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作家・橋本治の研究をしています。まだ著作を全部読めていないので、しばらくはその読書記録…

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作家・橋本治の研究をしています。まだ著作を全部読めていないので、しばらくはその読書記録になります。この10年間ほぼ毎日読書をしてきた私が、本とは関係ない仕事の傍ら何をどのくらい読んだのかのドキュメンタリーでもあります。誰かの読書のモチベーションになれたらいいなという気持ちも込めて

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たった一人が書いた本を読むことに人生を懸けると決めた

作家・橋本治と聞いて、いったいどれだけの人がピンと来るのだろう? 夏目漱石のように学生時代に習って知る人でもないし、SNSで読書家と自負するアカウントでも頻繁に目にする名前ではない。 それでも私は、橋本治の本を読むことにこれからの人生を懸けると決めた。 知る人ぞ知る、ではないけれど、確かに橋本治を読んでいる人はいる。でも全部の著作を読んだ人は恐らくいないだろう。 なぜならば、分野があまりにも多岐に亘るから。 橋本治を知らなくても、よく読書をする人であれば「上司は思いつきで

    • 二度目の橋本治展、講演、『はじめての橋本治論』

      新潮社の編集者だった作家の松家仁之さんと、橋本治の実妹である柴岡美恵子さんの講演と対談を聞きに、神奈川近代文学館に行ってきた。 展示ももう一度見る。初日と違ってお客さんがたくさんいた。 講演もおもしろかった。その場が、橋本治の人柄そのもののような温かい雰囲気だった。笑って泣いて。橋本治が特に好きだった歌詞、鐘の鳴る丘の4番を紹介しようとして泣けてきて読めなくなった松家さんが「助けて美恵子さん」と言ってその流れのまま対談に入ったのには、笑いながらもらい泣きした。お母さんの話、

      • 「帰って来た橋本治展」に行って来た

        『人工島戦記』の発売が発表される前、なんとかして『人工島』を読めないものかと情報収集していたときに知ったのが「少年軍記」という小説である。『人工島』に関する情報が限られているなかで、当時の私は「少年軍記」は『人工島』が『人工島』になる前の仮タイトルかな?と考えていたこともある。つまり同じ小説だと思っていた。今となってみれば『人工島』と「少年軍記」が違う小説であることを知っているし、どちらも未完で終わり、『人工島』は発売されたが「少年軍記」は未発表のままであることもわかっている

        • 本に棲むナマズ─3月に読んだ本

          3月に読んだ本 ①『国家の尊厳』先崎彰容 ②『鏡の中のアメリカ』先崎彰容 ③『ぼくは翻訳についてこう考えています 柴田元幸の意見100』柴田元幸 ④『新装版 動物のお医者さん2』佐々木倫子 ⑤『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』與那覇潤 ⑥『違和感の正体』先崎彰容 ⑦『池澤夏樹、文学全集を編む』河出書房新社編集部/編(*橋本治の名前だけが一度出てくるのみ) ⑧『維新と敗戦 学びなおし近代日本思想史』先崎彰容 ⑨『なぜオスカーはおもしろいのか?受賞予想で100倍楽しむ

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        たった一人が書いた本を読むことに人生を懸けると決めた

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        • 橋本治読書日記
          19本
        • 日めくり橋本治
          165本

        記事

          深さを求める読書─1月2月に読んだ本

          1月に読んだ本 ①『歴史なき時代に』與那覇潤 ②『仕事は辞めない!働く✕介護両立の教科書』木場猛ほか ③『偽情報戦争』小泉悠ほか ④『文学研究から現代日本の批評を考える』西田谷洋編 ⑤『大いなる助走』筒井康隆 ⑥『昭和史講義〔戦後文化篇〕(上)』筒井清忠編*橋本治言及あり ⑦『謎解きとコミュニケーション〜語用論から西欧の知を考える〜』山本英一 ⑧『日本人はなぜ存在するか』與那覇潤 ⑨『源氏供養(上)新版』橋本治 論文「橋本治『草薙の剣』論(後)」千木良悠子(「文學界」2024

          深さを求める読書─1月2月に読んだ本

          “桃尻”供養をいつの日か─ももんが忌に寄せて

          橋本治の『源氏供養』が復刊したので、読み返している。 これが復刊したのも大河ドラマ「光る君へ」のおかげだろうけれど、今のところ私の中では橋本治の『源氏供養』は「光る君へ」を食っている。橋本治の『源氏供養』は源氏物語論であるはずなのにそれにとどまらず、読んでいると「紫式部」という人間の体温を感じられるような気がする。難解な言葉もなく、読むのに一年もかからないのに紫式部その人を感じられるような。 橋本治は紫式部についてこんなにすごい文章を書いたのに、橋本治が紫式部を書いたように橋

