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【医療コラム】看護師をランクづけ  パワハラ外科医の職務停止

これは、私が本人から聞いた、ある外科医のお話です。

 その外科医は、大学病院から出向して派遣病院に勤務していました。彼は、勤務中に自分の思い通りにならなかったり、スタッフが考え通りに動かなかったりすると、膿盆やペンを床や壁に叩きつけたり、怒鳴ったりしていたそうです。

■スタッフからの評判が悪かった外科医


 そのような行動をとる彼に対し、外来看護師長はそれとなく注意をしていました。しかし、彼は外科科長というポジションだったため意に介さず、口うるさい看護師長を敵視していたそうです。

 そして、ある年の病院の忘年会でのこと。外科医の彼を含めた数名が、忘年会の場で看護師のランク付けをしていた、とのうわさが看護師長の耳に入りました。ランク付けをしている人たちからすれば、単なるお遊び程度だったのかもしれませんが、これが大ごとになったのは言うまでもありません。

 病院では緊急会議が開かれ、パワハラ認定されました。そして、会議と呼ばれる弾劾裁判で、病院長、副院長、事務長、看護部長の面前で、彼に1ヶ月の職務停止および職務改善の誓約という処分が下されたのです。

■職務停止を終えて職場に復帰すると…


 職務停止中には、大学病院から代替医師の派遣要請があり、彼は大学病院に何度か弁明に行かなければならなかったそうです。心身ともに疲れ果て、一時的に声が出なくなったり、食事がとれなくなったりという状態にもなっていたとのこと。もちろん、元々悪いのは彼なのですが、その姿はとてもいたたまれないものでした。

 彼は、自分がしでかしたパワハラについて猛省し、停職の期間を過ごしていたといいます。

 そして停職から1ヶ月が経ち、彼はようやく復職することができました。ただし、体調が完全に改善したわけではありません。それでも、大学医局に所属している以上、任された仕事はしないといけないものです。元々、診察中にストレスを抱えることが多かったうえに、診察以外にもかなり多くの業務を抱えていた彼は、これからどうすればいいのかと不安に思いながら、病院に向かったそうです。

 しかし、いざ復職してみると、彼を待ち受けていたのは予想外の状況でした。なんと、勤務先の病院が非常勤医を採用していたのです。それも、追加の人材を手配したのは、あの看護師長だそう。看護師長は、彼が外来や手術、研究、外科職員のマネジメントなどで手一杯であると感じ、彼の停職中に病院事務長に人員の補充をお願いしていた、とのことでした。

 人が増えたことで、彼は余裕を持って仕事に取り組めるようになり、周りを見ることができるようになりました。そして、文句ばかり言ってくる看護師長を敵視していたのは間違いだと気付きました。看護師長は敵ではなく、彼をサポートしてくれる味方だったのです。

■円滑な人間関係を築くことの大切さ


 そのことに気づいた彼は、急にこれまでの自分の行動が恥ずかしくなり、看護師長に謝りました。すると看護師長は、「看護師にとってランク付けをされるのは許しがたいことでしたので見過ごせませんでした。ですが、それ以外の言動は、業務の多さから先生に余裕がなくなっていたことで、仕方ない面もあったと思っております」と言ってくれたそうです。

 それから彼は、看護師長になんでも相談をするようになり、仕事も順調に進むようになりました。すると、彼の評判はどんどんと上がっていき、外科部長、外科統括部長、副院長へと昇進していきました。そして、当時の看護師長も現在は看護部長になっています。

 このような経験をしたからか、彼は常々、看護師は医師の仕事をするうえで大事なパートナーだ、と私達に話しています。私も時に看護師と衝突することはありますが、助けてもらうことも多く、彼の言う通りだと考えています。

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