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橋本治読書日記

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橋本治全著作通読プロジェクトの進捗の記録や、日常のことなど。橋本治の文章の引用はほぼありません。引用は〈日めくり〉にありますのでそちらをどうぞ。
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記事一覧

あなたはミーハーですね〈橋本治読書日記〉

あなたはミーハーですね〈橋本治読書日記〉

やっぱり橋本治をちゃんと読んでいる人が書いた論文をもっと読みたいな、と千木良悠子さんの「橋本治『草薙の剣』論(後)」を読んで思った(「文學界」2024年2月号掲載)。
今回の地震の被害が明らかになるにつれて胸が押しつぶされそうになる。玄関のお正月飾りをそのままに倒壊している家屋を見ると、一瞬にして崩れてしまったものは家屋だけでなく、生活とその基盤そのものであったことが目に見えるようだ。
『草薙の剣

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そっちのボーダーレス〈橋本治読書日記〉

そっちのボーダーレス〈橋本治読書日記〉

相変わらず紅白のチーム分けは性別で決めてるのに今年のテーマは「ボーダレス」って冗談なの皮肉なのって思ってました。しかも日本はいつまでWBCやってんの、とも思うからそっちも観ないで結局テレビに向き合わないお正月。

あけましておめでとうございます。

でも話題になってたからYOASOBIは後追いで観たら、もう明らかにこれが目玉でありハイライトだったんですね。いつもは単独でステージに立つようなアイドル

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死人に口なしと言うけれど〈橋本治読書日記〉

死人に口なしと言うけれど〈橋本治読書日記〉

生前の本人をよく知る人が書いた橋本治評伝の連載が始まった。
あの文章で、橋本治の何を伝えようとしているのか、私にはわからない。
すごく個人的な内面に踏み込んでいる割に、書き方が雑ではないかと思った。書くのであれば順を追って丁寧に、本人が公に書いた文章の根拠も添えて書かれるべきことが、無造作に無神経に意味も脈絡もなく書かれている。率直に言って危険な文章だと感じた。
故人の性的指向のアウティングにとど

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千木良悠子「橋本治『草薙の剣』論(上)」を読む

千木良悠子「橋本治『草薙の剣』論(上)」を読む

現在発売中の「文學界」2024年1月号に、千木良悠子さんによる「『草薙の剣』論」が掲載されている。

『草薙の剣』の主役は時代である、と言い切ったうえで、謎解きをしていく。この論文を書くために重要な箇所を抜書きした要約と年表を作ったと書かれていた。
私は『人工島戦記』を研究することだけは決めているけれど、その先がどうにも進まなくて、焦っていた。今日、髪を切りに行って、シャンプーしてもらいながら、自

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橋本治『人工島戦記』新旧対照表

橋本治『人工島戦記』新旧対照表

『人工島戦記』の雑誌連載と単行本の突き合わせ読みが、予定より大幅に前倒しで今日終わりました。
参考までに、章ごとの対照表を置いときます。雑誌連載のボリューム感のイメージが何となくわかるので。左が単行本、右が雑誌の章番号です。

第いち部
1章  1章(雑誌初回“前編”ここから)
2章  2章
3章  雑誌なし
4章  3章
5章  4章
6章  5章
7章  雑誌なし
8章  6章
9章 

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古事記を読んで、旅に出よう〈橋本治読書日記〉

古事記を読んで、旅に出よう〈橋本治読書日記〉

出雲大社に初めて行った。事前準備として、橋本治の『古事記』も初めて読んだ。
出雲大社とは関係なく、旅行前には『武器よさらば』も読了。肝心の書簡は私信なので、書簡の内容よりはあとがきのほうが興味深かった。私は手紙を送るのが苦手で、何年も前から年賀状は書いていないし、紙の手紙はおろかメールやLINEすらほとんどしない。送るのにすごく時間がかかってしまうから嫌いということもあるけれど、送ることで相手に与

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30年前の今日

30年前の今日

『人工島戦記』の雑誌連載原稿と単行本の突き合わせ読み、やっと今日、雑誌の初回(“前編”)が終わった。
奥付を見たら、発行日が1993年10月1日、30年前の今日だ。

人工島戦記への言及が多い『広告批評の橋本治』も読み始めた。単行本にもなっている『マンガ哲学辞典』ももともとは広告批評の連載だったから、ここに入ってる。
後日注:ここで「人工島戦記への言及が多い」と書いたのは、国会図書館のキーワード検

