見出し画像

SHELL and JOINT(平林勇監督)を観ての感想

noteで募集していた、オンライン試写会(初めて参加した!)にて鑑賞。

鬱々としていたなか、主演のお2人とも好きな役者さんってのもあり、すぐに飛びついた。(時間の都合もあり、オフィスの会議室でノートPCで見ることになってしまったのが悔やまれる)

結論から言うと、時間を作って観て、ほんとによかった。

何よりも映画としての新しさが感じられる作品で、ワクワクさせられたし、久しぶりに新しいモノに触れたことによるゾクゾク感を感じられた。

自分にとって、ゾクゾク感を味わえる映画って、年に何百も観ていても、数本も出会えない。こんな機会に巡り合えて本当にラッキー。noteの運営並び平林監督に感謝したい。

では、なぜゾクゾク感を味わえたのか、理由を考えてみた。

1.固定カメラでの撮影というユニークさと安心感

固定カメラからの映像で構成されていると、繰り広げられる様子を落ち着いて観ていられるんだなあという、あたりまえのことをあらためて感じた。

ゆったりとした気分でいられる。

その分1ショットごとの時間が長いので、飽きさせないことが求められるが、内容が適度に突飛で、間延びしているように感じるところもほぼなかった。
突飛過ぎると理解不能で疲れるが、そこまではいかない落ち着きの良さ。

2.主人公であるカプセルホテル受付2人の、キャラクター造形とキャスティングの妙

いくつかの場面で構成される映画ではあるが、その中ではカプセルホテル受付のシーンが一番長く、定期的に挟まれるので、このシーンが醸し出す雰囲気は作品全体にとって大きい。

内装や照明具合、2人の服装、髪型があいまって、クールさを醸成。
会話の内容とトーンから緩さを感じさせ、好奇心を喚起する。特に、冒頭の会話のつかみは素晴らしい。

3.シーン切り替わり時の映像の挟み方の斬新さ

「え?何々?」とシーンが切り替わるたびに毎回思わされた。

実際に映像を観て感じてほしいので詳細は書かないが、かなりゾクゾクさせられるポイントだった。

4.音の使い方の印象深さ

不協和音とまではいかないが不穏な音をそれなりの音量で流し、その後、音はすぐにストップし映像だけが続くという手法が何度が使われている。
これもゾクゾク感を高めてくれた。

5.誰しも関心を持ちがちな「生と死と性」がテーマ

人(や虫)の生き死にと、セクシャルな話題が散りばめられている。
シリアスさもないとは言わないが、おおよそ、ある程度の緩さとともに語られる。笑いの要素もしっかりある。

根源的なテーマであるから、誰でもどこかしらかにはひっかかりがあるストーリーだろう。

6.昆虫がめっちゃ出てくる!?

アフタートークによると監督が大の虫好きということだったが、それにしてもめちゃくちゃ昆虫(+α)が登場する。
ほとんどが話の中だけに登場するが、実物も少しは登場する。

一番目立つのは。ポスターなどでも使われているショット、カプセルホテルの受付の後ろにある水槽の中のオオグソクムシだろう。(これは甲殻類?)

ただただ虫が大挙して登場するんだとすると、嫌悪感をもつ人もいるかもしれないが、そんなにどぎつくなく登場するので、すべて観終わってみて、「あぁ、そういえばこの映画、めっちゃ虫登場するな」と気づく。それぐらいの押し出しの強さ。(と言いつつ、観終わって数日経って思い出すのは、オオグソクムシだったりする 笑)

カプセルホテルの受付のクールで清潔なイメージが強いから、虫が登場しても穏やかに見ていられるというのもあるだろう。

7.白塗り上半身裸のお姉さんたちの舞踊シーンの挟み方

固定カメラというのもあるし、話の内容的にも動きが大きい作品ではない。

しかし、そこに挟まれる、白塗り上半身裸のお姉さんたち(※大駱駝艦という麿赤兒氏が率いるパフォーマンス集団の方々)の舞踊シーンによる緩急のつけかた。

それも適度な長さで、芸術性もありながら、笑いも用意するという手抜かりのなさ。(悪く言えば八方美人さ)

8.ユニークな個々の要素をバランス良くまとめて繋ぐ巧みさ

結局はここに集約されるのだろう。

固定カメラの映像による安心感、全体を覆うゆるさ。
そこに、シーンのつなぎや音などで変化をつけ、それぞれの話の内容も適度に突飛で飽きさせず、「生と死と性」という興味をひく内容とし、虫をからませるというユニークさも持つ。
さらには、舞踊やフィンランドの自然や、マペットでのアクセントづけなどなど。

1つ1つのストーリーだけではここまで心は動かされなかっただろう。それがこんな形につなげられるんだ!という繋ぎの巧みさに舌を巻き、ゾクゾクさせられた。

2時間半を超える長尺ではあるが、ゆったりとした気持ちで観れるうえ、それでいて、飽きることがない作品。

オンライン試写会で、ノートPCで見てしまったことで
引きの映像での細かいところが確認できなかったのは、もったいなかった。

自分の好み的には、BD等で何度も観たくなる作品。
とりあえず、細部を確認するために、近々映画館に足を運ぼうと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?