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Agostino Arrivabeneの神秘的で幻視的な作品“L’Oniromante”を鑑賞する

先日、Agostino Arrivabeneの“L’Oniromante”を見に行った。
“L’Oniromante”は、“Oniro”=ギリシャ語の"夢"と"manzia"="占術"、"予言"を掛け合わせたこのアーティストの造語で、それぞれの単語が持つ意味の通り、夢の世界と神託の予言的語りの融合を表しており、現実と形而上学的視野の境界を探求するため視覚言語だそうだ。彼の作品の特徴は、「夢のようなヴィジョンを手に取ることができ、魅力的で刺激的なイメージに変える能力」にあり、彼自身が入念にキュレーションしたこの展覧会は、「知覚に挑戦し、鑑賞者を自己の内面への探求へと誘う体験を提供する」という説明がついている。

説明だけ読むと、「えっ、それって一体どんな作品?」と言われそうなので、彼のHPと本人紹介を簡単にした後、早々に作品へと移ろうと思う。

Agostino Arrivabene(1967-)
1991年にミラノのブレラ美術アカデミーを卒業後、レオナルド、デューラー、ファン・エイクといった過去の巨匠の研究に没頭し、シュールで幻想的な作風を確立するイタリアの画家

Wikipediaより

※作品群 その1(ギリシャ神話関連と思われるもの)

Ninfa、2023年
タイトルが示すように、ギリシャ神話の女神や妖精のように見えますか?
個人的には、妖精よりももっと怖いものに見えますが、いかがでしょう?
San Giorgio e Il Drago(訳: 聖ゲオルギオスとドラゴン)、2023年
聖ゲオルギオスはキリスト教の聖人の一で、ドラゴン退治の伝説でも有名な古代ローマ末期の殉教者だそうです。
Eaexit、2016年
タイトルの意味はわかりませんが、恐らく何かとExitの造語でしょう。
間違っても、EAE=実験的自己免疫性脳脊髄炎ではないと思う。
近景
Twilight(トワイライト・サーガ)でエドワードとジェイコブが他の吸血鬼たちと戦っているシーンに見えてしまう😅
Il Miracolo di Andrea 1(訳: アンデレの奇跡)、2023年
聖アンデレは食べ物(パン)を増やす奇跡を起こした聖人だそうです。
作品が小さいので、よく見えないかもしれませんね。。。
Il Miracolo di Andrea 2、2023-2024年
近景
食べ物が増えても、これを見ていたら食欲減退しそう(苦笑)
かなり不気味
La Grande Opera(訳: 偉大な作品)、2016年
自身で自らの作品を「偉大」と言えるだけあって、確かに緻密さが遠近両方から見ても圧巻です。
近景
まるで映画「Dune」のワンシーンのよう。
私はあぁいうCGが苦手で、ティモシー・シャラメ見たさに行ったのに、途中で寝てしまった。
Ephophteia、2023年
これも造語でしょう。
首の裏から精霊的な何かが出ているのか、何かが入ろうとしているのか、摩訶不思議
L’Oniromante、2023-2024年
展示会のタイトルと一緒の作品、ということは、今回の展示では重要位置を占める作品ですね。
下側の近景
その右下の小さい恐竜みたいなのが気になって仕方がなかった
L'Uomo Blu(訳: 青い男/人間)、2022年


※化石木材シリーズ

石化した化石木材をベースに作られた作品群
これが私の一番のお気に入りのシリーズ
Aracne(アラクネー)、2014年

アラクネー(Ἀράχνη, Aráchnē)
ギリシャ神話に登場する女性。染織業を営んでいたイドモーンの娘、優れた織り手である。機織りを司るアテーナーをも凌ぐ腕前の持ち主で、彼女が織ったタペストリーの出来栄えに嫉妬したアテーナーが作品を破壊したことに耐えられず、自縊死を遂げる。アテーナーは自殺した彼女を哀れみ、魔法の草の汁の汁を撒いて、彼女を蜘蛛に変えた。

Wikipediaより抜粋
Persefone Infera(意訳: 鉄で覆われたとでも言おうか…ペルセポネ)、2024年

ペルセポネ(Περσεφόνη, Persephonē)
ギリシャ神話に登場する冥界の女王。
野原で妖精達と花を摘んでいると、美しい水仙の花が咲いていた。彼女がその花を摘もうと妖精達から離れた瞬間、急に大地が裂け、黒い馬に乗った冥界の王ハーデースが現れ、冥府に連れ去られてしまった。

(中略)

四季の始まり
その後ゼウスがハーデースにペルセポネを解放するように伝え、彼女は解放された。その際、ハーデースがザクロの実を差し出す。それまで拒み続けていたペルセポネだが、ハーデースから丁重に扱われていたことと、何より空腹に耐えかね、12粒のうちの4粒(または6粒)を食べてしまった。
母デーメーテールの元に帰還したペルセポネが、冥府のザクロを食べたことを告げる。冥界の食べ物を食べた者は冥界に属するという神々の取り決めがあったため、デーメーテールは「娘がザクロを無理やり食べさせられた」と主張し、彼女が再び冥府で暮らすことに反対するも、神々の取り決めを覆せず、食べたザクロの数だけ冥府で暮らす(1年の1/3または1/2)こととなり、ハーデースに嫁いだ。
デーメーテールは、娘が冥界に居る時期には、地上に実りをもたらすのを止めるようになった。これが冬(もしくは夏)という季節の始まりだという。農作物の消長の原理はこの神話によって説明されている。
また、ペルセポネが地上に戻る時期は、豊穣の女神であるデーメーテールの喜びが地上に満ち溢れるとされ、これが春という季節である。そのため、ペルセポネは春の女神とされる。