          “桃尻”供養をいつの日か─ももんが忌に寄せて

          あなたはミーハーですね〈橋本治読書日記〉

          やっぱり橋本治をちゃんと読んでいる人が書いた論文をもっと読みたいな、と千木良悠子さんの「橋本治『草薙の剣』論(後)」を読んで思った(「文學界」2024年2月号掲載)。 今回の地震の被害が明らかになるにつれて胸が押しつぶされそうになる。玄関のお正月飾りをそのままに倒壊している家屋を見ると、一瞬にして崩れてしまったものは家屋だけでなく、生活とその基盤そのものであったことが目に見えるようだ。 『草薙の剣』は日本の100年を描く小説で、人にフォーカスが当たりすぎないからこそ、戦争や災

          あなたはミーハーですね〈橋本治読書日記〉

          そっちのボーダーレス〈橋本治読書日記〉

          相変わらず紅白のチーム分けは性別で決めてるのに今年のテーマは「ボーダレス」って冗談なの皮肉なのって思ってました。しかも日本はいつまでWBCやってんの、とも思うからそっちも観ないで結局テレビに向き合わないお正月。 あけましておめでとうございます。 でも話題になってたからYOASOBIは後追いで観たら、もう明らかにこれが目玉でありハイライトだったんですね。いつもは単独でステージに立つようなアイドルたちが次から次へ群像劇のように彩り、最後は同じステージで踊る。紅白歌合戦が言う「

          そっちのボーダーレス〈橋本治読書日記〉

          死人に口なしと言うけれど〈橋本治読書日記〉

          生前の本人をよく知る人が書いた橋本治評伝の連載が始まった。 あの文章で、橋本治の何を伝えようとしているのか、私にはわからない。 すごく個人的な内面に踏み込んでいる割に、書き方が雑ではないかと思った。書くのであれば順を追って丁寧に、本人が公に書いた文章の根拠も添えて書かれるべきことが、無造作に無神経に意味も脈絡もなく書かれている。率直に言って危険な文章だと感じた。 故人の性的指向のアウティングにとどまらず、それが“誰に”向いていたかにまで踏み込む結論に、とてつもない飛躍があるよ

          死人に口なしと言うけれど〈橋本治読書日記〉

          千木良悠子「橋本治『草薙の剣』論(上)」を読む

          現在発売中の「文學界」2024年1月号に、千木良悠子さんによる「『草薙の剣』論」が掲載されている。 『草薙の剣』の主役は時代である、と言い切ったうえで、謎解きをしていく。この論文を書くために重要な箇所を抜書きした要約と年表を作ったと書かれていた。 私は『人工島戦記』を研究することだけは決めているけれど、その先がどうにも進まなくて、焦っていた。今日、髪を切りに行って、シャンプーしてもらいながら、自分の研究を進めるためにはその作業をしなきゃいけないんだと覚悟が決まった。『人工島

          千木良悠子「橋本治『草薙の剣』論(上)」を読む

          久々の橋本治新刊情報!ほか

          来年の大河ドラマの影響もあってか、橋本治『源氏供養』(上・下)が新版となって年明けに復刊。 旧版になかったプラスアルファとして座談会「物語の論理・性の論理」(橋本治・川添房江・松井健児・三田村雅子)が収録されているらしい。ちなみにこの座談会は『源氏物語いま語り』(2001)に収録されている。が、もともとは雑誌「源氏研究」(1996)に掲載されたもののようだ。 さらに来年は3月30日から神奈川近代文学館にて「帰って来た橋本治展」が開かれる! まともに応募したら一生当たりそう

          久々の橋本治新刊情報!ほか

          橋本治『人工島戦記』新旧対照表

          『人工島戦記』の雑誌連載と単行本の突き合わせ読みが、予定より大幅に前倒しで今日終わりました。 参考までに、章ごとの対照表を置いときます。雑誌連載のボリューム感のイメージが何となくわかるので。左が単行本、右が雑誌の章番号です。 第いち部 1章  1章(雑誌初回“前編”ここから) 2章  2章 3章  雑誌なし 4章  3章 5章  4章 6章  5章 7章  雑誌なし 8章  6章 9章  7章 10章  8章 11章  雑誌なし 12章  9章 13章 

          橋本治『人工島戦記』新旧対照表

          やるか見るかのどちらかしかない、それが愛だ

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          橋本治自身も登場、幻の小説『少年軍記』

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          愛する方法

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          古事記を読んで、旅に出よう〈橋本治読書日記〉

          出雲大社に初めて行った。事前準備として、橋本治の『古事記』も初めて読んだ。 出雲大社とは関係なく、旅行前には『武器よさらば』も読了。肝心の書簡は私信なので、書簡の内容よりはあとがきのほうが興味深かった。私は手紙を送るのが苦手で、何年も前から年賀状は書いていないし、紙の手紙はおろかメールやLINEすらほとんどしない。送るのにすごく時間がかかってしまうから嫌いということもあるけれど、送ることで相手に与える影響を考えると「やらないのが一番良い」と思えてしまってできない。だから、年に

          古事記を読んで、旅に出よう〈橋本治読書日記〉