観てました。

遊び心のある演出に、演劇愛を感じた。

■ヒロイン、文目ゆかりちゅあんの魅力

去年「ルーツ」で知り合う前からSNSで目を引く人だなあと思って存じ上げていた文目ゆかりちゃん。柳英里紗組でお知り合えて、本当に嬉しかった人の1人。

ゆかりちゃんって、完全にハイブランドな女性だと思っていて。
誰が見ても可愛くてサイッコーに素敵だけど、誰でも着れるわけじゃない。着る人もガンガン選んでいくけどハイブランドはそういうブランドですから。ISSEI MIYAKEの姉妹ブランドAYAME YUKARIって感じ。
そんなクイーンオブ唯一無二のゆかりちゃんが今回ヒロインを演ると知った私はどんな作品なのか気になって仕方なかった。

観て思ったのは「あ、これは儚ちゃん(役名)だわ。」でした。
当て書きか、そうでなければ奇跡の様な巡り合わせの配役。
作品に愛されたのか、作家に愛されたのか、どっち？
どっちにしろ羨ましい。

ほんっとうにまさに↑この動画そのものだったの、儚ちゃんが。

ミステリアスで可愛くて、大人で少女で、強くて柔らかくて、
ゆかりちゃんの持ってる二面性がそのまま投影された様なヒロインでした。
ゆかりちゃんのビジュアルも本当によかった。ピッタリだった。
他にしっくりくる人そうそう居ないのではないでしょうか。

初舞台で、本多劇場で、ヒロインで、ドドドドハマり役でってなんかもう羨ましいが渋滞するのでこの辺にしときますが
とにかく素晴らしい儚ちゃんでございました。本当に素晴らしかったなあ。
ゆかりちゃんお疲れ様でした！チケットのご予約ありがとうねー！！

■二組のカップルの対比

九木夫妻と、祈子・念カップル。物語のキモでもあるそれぞれのカップルの描き方。なんかもう辛くって何回も泣いてしまった。

死んだ人と一緒に生きることを選ぶ人、さよならして歩き出すことを選ぶ人、どっちが正解とかないよなあ。
生き返るくらいなら死んだりすんなよ！！！！泣　と思う事は間違いない気がするけど。

登場人物だと潮みかさん演じる祈子が一番好きだったなあ。
死にたいと言った恋人の願いを聞いてあげて、その恋人が生き返って、どんな気持ちか一言では表せないところを、
潮さんの演技力と脚本力で見事に表現されてて、たまりませんでした。

少しネタバレになってしまいますが、祈子は恋人の自殺から5年が経過している状態なんです。なので、気持ちの整理はつかないなりについていたはずなんですよ。
その状態で生き返った恋人と出会う。嬉しいの一言では片付かないよね。
嬉しいのは嬉しいけど、どうしたらいいのかわからん。
その「わからん」の言い方が本当に色々混ざった「わからん」で、「そやんなあ！泣」ってなりました。

最終的に自分が選んだことを「これは祈子の場合やから」と九木・夫に言える優しさと強さもよかった。正解なんてないんだよねえ。

それから、祈子とは違う選択をした九木・夫のラストシーンの吐露。土石流の様でした。
死にたくて死んだ念が生き返ったことで気づいたこと。それに対する祈子の「アホぉ」も悲痛だった。
自分への愛をひたすら受け止め続ける儚ちゃん。「かい？」とか「～したまえよ」とか少しふざけたような語尾に、
夫がこれ以上つらくならないようにしているんだなと優しさを感じた。とてもよかった。
４人の愛やら優しさやらが胸をぐちゃぐちゃに掻き回してくれて、大満足でした。
とても良質なラブストーリーを観させていただきました。

今回、数年後の九木・夫を劇団☆新感線の粟根まことさんが演じられていたんですがもう本当に素晴らしかった。むちゃくちゃ楽しみにしてたのおお。
映像やホールで観るのとはやはり違って、粟根さんの芝居をあの距離で観れただけでも本当に観に行ってよかった！！！

ラストシーンは、ずーっとずーっと言わなかったことが爆発したボリューム感が圧巻でした。
痺れた。ああ、もう最高だったなあ。もう一回浴びたい。

カップルチーム以外にも、脇を固める出演者の皆様が本当に素晴らしくて、「バランスいいなあ」と思いながら楽しめました。
おこのみピーチロードの仲間たちも、毎日会いに来る役所の人も、周りに居る人みんなが優しい世界を造っておりました。
心地いいというか気持ちいいというか、ほんと素敵な舞台だった。

■演劇愛が溢れてた

コロナ禍の空席を楽しませる工夫があったり、衣装や舞台セットが目で楽しかったり、音楽も素敵だったり、
いたるところに工夫が散りばめられてて「総合芸術観たわあ」って大満足でした。
フライヤーやHPのデザインとかも本当に素敵ですよね、統一感あって目を引くデザイン。センスいい。

演劇が大好きな人たちが作りましたっていうのが伝わってくる、素敵な舞台でした。

何より脚本が本当に素晴らしかった。読んでみたい。あと、むっちゃ出たい。

舞台はもう終わってしまったけど、映像配信があるみたいなのでチェックチェック。「今日もしんでるあいしてる」、映像映えむっちゃすると思う。

ではでは、また～✋