Wikipediaより抜粋
Athena(アテーナー)、2024年

私が通った札幌の小学校には、日陰の小さい中庭と日の当たる大きい中庭があり、日陰の中庭には大木があった。その木の節や幹を遠くから見ると女の人の顔に見えるため、その木は「花子さんの木」と呼ばれていた。
その節や幹がちょうど、このAthenaの目元のような感じに配置されていたので、この作品を見た時、一瞬ぞくりとした。
Z世代よりももっと若い世代でも、まだ「花子さん」にまつわる怪談はあるのだろうか?それ以下の年代の日本人の知り合いがいないので、ふと疑問に思った。
どなたかご存知の方はコメントください。

説明なし


※作品群 その2(幻想もしくは哲学的要素の強いもの)

La Bestia(訳: 野獣)、2023年
野獣と、野獣に殺された人は、一緒に天へ連れていかれるのでしょうか?
La Chimera、2023年
Chimeraは通常イタリア語では「白昼夢」とかいう意味で使いますが、ここではギリシャ神話が関係していると思われるので、下の説明の通りかと

キマイラ(古希: Χίμαιρα, Chimaira)
ギリシア神話に登場する怪物。ラテン語ではキマエラ(Chimæra, Chimaera)、ヨーロッパの幾つかの言語ではキメラ(Chimera)、フランス語ではシメール(Chimère)という。名前の意味は「牝山羊」。

ライオンの頭と山羊の胴体、蛇(または竜)の尻尾を持ち、口からは火炎を吐く。山羊の頭を持つ女性の姿で表されることもある。後代の絵画や彫刻では蛇の尾を持ち、胴から山羊の頭が飛び出したライオンの姿で表された。

中世のキリスト教寓意譚では、主に「淫欲」や「悪魔」といった意味付けを持って描かれた。12世紀の詩人マルボートによれば、様々な生物の要素を併せ持つ事から女性を表すとされている。この他、その奇妙な姿から「理解できない夢」の象徴とされた。

Wikipediaより抜粋
Fokkia Delle Moire、2023年
もう、何語なのか、造語なのか、さっぱりわかりません。とにかく、脱力感が半端ないですよね。
毒を盛られて苦しんでいるように私には見えるのですが、実際には何が描かれているのでしょう?
La Fonte Sacra(訳: 聖なる泉)、2023年
鳥化した左腕から先を泉に入れると、また完全なる人間に戻れる、とかいうことでしょうか?
Sogno(訳: 夢)、2022年
四つ足動物が見る夢は天から呼ぶ白い物体で、人型をしたものが見る夢は大気の揺れで、翼のあるものの見る夢は…一体何でしょう?
これはもう、「 ロード・オブ・ザ・リング」的要素が満載で、私の発想では追い付けません。
近景
La Mistica del Berilli(訳: ベリリウムの神秘)
(Omaggio ad Anima Mundi di William Butler Yeats
---訳: William Butler Yeatsの宇宙霊魂へのオマージュ)、2022年

ウィリアム・バトラー・イェイツ(William Butler Yeats、1865年6月13日 - 1939年1月28日)は、アイルランドの詩人・劇作家。幼少の頃から親しんだアイルランドの妖精譚などを題材とする抒情詩で注目されたのち、民族演劇運動を通じてアイルランド文芸復興の担い手となった。モダニズム詩の世界に新境地を切りひらき、20世紀の英語文学において最も重要な詩人の一人とも評される。
1922年から6年間、アイルランド上院議員も務めた。1923年にはノーベル文学賞を受賞。日本では能の影響を受けて執筆した戯曲『鷹の井戸』や、初期の抒情詩「湖の島イニスフリー」などがとくに広く知られている。

Wikipediaより抜粋
Il Rizoma di Pugin(訳: Puginの地下茎)、2016年

以上で作品紹介は終わろうと思う。

恐らく、ご覧いただいた後に展示の補足説明をした方が分かりやすいと思うので、加えると、、、
「光と影、楽園と地獄といった相反するもの、目覚めと夢の中で、アーティストは汚染された眠りへの旅を見ている。
シュルレアリスムのオートマティスムによって、あるいは偶然に下絵を描くというジェスチャーによって、あるいは夜の忘却の中で、あるいは化石の森の抽象的・鉱物的な形から生じる催眠術的なヴィジョンによって、彼が繰り返し描いてきたイメージは、夢の植物が精巧に描かれる黒い土地である。」
ということだそうだ。

きっと、これはもう、考えて理解することではなく、感覚でつかみ取るものだと思うので、ギリシャ神話の題材以外は、各々が受ける印象で好きに感じ取って結構、ということでは、と思う。

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