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研究って?─オープンキャンパス編

研究って?─オープンキャンパス編

長らく橋本治研究者を自称してきたわけですが。
「橋本治を理解するには橋本治だけを読んでいてはダメなのではないか」という考えが確信に変わり、そろそろ本格的に橋本治で論文を書く方向に舵を切ることにしました。

発想が飛躍する癖と持ち前の行動力を発揮して一念発起した私がまずやったこと、それは指導教員(と大学院)のリサーチです。「ここだ」と決めた大学のオープンキャンパスも予約しました。で、オープンキャンパ

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小さなプロジェクトの終わり〈橋本治読書日記〉

小さなプロジェクトの終わり〈橋本治読書日記〉

橋本治四季四部作を季節ごとに読むプロジェクト、最後の『夏日』を読み終わった。

この中に、映画「ウエストサイド物語」に一目惚れをしたという文章があったので、映画も観た。新旧、スピルバーグ版の「ウエストサイドストーリー」も合わせて。

6月はよく映画を観た月だった。
最近は北村紗衣さんの本を集中的に読むようにしていて6月は2冊読了したのだが、北村さんの本を読んでいると、映画が観たくなる。北村さんの本

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The Dog Days Are Over〈橋本治読書日記〉

The Dog Days Are Over〈橋本治読書日記〉

“あの苦しかった日々は終わったんだ!”──「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvol.3」でFlorence + The Machine の The Dog Days are over が流れるシーンは、これまで観てきた映画の数多あるシーンの中で一番好きだ。曲の歌詞を調べるうち、そのシーンもそこでかかる曲も大好きになった。思い出して泣いてる。Florence Welch本人が件のシーンを観て号泣し

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AIにひらめきは可能か?─ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー考〈橋本治読書日記〉

AIにひらめきは可能か?─ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー考〈橋本治読書日記〉

心から愛してやまない映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の新作“vol.3”を観た。これが私のゴールデンウィーク唯一にして最大のイベントだった。

思えば、橋本治の考え方に通ずるところの多い作品ではある。なんでも自分に引き付けて考えてしまうのは私の悪い癖だが、それが「なんでも橋本治に引き付けて考えてしまう」というふうに発展してきたのが今の私だ。
偶然集まってガーディアンズを形成しているメンバ

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大谷翔平、Björk 2days、橋本治以外の本〈橋本治読書日記〉

大谷翔平、Björk 2days、橋本治以外の本〈橋本治読書日記〉

 『春宵』読了後の記事から一ヶ月が経った。

 去年も一昨年も大谷翔平選手が所属するエンジェルスの試合は毎回録画して追っていたので、今年のWBCももちろんみていた。
 結果はご存知の通りの“大谷フィーバー”が続いているけれど、橋本治読者の私としては「自分だって」と思いたくても思えない挫折感のようなものを味わっていた。名実共に世界一になった大谷選手をカッコイイかっこいいと目で追うだけでは意味がない。

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ももんが忌〈橋本治読書日記〉

ももんが忌〈橋本治読書日記〉

 今日は橋本治の命日、“ももんが忌”だ。
 私にとって読むことは著者との対話で、著者に想いを馳せることでもあるので、365日橋本治を読む私は「命日だから」といって特別にすることはなく、いつものように橋本治を読むだけだ。昨日『江戸フラ』文庫版の中巻を読み終わり、今日から下巻に入った。
 橋本治が亡くなったのは2019年の今日。平成があと数ヶ月というとき、まだコロナ禍の前。未知のウイルスのパンデミック

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『完本チャンバラ時代劇講座』復刊〈橋本治読書日記〉

『完本チャンバラ時代劇講座』復刊〈橋本治読書日記〉

橋本治『完本チャンバラ時代劇講座』が初文庫化、復刊した。

新刊書店で買える橋本治の本は文字通りの絶滅危惧種なので、嬉しくて1・2巻とも複数冊ずつ買ってしまった。

私は電子書籍より紙の本が好きで、古本よりは新刊が好き。
橋本治の本はとにかく絶版が多いので仕方なく古本を揃えるしかないけれど、何百冊も買っていると、読む気が失せるほど状態の悪い本に当たることもある。それでも読めればありがたいと思って、

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