中原みすずの『初恋』を読んだ大学生の感想

大学生になってから、通学時間が長くなり、ひとりで電車に乗る時間も増えた。その間、できるだけ紙の本を読むようにしている。

「読むようにしている」というのは、別に”義務感”ではない。もともと人が書いたものを読むのが好きで、ただ「読みたい」というだけ。だから、電子書籍でもブログでももちろんnoteでも、極端な話、2ちゃんのスレでも、何でもよい。ただ、単純に「ずっとブルーライトばっかり見ていると身体にわるいかなあ」という自分への気遣い。

わたしが読む本の多くはブックオフの100円コーナーで、背表紙のタイトルだけみて手に取って、あらすじをサラッと読んで購入したもの。(こういう行動から、文章におけるタイトルの重要さがわかる)

今日はそんな直感的な方法で選んだ本・中原みすずの『初恋』を感想を書いてみようと思う。

〈あらすじ〉

「愛に見放されていた高校時代、みすずは安らげるのは、新宿の薄暗いジャズ喫茶だけだった。そこには仲間たちがいる。亮、テツ、タケシ、ヤス、ユカ。そして彼らと少し距離をおく、岸という東大生。ある日、みすずは岸に計画を打ち明けられる。権力に、頭脳で勝負したいというのだ——。三億円事件には少女の命がけの想いが刻み込まれていた。世紀を超えて読み継がれる、恋愛小説。」

まず、このあらすじにわたしが惹かれたポイントから。

「新宿の薄暗いジャズ喫茶」

この言葉、そんなに使いたくないけれど、「エモい」。なんというか、この一言でこの小説の世界観が伝わってくるような、パワーワードだと思う。(この言葉もそんなに使いたくない)

そんな「エモい」雰囲気と対極に位置する「三億円事件」「権力」というワード。読む前からワクワクさせられるギャップ。三億円事件を取り扱った本ってたくさん出版されてると思うけど、それを若者の恋愛と絡めてくるかあ、と。そこに強く惹かれて購入。

〈読了後の感想、以下ネタバレあり〉

読んでいる間、脳内BGMはずっと尾崎豊だった。

ジャズ喫茶「B」に集う男の子たちの昭和口調、盗んだバイク(や車)で走り出してしまう度胸、「学生運動」という今の社会からは想像しがたい出来事、今より軽い(またはそう感じさせる)命。(わたしはきっとこの時代に生きていたら、簡単に死んでしまっていただろうなあ、とか思う。)

あと、個人的に好きな場面。岸とみすずが犯行計画について2人きりで話すためだけに入ったラブホテルでの1シーン。

「まず、ベッドの上に跳び乗り、布団を足でぐしゃぐしゃに乱した。次にシーツを剥ぎ取り、ずるずると引きずりながらバスルームまで運ぶと、蛇口をひねって水で濡らし、こんどはそれを丸めてバスルームを隅に放り出した。そして、ジーパンの裾をタオルで拭きながら出てくると、茫然と立ち尽くしている私に言うでもなくつぶやいた。『男の見栄ってカナシイもんよ』」

繊細な表現だなって思った。「リアル」、というか。どの時代でも変わらない『男の見栄』をここまで端的に表現しているの、すごいなって。にやけました。

そして、物語終盤。岸からみすずに宛てたメモの最後の一行、ここですべての真意が明らかになる。「恋愛小説」って自分で言っておいて、この美しい伏線回収はずるいと思った。(新宿御苑のシーンの時点で勘のよい人なら気づいていたかもしれないども)

最後の段落「すべては消えゆく」では、かつての仲間たちのほとんどが、若くしてこの世を去っていくこと、それを当たり前のように受け入れている(ように見せている?)みすず。みすずの心の中の一言、「それはそうなるようになっていた」とても痺れた。

最後の5行の締めも、一つの物語と同時に一つの青春が終わったことが綺麗に書かれていて、なんだかセンチメンタルな気持ちにさせられた。でも決して後味が悪いわけではなくて、余韻がのこる話だった。


わたしはどうやらこの手の話が好きらしい。村上春樹のノルウェイの森を読んだ時とかなり似た気持ちにさせられた。ノルウェイの森ほど、表現が独特だったり、難しかったりしないけども。時代背景、時間軸の最後を始めに語るスタイル、愛する人の死、東京の地名が沢山出てくる という点、似ていた。きっと、ノルウェイの森を好きな人は読むべきだと思う。

あとは、わたしのように、人間の価値とか、そういったことを悩んでいたり考えている人にお勧めの本。

貴方もぜひ、ブックオフ100円コーナーでこの本を見かけるべき。そして、きっと、読むべき。




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慧(K)

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